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『星導く祷』のはなし②

ひとつブログを書いて、なるほど、共演者から見た各キャラクターについて書けばいいか?というところに落ち着いたので、演目ごとの感想文を書きます。鉄は熱いうちに打て。思い立ったが吉日。

「Santa Maria」について

草野さんから、「マリアについて教えてほしい」と連絡があり、私の頭の中にしかなかった情報をたくさんお話させていただいて、出来上がったのが「Santa Maria」でした。ただ、私が話したのは、マリアがピアニストにならなかった理由、医者を目指した理由、母方のおばあちゃんに引き取られていたこと、星に話しかけて絶望し、星に諭されて前を向いたこと、といったくらいの漠然とした内容だったので、こんなに素敵な舞台に仕上げる草野さんは、本当にすごいな、と思いました。
お話ししたとき、私の中のマリアは、もっと不憫で不遇でかわいそうなさみしい人生を送っていたのですが、脚本になって、それが舞台になったときに、マリアは愛されているんだなってことがわかってきました。
マリアが生きていたのは、優しくて暖かい世界でした。
めちゃくちゃいいお話でしたよね。大好き。

実は脚本自体はかなり長い期間手元にあったので、すごく早い段階から読み込みを進めていました。今までの人生で一番書き込みをした台本だと思います。かなり時間の進む話だったので、各シーン時点でマリアが何を理解していて、何を認識できていないかをハッキリさせることは、意識して演じました。また、年齢の演じ分けが必要だったので、話す速度や声の高さ、活舌の良し悪しの具合などを調整して年齢感が出るようにしました。ちゃんとできていたら嬉しいなあ。

金村マリアについて

10歳で視力を失い入院したマリア。両親は失明した時点ですでに亡くなっています。入院生活は半年続き、死の直前にベテルギウスに出会います。

登場キャラクターについて

ちょっとした裏話と、キャストさんへのお手紙に近いものです。

椿屋アンナ

アンナさん役は、マケマケ所属の森下千尋(もりしたちひろ)さんでした。
元々、アンナさんは『西の魔女が死んだ』に出てくるような、洋の雰囲気を持ったおばあちゃんをイメージしていました。森下さんのおばあちゃんは、本当に想像そのまんまのアンナさんで、すぐ大好きになりました。
稽古では森下さんの包容力がすごくて、初共演にもかかわらず、距離感を感じずに自然に家族になれた気がします。稽古場でもたくさん読み合わせをしてもらえて安心して本番に臨めました。お迎えのシーンでは、マリアへの愛情やおいていく側の辛さを目がものすごく語っていて、何度やっても大号泣でした。愛された記憶が、マリアの生きていく糧となりました。
あと、裏話的に、森下さんには、実際にアンナさんの長台詞にある「きらきら星変奏曲のこと」「オリオン座流星群のこと」「誰かわからないパパのこと」を喋って、聞いてもらう、というのを初日の本番前にやらせてもらいました。稽古場で中々時間が取れなかったので直前になってしまったのですが、やれてよかった。自分の中でも整理がついたし、知ってもらっている、というのはやはり安心感がありました。
おばあちゃんは、マリアの母親そっくりで、すごく母親と重ねて、仕事で忙しかった母にしてほしかったことをすべて叶えてくれたような気がします。

大上先生

大上先生役は、HORIZONの朝池潮(あさちうしお)ことさっちゃん。
『Contamination』ぶり2度目の共演でした。コンタミでも夏目征木でガッツリ絡ませてもらったんだけど、始まりがそこだったためにお互い謎によそよそしいまま星の稽古がスタートした印象があります。撮影の時とかね、まだ全然どうしたらいいかわからなくて。やっとゲネで慣れた&関係性がつかめた感じがしました。夏目ちゃんが不得手領域すぎて最後までどうにも掴み切れなかった感があるのですが、今回、やっとさっちゃんのお芝居と噛み合った気がします。
さっちゃんは本当に魅力的なお芝居をするし、顔も所作もカッコいいので、出会い方が違っていたら多分普通にただのファンです。すごく近くでお芝居できて役得。声がよくて、セリフ回しが綺麗。会話のテンポがすごくいいので、掛け合いがとても楽しかったです。
最初私の頭の中にいた大上先生はもっと遠いところにいる存在だと思っていたのですが、さっちゃんの大上先生はちゃんとマリアに目をかけて、優しく寄り添ってくれる素敵な主治医でした。真面目過ぎてちょっとズレてる時があって、でも真っすぐ患者に向き合っている。そんなお医者さんを感じました。

