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yk (Hello1103) ソロアルバム 『Haven』 リリースに寄せて ②制作

こんにちは。Hello1103のyukakoです。
2021年末、yk (Hello1103)名義でリリースしたソロアルバム『Haven』について3部構成で記録をしております。前回は経緯について記したので、今回は制作について書きます。

前回はこちらです。

制作 - 『Haven』 リリースまで

『Haven』 の制作期間 

前回の続きになりますが、Hello1103本体の代打として2021/10/31開催のM3 2021秋用の新譜CDを作ることになったところから始まります。
夏の段階で制作することは決まっていたものの、実際に録音しはじめたのはかなり遅く、2021年の9月になってからでした。マスタリングを担当していただいたChihei Hatakeyamaさんに2mixを送ったのが10月初めなので、制作期間は約1ヶ月
もちろん人並みに仕事やライブをこなしながらなので…うん。短いですね!
「Susurration」や「Bottomless」はライブで出来るようになっていたのでまとめるだけというのはあったものの、それでも短期間でした。
何故そんなに着手が遅くなったかというと、少し書きにくいのですが、2021年夏に無気力状態になっていたからです。

2021年夏について

2021年の夏、私たちの住んでいる東京はただ生きるだけでも精神が削られる状態でした。コロナや東京五輪に関する分断が激しく、どこもかしもいがみ合って、世相的に暗く、外に出るのも難しく、家族や仲間にも会い難く、そして親しかった人の死も複数重なりました。
個人的にこれまでの人生で最悪の夏だったと思います。
コロナ禍が始まってからの1年と数ヶ月は自分が出来ることを探して困難と戦っていたと自認していますが、ただじっとやり過ごすしかないこの夏を通して生まれた虚無感は大きく、今も心の底に貼り付いている感じがします。

少し話が逸れますが、この時期はHello1103の「Emma」Music Videoを黙々と作ってました。「Emma」はEP『Rainbow Kingfisher』収録の雨上がりや虹をイメージしたピアノアンビエントです。(編曲Hitomi、作曲yk)
新宿を中心に2021年夏の東京を携帯で撮った映像作品なのですが、無気力で暗い精神状態の中、ほのかな希望をどこかに見出したい思いで制作していたことをはっきり覚えています。

アルバムの構成

だんだんと気力が戻り始めた9月の初め、まだ『Haven』はタイトルも決まっていない白紙の状態でした。
そこから猛烈に制作していくにあたって最初に決めたのは、ライブで維持できるようになっていた「Susurraiton」と「Bottomless」をコアに据え、その間を繋ぐ構成にすること。
この2曲はそれぞれ「自然のさざめきの美しさ」と「内面の虚無感」が根底にあるので、アルバム自体のテーマもそれに則って、自己の外(外界・自然)内(内面・精神) にすると決めました。
それ以降、9月の休みは毎日2時間Prophetの音を録り続け、その中で使えるテイクを発掘してDAWで切り貼りするという方法で曲作りを進めました。
コア2曲の次に「Dusk」と「Wriggle」が出来たので、盤としての全体のバランスを取るためにピアノの弾き語りの「Moonlit」と「Goodbye」を真ん中に据え、最後に明るい印象の「Forgotten Haven」を配置しました。
ちなみに楽曲タイトルは、私の場合は曲を作り始めると同時に決めることがほとんどで、あまり悩むことはないです。

短期間の制作の善し悪しですが、熟考したり破壊・再構築をしてというような時間はないので勢い直感でこれしかないという音をピックアップしていく制作スタイルになりました。
そしてその勢いや直感には、2021年夏の暗い世相も深く影響しています。暗く苦しい気持ちの中ではあったけど、シンセでノイズやドローンのような音を出すと重かった少し心が軽くなるような感覚がありました。
『Haven』は、落ち込んでいた自分が救われた・癒やされた音をまとめた作品なのです。
だから、自分自身が安らいだ音の作品、安息地・解放区 を意味する"Haven"と名付けることにしました。そういった意味で、いつも私の分身のような7曲と紹介しています。
このアルバムはそういう背景もあるので、肩肘張らずにゆっくり沈みながら聴いていただけたらいいなと思います。

Chihei Hatakeyamaさんへのマスタリング依頼

2mixが整った10月初、Chihei Hatakeyamaさんにマスタリングをお願いしました。Chiheiさんは憧れの方です。Hello1103としては『aruhi』で依頼をしているのですが、私から連絡を取るのは初めてでとてもドキドキしたことを覚えています。
Chiheiさんにマスタリング作業していただくにあたって、マスタリング依頼初心者の言葉でアルバムの意図が伝わりづらかったら失礼だと思い、アルバムのイメージが視覚的に伝わりやすい図を送ることにしました。やりとりの中で、ご本人からこの資料をとても参考にしたと言っていただけて安心しました。

Chihei Hatakeyamaさんに送った資料


アートワーク制作

マスタリングのデータを送って一段落してからCDのアートワークの制作を始めました。「Moonlit」という曲もあるので、月をメインモチーフにして少し混沌としたコラージュのアートワークにしようと思い、画像を切り抜いて並べ始めました。

結局パッケージの入稿ギリギリまで2〜3週間ほど調整していたと思います。
コラージュの静止画は初挑戦でしたが、2021年の年始にSuiseiNoboAzの「月面源流釣行記」でコラージュのMusic Video制作に取り組んで以来、自分の得意な質感はなんとなく掴んでいました。


Dewfall Records からのリリース

M3後の『Haven』の預け先として、Dewfall Recordsにリリースのお願いをしました。DewfallはGargleのMinowaさんが率いるレーベルで、Gargleとのスプリット作品『Angarecum EP』のときにお世話になりました。
好きなアーティスト揃いのインディ・レーベルです。
作品をとても丁寧に扱ってくださったので、Hello1103で静かな作品を制作するときは預けようと思っていました。今回はソロ作品なので取り扱っていただけるか心配していたのですが、気に入ってくださりありがたかったです。
『Haven』の流通をもちかけてくれたのもMinowaさんでした。10月初めに依頼して、流通とサブスクリプション開始が12/17という短期間でした。お忙しい中、動いてくださり感謝しています。

流通に際して、バーコード等を印刷した帯をジャケットに添えることになり、せっかくなので帯文も掲載しました。
マスタリングを依頼したChihei Hatakeyamaさん、いつもお世話になっている34423さんと白水悠さん(KAGERO / I love you Orchestra)から素敵なコメントを賜りました。

拙作に暖かな言葉をくださり、ありあとうございました。
改めてこの場を借りてお礼を申し上げます。リリース前にいただいたレーベルオーナーのJun Minowaさんのコメント画像も一緒に載せておきます。
帯文に使用したテキストの全文も『Haven』の特設サイトにもまとまっていますので是非ご覧ください。

…といった具合で、自力でコンテンツを作ったり、色々な方のお力を借りて、12月17日のリリース日を迎えることが出来ました。


対談しました

たまたま2021/12/17同日CDリリースだったギターアンビエントのアーティストYorihisa Tauraさんと対談をしました。この記事の補足する部分が楽しめると思います。

Tauraさんの『Augmentation』は理知的・理性的なアンビエント作品で、私が快楽的に『Haven』を作ったのと真逆にも感じますが、根底で似ている部分があったりします。全く違う楽器でもコンポーズの手法が似ていたり。対比や類似点が面白いのでご覧ください。

次回で最後、Havenの楽曲についてのライナーノーツですね。
なるべく早めに公開しようと思います。
もう少々お待ちください。


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