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『罠』のはなし

2022.7.9(土) 13:30開演
演劇ユニットHORIZONさんの『罠』を観てきました。
今回の公演はBLUE MOON と YELLOW PARROT の2パターン。
6人のシャッフルキャスト公演でした。
私はBLUE MOON公演を観劇。

観劇ログ

HORIZONファンの自分を思い出しました。どこを見ても推し。どこをとっても魅力を語れる。箱推し。

OPダンスの照明が落ちて、曲が流れ始めた瞬間鳥肌が立ちました。何か異様なものが始まる、って感じがしてよかった。

久々にHORIZONさんの舞台を純粋に客席から観たのですが、本当にキラキラしていました。私は元々、ただのHORIZONファンなんですよね。色々な感情が混ざり混ざって、2時間の舞台があっという間に進んでいきました。

これは愛のこもったDM

役者さん個人について

ダニエル役 天野仁さん

ちょっと頼りない、というか可愛いタイプの天野さんで、なるほど、そういう方向性かー、という感じがしました。
天野さんは、「武骨で周りに馴染まない男」か「周りに人がいないと駄目なタイプ」のどちらかに振れているイメージがありますが、今回は後者寄りでした。

だからこそ、真相がわかった瞬間の狂気。
私には、ダニエルが演技をしていたようには見えなかったな…。怪しい女と神父にしっかり怯えて、唯一味方になってくれる刑事さんに縋って、2人の証人から垂らされた蜘蛛の糸を掴まんとして。ごくごく自然なその感情の底に、奥さんを手にかけたという事実がある。その事実だけが異色。だからこそ、彼には底知れぬ恐ろしさがある。無垢な狂気に近い感覚。強かさとか、狡猾さのようなものが、どうしても感じ取れなくて、それが彼のおかしさを際立たせている。

天野さんのお芝居からにじむダニエルの気弱さが、いい仕事をしていたなあという印象でした。
どうにかダニエルの怪しさを拾い上げようと必死に見ちゃった。こうして役者の手のひらの上で転がされるんですよね。

フロランス役 芝原鴇さん

私は芝原さんのフロランスが観たくてBLUEMOONを選んだんですよ。
いや、ね?
普段あんなに格好いい、渋い、儚い、面白い(?)男役を演じる芝原さんの、色気マシマシのお姉様、どうしても観たいじゃないですか。
実際見ると、まずもってビジュが良すぎる。ビジュに始まり、仕草、声色、全てが大変にえっちでした(こんな感想でごめんなさい)

真面目な感想を言うと、青い衣装に変わった時点辺りからかな?明らかに敵サイド感を醸し出してくるんですよね。最初は混乱から始まるのに、どんどん恐怖に変わってく、一気にダニエルを追い詰めていく感じ。
神父と明らかにグルなのも良い。
それから、銃が似合う。圧倒的強者。

いつもよりも、「役に没入する芝原さん」って印象は受けなかった気がするけど、それはフロランスが、余裕をもって周りをよく見るキャラクターだからなのかな、とかも感じたり。
総じて、見れてよかった。

刑事役 草野冴月さん

私は、この人を見てHORIZONさんのファンになったんだ、ってことを思い出しました。

刑事は場を回すのが上手いんですよね。ダニエルの味方をしてみたり、中立の立場をとってみたり。まあ、上手い、というか、事実「仕掛け人」なわけだから、そりゃ当然ではあるんですけど、でも、全然違和感がない。気づいたら罠に嵌っている。何の違和感もないまま転がされている。
脚本の妙はもちろんありますが、草野さんのお芝居によって、刑事というキャラクターが、自然と場をまとめる人として機能している、っていう凄さ?がありました。

最後のネタバラシになって初めて、しっかりとしっかりとダニエルを突き放す。温度が下がる。冷たく、突き放す。この落差がとてもよかったです。しっかりと絶望に叩き落すことで、相手をゆする。衣装が柄シャツからカッチリした黒に変わるのも良きでした。

ダニエルが、妻がグルでボスなのだ、という意見を展開するシーンでは、妻は死んでいる、という証言が聞き出せる瞬間か?という緊張感、あの瞬間の表情が、完全にダニエルを追う側の空気感と表情で、一気に緊張感が高まった気がした。脚本を知っていたから余計に。これは天野さんの間の使い方がめちゃくちゃうまいっていうのもあると思うんですよね。からの、掛け合いとしての間の使い方、上手かったな…。

