アルバム『Hello』セルフライナーノーツ
Hello1103の1stフルアルバム2枚同時リリースの1枚目、「未来への憧憬を体現する」と銘打った『Hello』にはビートが入った派手目な曲が振り分けられたのもあって、シングルリリースされた曲が多めに収録されています。
我々の活動を追ってくれている方には「1stフルアルバム」が意外に感じるかもしれませんが、『aruhi』は7曲入りのミニアルバム、『Mouseion』はブックCDなので今回がフルアルバムとしては初になります。
Prediction
『Prediction EP』より。
「予測」という名を付けられたこの曲は、自分の心中に常にある未来への憧憬を表現したもので、『Hello』を象徴するようなトラックです。
比較的ポジティブな曲調のせいか、明るい未来への期待感を表しているように読み解かれることが多いですが、自分としては人類の結末が明暗どちらに転ぶかは割とどちらでもよく、それよりも物語を最後まで読み終えること自体に対する欲求がこの音を作ったように思います。
収録にあたって一部リズムトラック等を差し替えました。
Enthusiasm
『AIのための6つの感情曲』リリースイベントを催した際、7つめの感情曲としてアンコールで演奏されたトラック。
今ではライブの定番曲となり、発表当初と比べて演奏の練度も大きく向上したのでボーカルを再録しました。
勇壮にリズムを刻むストリングスの源流は、Hello1103主催コンピレーション『霧の塔』にdeweyから寄せていただいたトラック「Elfenbein」から。
象牙の塔の佇まい、その威容をそのまま音にしたかのような弦の響きに憧れたのです。
世界の雨
『Prediction EP』より。
初音ミクは繰り返し「世界に雨が降る」と歌っています。
Music Videoで登場する傘の少女は髙江田ハサミさんによるイラスト。「Prediction」「楡の夢」「Ark」と並んで高江田さんとのコラボレーション四部作のひとつです。
Hello1103のVRライブでは原曲のイメージを膨らませた追加映像を映画調で観られるようになっており、そこでもこの子が活躍しています。
Transparent Festival
2020年の9月に行った作曲生配信で「夏の好きなところを3時間でトラックにする」という企画をやり、夏と言えばフェスでしょ!ということで生まれた曲を2021年の夏に加筆。
楽しみにしていた夏フェスは2年連続で透明な存在となり、寂寞は年々深くなっていったのでした。
「世界の雨」から繋がる曲順には、雨が止んでまた会えるといいな、という思いも込めています。
楡の夢
「植物はその種類ごとにひとつの意識を共有している」という話があるそうで。
ただでさえ長い時を生きる樹木たちが世代を超えて同じ意識を持っているとすれば、その人生観(樹生観?)たるや壮大なものになりそう。
ここでは楡を主人公とし、樹木の集合意識が見る夢とはどのようなものか、という想像を膨らませて曲としました。
今回の収録版では使用音源を一部差し替えたほか、ミックスの調整が入っています。
鉄の葉脈
楡の大木に機械が絡まり、お互いを補完しつつさらに伸びていく様を思い浮かべながら、「楡の夢」に繋がるライブチューンとして作られたもの。『MOTHER3』をご存知であればそのロゴを思い出してください。
Hello1103の音楽、特にライブには機械によって人間の可能性を拡張することへの欲求と肯定感が強くあり、その側面を音楽の形で引き出したものです。
時の木
EP「楡の夢」より。楡の夢のカップリングとして植物をテーマに生まれた曲。
過去に見た様々な世界・移ろいゆく美しい景色を懐かしむ大樹のイメージ。
「時の木」の制作の直前に2018年のmouse on the keysのカナダ・USツアーにVJとして参加し、各地で多様な営みを垣間見た経験が楽曲の世界観に影響を与えたように感じます。
収録にあたりボーカルを再録。
Ophiopogon planiscapus Nigrescens
2020年冬にリリース。
2019年にデモを書いた当初からヘビーな曲調ではあったものの、どうしても世相が作風に反映されるもので、最後の段階で顕著に攻撃性が増したことを覚えています。
コロナ禍1年目には人類を襲う未知の敵に対する敵愾心が強く、状況は厳しくあった一方で生存本能が鼓舞される感覚もありました。
その後、人類サイドが一枚岩どころかバラバラなことが明るみに出るにつれて赤い血潮は黒変して澱となり、心中には虚無が巣くい、その変遷の中でこの曲が生まれたことになります。
Ark feat. Hatsune Miku
「Prediction EP」より。
宇宙船に乗って母星を遠く離れた少女が故郷を想う。Hello1103なりのSFです。
ドラムトラックを中心にリアレンジして再収録。
MVやアートワークの少女は髙江田ハサミさんによるもの。
彼のイラストには柔らかさと隙と毒が同居していて、Hello1103の音楽に絶妙な塩加減を加えてくれます。
Rainbow Kingfisher
2021年リリース。
ライブで先行公開されて以降、Hello1103のライブの締めくくりを担うことが多い虹色の川蝉が『Hello』のラストも飾ってくれます。
この曲の元になった「Kawasemi」という曲があります。
そこから数えると実に2年越しの難産で、無事お披露目できたときはとても嬉しかった。
Kawasemiも先日別の楽曲としてリリースしたのでぜひ聴いてみてください。
『Hello』収録曲の大半はMVがリリースされています。
YouTubeにMVプレイリストを作ったのでぜひご視聴ください。
『1103』のセルフライナーノーツはこちら。
リリースライブのお知らせ
2023年1月20日に『Hello』『1103』のリリースライブを吉祥寺NEPOにて開催します。
DRUGONDRAGONとVJ Paradeをお呼びしての2マン。ぜひお越しください。
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