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近所のドラッグストアで妖怪ニラミオヤジと出会った時の話

この前、薬局行ったんですよ!薬局!大きめの薬局。ドラッグストアっていうんですか?

ドラッグっていってもヤバイお薬売ってるお店じゃありませんよ。大麻とかコカインとか販売してるわけじゃなくて、風邪薬とかトイレットペーパーとかカップラーメンとか売ってるお店です。

ヘイヨーさん、目薬よく使うので「あ、目薬切れちゃったな~!目薬買いに行こう~」と思って、近所のドラッグストアに行ったんです。

で、目薬とかゴミ袋とか買い物カゴに入れて、列に並んでたんですよ。そしたら、うしろに並んでたオヤジがなんかブツブツ言ってて。こっちのほうをにらんでるんですよ。

「あ、ヤベッ!妖怪ニラミオヤジだ!」と思って、ヘイヨーさん目を合わせないようにしたんです。

なぜかっていうと、妖怪ニラミオヤジは目を合わせただけでイチャモンつけてくるからなんです。0.2秒くらいならセーフなんですけど。1秒くらい相手の目を見たら、必ずなんか文句言ってくるんですよ。

ヘイヨーさん、「君の街にも現れる身近な妖怪辞典!」ってのを熟読してたので、そのことを知ってたんです。なので、助かりました。

ところが、お会計終わって購入した商品を袋詰めにしてたカップルはそのコトを知らなかったらしいんです。で、運悪く妖怪ニラミオヤジと目を合わせちゃったんです。それも3秒くらいマジマジと。

もう、これアウトですよ!完全アウト!

コカトリスとかバジリスクっていう化け物は「石化能力」を持ってるんですけど、アレと同じです。妖怪ニラミオヤジの視線には「イチャモン能力」っていう特殊能力が付加されてるんです。

で、案の定カップルはイチャモンつけられてました。

妖怪ニラミオヤジ「オイ、お前!今、オレの方にらんでただろう!」

男(カップルの男性側)「いや、にらんでませんよ!」

妖怪ニラミオヤジ「にらんでただろうが!」

「だから、にらんでませんって!」

もうね。ここはドラマか、と。「ドラマの世界なのか?」と問いたい。あるいは「映画か何かなのか?」と。

そのくらいベタなセリフですよ。今どき、三流脚本家でも書かないようなベッタベタなセリフですよ。それを目の前の2人がはいてるんです。

で、ヘイヨーさんも、よっぽど「関わるのやめようかな~?」って思ったんですよ。「あ、こりゃ、またブロックされちゃうぞ」と。「noteやツイッターだけじゃなくて、リアルの世界でもブロックされちゃう。リアルブロックだな」と。そう思ったんですよ。

いわゆるひとつの出禁ですよ。「ここでイザコザを起こしたら、頻繁に通ってるこの近所のドラッグストア出禁になっちゃうな」と、そういう考えが頭をよぎったんですよ。

でも、ヘイヨーさんもお人好しなので、ついつい声をかけちゃったんです。

「オイ、オッサン!さっきから見てたけど、にらんでたのはお前の方だろう」と言っちゃったんです。もう、この時点でブロック確定ですよ!

でも、言っちゃったもんは仕方がない。戦闘開始です。

カ~ン!って頭の中でゴングが鳴り響きましたね。

妖怪ニラミオヤジ「は?なんだと?お前なにもんだ?」と、こうくるわけです。ニラミオヤジ、もう完全に頭に来てるのがわかるんです。

で、ヘイヨーさん、とっさにこう答えましたね。

「深淵をにらむ時、深淵もまたお前をにらんでいるのだ」と。

そこで一瞬、ニラミオヤジの奴がひるんだんですよ。完全に知らないセリフだったんでしょうね。

ニラミオヤジ「は?なんだ、それ」

ヘイヨーさん「ニーチェ。知らない?哲学者ニーチェ」

ニラミオヤジ「し、知らんな…」

ヘイヨーさん「え~、ニーチェも知らないの?じゃあ、『ツァラトゥストラはかく語りき』も読んだことない?」

ニラミオヤジ「つ、つあ…なんだって?」

ヘイヨーさん「『ツァラトゥストラはかく語りき』ニーチェ大先生の名著。読んだことないの?」

そう言いながら、実はヘイヨーさんも読んだことなかったんですけどね。伊集院さんが出てるNHKの「100分 de 名著」って番組であらすじを聞いたことがあるだけです。まあ、ハッタリですよ。こういう時はハッタリをきかせるのが一番なんです!

ニラミオヤジ「で、何?さっきの深淵がどうたらこうたらって」

ヘイヨーさん「『深淵をにらむ時、深淵もまたお前をにらんでいるのだ』ね。元は『深淵をのぞく時、深淵もまたあなたをのぞいているのだ』ってセリフなんだけどね」

そしたら、ニラミオヤジの奴が、こう言ってきたんですよ。

「おっめえ、博識だな~」と。

で、ヘイヨーさんも調子に乗ってこう答えたんです。

「いや、このくらい常識でしょう。もうちょっと本読んだ方がいいよ。ちょうどこのドラッグストアの向かいに図書館あるでしょ?あそこに通って読書ざんまいの日々を過ごした方がいいよ」

ニラミオヤジ「あ、そっか。やっぱ読まなきゃダメか。本」

ヘイヨーさん「そりゃ、読んでおくに越したことはないね」

ヘイヨーさん普段から「別に本なんて読まなくていい」って言って回ってるんですけど、これもハッタリですよ!

そしたら、ニラミオヤジが「何読めばいい?」って聞いてくるもんだから…

ヘイヨーさん、「ブコウスキーなんていいんじゃないの?」って答えたんですよ。

ニラミオヤジ「ブコなんて?」

ヘイヨーさん「ブコウスキー。チャールズ・ブコウスキー。知らない?超おもしろいよ。超エロいし。オススメは『ポスト・オフィス』って作品だね」

ニラミオヤジ「エロいの?じゃあ、読んでみよっかな」

「うん、ぜひ読みなよ。あ!でも、そこの図書館には置いてないかな?インターネットで取り寄せたら?」ってヘイヨーさんが言ったら、ニラミオヤジがこう答えてきたんですよ。

「いや、でも、オレ、インターネットとか使ったことないし」

ヘイヨーさん「え?使ったことないの?インターネット!」

ニラミオヤジ「ないね…」

ヘイヨーさん「じゃあ、アマゾンも使ったことない?なんでも買えちゃうよ。本でもパソコンでもテレビでも」

そしたら、ニラミオヤジが「なにそれ?ジャングルから商品が送られてくんの?」って20年前の世界から来た住民みたいなセリフをはくわけですよ。

で、ヘイヨーさんも参っちゃって、懇切丁寧にインターネットとアマゾンとチャールズ・ブコウスキーについて教えてあげたら、超仲よくなっちゃって。ドラッグストアは出禁にならずに済みました。

こうして、ご近所の平和は今日も守られたのでしたとさ。

めでたし♪めでたし♪

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。