マクシマン役 朝池潮さん

THE・仕掛け人、でしたね。
本当に、積極的に仕掛けていく立ち位置の人。わかりやすく工作してダニエルを揺さぶるお仕事。ずーっと、標的を狙っている目をしていました。噂のハイライト入らないの賜物なのか、セリフ外の、見ている、っていうシーンの印象が強いです。
視線が厳しいんですよね、ダニエルへの。彼のこと嫌いなのかな?っていう印象が最終的に残っています。
喋ってない部分が印象に残るってすごいよね。

あと、みんな好きだったポイントだと思うんですけど、威圧するとき、とりあえず声が大きくなるの脳筋でよいですよね。こっちから訴えますよ、の圧(笑) 最高でした。めちゃくちゃ声張ってるこっちが本体だな?みたいな印象を受けました。
その後ラフな衣装になってからの砕け具合に、さっきの本性のところが出てきたな〜って感じがして、フロランスとのタッグも相まって、悪役感あってとても良かったです。
どこまで演技なんだろうな、彼は。めちゃくちゃ素の、作戦外のマクシマンに会いたくなりました。

ベルトン役 月野天葵さん

ダンスの時の表情がね、最高でした。天葵ちゃんを見るにはとてもいい席だったのだけど、そっか、ダンスの時こんなにいい顔してるんだ。って改めて感心しました。私、座組の外側で天葵ちゃんの演技見るの初めてかもしれない。客席から見る天葵ちゃん、大変魅力的でした。

そして本編。可愛いです。大変ド可愛いです。
なるほどー、そうなるかー。うん、可愛いね。医者らしからぬ可愛さ、頭の弱さ。ん?おバカさんなのかな?可愛いね?という感情で見守っていました。
でも彼女、本物の奥様の死亡診断してるわけですよ。ダニエルと対峙するの、実際すごい怖かったと思うんですよね。その背景ありきで、露骨に狡猾さを押し出したキャラ付け、見事だと思いました。
天葵ちゃんが演じるにあたって、無理がなく、かつ、最適解。それが当然としか思えない違和感のないキャラ解釈。素晴らしいですね。
頭が柔らかいな。私ではきっと出てこないベルトンだな。天葵ちゃんだからこそのベルトン。面白いな。

あと、最後の一言。ネタばらしの重さと、でもそこに少しの歯切れの悪さ。後々知ったのですが、借金はホントにあったんですね笑
台詞のニュアンスに妙に納得しました。


絵描き役 帆鷹杏璃さん

知ってはいたんだけどさ、贔屓目なしに最高でした。
登場した瞬間から、場の空気が変わる存在。良い意味で異質。
決めるところは決める。その場で、中の人が思考している様子を感じさせない、からかな?本当に洗練されていて無駄がない。コロコロ変わる表情。顔が見えなくても声色と体の緊張でわかる怯えや焦り。喜怒哀楽、感情全部、矛盾がなくて、ものすごく見やすかった。矛盾だらけの人たちの中にいたから余計際立ったのかもしれないけど、素晴らしいな。本当に良い役者さんだよね。

で、ビジュアルが最高ですね。ふわふわ跳ねるパーマのかかった長めの前髪から覗く楽しそうな顔が忘れられません。
もうね、愛嬌の塊。ワインを買ってあげましょうね。

それから、よく考えれば、全部知ってて、それも演技だったんですよね?と思うと、絵描きはガチ役者だよなあ。多分、聞かなかったことにして、素でその場に立つことにしたのかな?て考えました。ベルトンは考えてキャラ作って挑んでそうなので、真逆なんですかね?そうなると、絵描きは構造としてはダニエル寄り?
(…ここからは私の妄想が入ってきてしまうのでこれ以上はやめておきます。)

全体としては長くないはずの出番で、ここまで強烈に印象が残っているのはやっぱ凄いです。
キャラの作り込みが本当に凄い。
そして、自由のきく役やってると活き活きするんだな。とても良かった。
ベルトンも見たかったな…。

まとめ

もう終演から一週間経つのやばいな…。

YELLOW PARROTが見れなかったことが悔やまれます。スイッチキャストも見たかったな…。
書き始めたら終われなくなってしまって、もう少し色々書こうと思ったけど一度ここまでにすることにしました。

本当は照明のこととか物販のこととか書こうと思ってたんですけどね…。
気が向いたらもう一つログを作ります。

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