アルデバラン

HORIZONの天野仁(あまのじん)さんが演じていました。南の空の統括を行う偉い人です。強そうな男性の風貌です。
今回の舞台で、一番目が合ったキャラといっても過言ではない。マリアの方を真っ直ぐに見て世界の理を教えてくれます。多分その目と表情が好きすぎて共演者の方々には何度も話してしまった気がするのですが、アルデバラン、すごく優しい顔をするんです。出会ってすぐの「そうか、君か。」と、「パパは元気?」に対する「あぁ、とてもね」の表情、お客様に正面から見せてあげたい。おばあちゃんのことを心配して帰ってきたのに、毒気を抜かれてしまうんです。そして、ベテルギウスの話をするときは特にいい顔をします。表情だけで、どれだけ相手を想っているかわかるんです。そりゃ「本当に仲良しなのね」ってなります。
あと、エスコート、すごくかっこよかったです。声をかけるタイミングも気遣いに溢れていて、すごく好きでした。
世界のこと、アルデバランに教えてもらえてよかったです。

レグルス

フリーの望月悠里(もちづきゆうり)ちゃんが演じていたレグルス。星たちの中でもかなり若くして亡くなった星の少年です。
キラキラの大きな目をしていて可愛いんです。
『星護りの道』でレグルスを見た時から、没入型で、すごく上手に間を使う役者さんだな、と思っていたので、台本をもらった時から共演が楽しみでした。今回、一緒にやって一番怖いな、と思った役者さんでもあります。
私は元来人と目を合わせたり物理的に接触したりする芝居がめちゃくちゃ苦手なので、スイッチの入ったゆうりちゃんのお芝居は、中の私がびっくりしてしまします。でも、すごく好きな芝居をしているので、近くで見られて嬉しい。
特に大上先生と3人で会話するシーン。千秋楽でやっと上手に目を見られました。すごく心配した顔をしてくれていました。一番最後のシーンでは、友達ができたと言ったマリアに、心から喜んでいるような、本当に優しい笑顔を向けてくれました。良かったね、と言っているようでした。見守ってもらえて幸せでした。
あと、初回の立ち稽古の時は肩で沈めてごめんなさい。

ベテルギウス

多くはここでは語りません。多分星を落とすの方でたくさん書くので。
芝原さんの纏う空気と触れる手の優しさ、一瞬であの10歳に引き戻してくれる力があります。パパと喋れば自然にあの夜に戻れます。大好き。

アンサンブル

5名の方がアンサンブルとして参加してくださいました。
特に最後のシーン、舞台上で5人が笑顔を向けてくれるようになって、マリアはこの先きっと大丈夫だと思えました。友達ができて嬉しかった。
私の役作り的にも、リアルJKと会話する機会に恵まれて、とてもありがたかったです。青春の記憶が少し呼び起されました。
あと、若いアンサンブルちゃん達はすごく元気が良くて、こちらまで元気をもらいました。みんなの存在が可愛くて癒しでした。舞台や客席のプリセットや挟み込みなどのお手伝いもたくさんしてくれました。
かほちゃん、なのかちゃん、ゆいちゃん、ゆづきちゃん、りんかちゃん、一緒に舞台に立てて嬉しかったです。本当にありがとう。

裏話的ないろいろについて

「Santa Maria」の出演キャラクター、全員、マリアに触れる手や向ける表情がめちゃくちゃ柔らかくて暖かかったです。
今まで、マリアはかなり演者さんに煙たがられていた(仕方ない。気持ちはとてもわかる)のですごくマリアは嫌われているのかなと思っていたのですが、今回の登場人物たちはマリアのことを愛してくれていてすごく嬉しかった。マリアが思ったより暖かい世界で生きていて安心しました。

orionとベテルギウスを最大限にリスペクトして、演出がついているところ以外にもこっそり要素を仕込ませていただきました。
お墓参りの時、鼻歌を歌っていたり、(Twitterでも呟きましたが、)明確に3箇所、特にベテルギウスの魂を表に出すように細かい調整をしました。想像の余白も残したいので、一つだけ紹介させてください。
アルデバランの名前を聞いた時、「アルデバラン…」とつぶやく声色にベテルギウス風味を乗せて、マリア自身には、何か内側から懐かしい感覚を感じてもらいました。レグルスにその名前は聞いていなかったけど、アルデバランの名前を聞いた瞬間、彼の上司だと本能的に理解しました。そして、その後のアルデバランの表情と相まって、なぜか彼が悪い人じゃないような気がしてしまいました。
残りは誰か気づいてくれた人がいたらいいなあと思っています。
もしもどうしても知りたかったらDMしてください。

結局やっぱりすごい長文になってしまいました。
もしここまで読んでいただけた方がいたら、ありがとうございました。

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