見出し画像

Base Ball Bear「20th Anniversary 「(This Is The) Base Ball Bear part.3」日本武道館 ライブ感想

Base Ball Bearの20周年記念日本武道館公演。

僕が本格的にBase Ball Bearのファンになる前、2010年と2012年にBase Ball Bearはそれぞれ2度武道館公演を開催した。後追いの僕はその映像を羨望の眼差しで見つめ、その度にBase Ball Bearにまたいつか武道館のステージに立って欲しい、その姿を自分の目で見たいと強く願いながら活動を追い続けていた。

今年5月の日比谷野音公演で3度目の日本武道館公演開催がサプライズ発表された。あぁ、ようやく遂にBase Ball Bearの日本武道館公演をこの目で見ることができるのかと喜びで胸がいっぱいになったことを今も昨日の事のように覚えている。半年先かぁ、随分先だななんて思っていたのに、あっという間にその日を迎えた11月10日。Base Ball Bear20周年イヤー最後の日。

(This Is The)Base Ball Bearというタイトルの通り、殆どベスト盤みたいなセットリスト。そしてゲストが多数登場した5月の日比谷やコラボレーションが印象的だった8月の対バンツアーと対比させるように徹底的に3人だけで作り上げるステージ。スリーピースバンドに生まれ変わり、ライブを重ね続けたBase Ball Bearの演奏の地力やキレを見せつける、どこまでもThis Is The Base Ball Bearなライブ。

前回前々回と比べても、あるいはこのキャパの他のミュージシャンのライブと比べても奇を衒った演出や大掛かりな舞台装置も無い、さもすれば丸腰と言っても良いような中でのライブではあったけど、それは言い換えればライブハウスが主戦場の彼ららしいライブでまさに「ライブハウス武道館」という出で立ちのライブになっていたし、ストレートな曲の良さと演奏の地力のみで武道館の魔物に挑む彼らの背中はあまりにも逞しかった。

4ピースから3ピースに否応なく変化せざるを得なかった状況を彼らは自分たちの楽曲である「EIGHT BEAT詩」でこう喩えていた。

突然もげた片翼 狂うバランス 無様に羽ばたくイカロス

Base Ball Bear「EIGHT BEAT詩」

この喩えに乗っかってみるとすれば、Base Ball Bearにとってこの6年間は残ったもう片翼と身体だけでこんなにも自由に飛び回れるのだと証明し続ける6年間だったはずで、その集大成が今回の武道館公演だったのだと。

何度となく聞いた、なんなら今年に入ってからも4回はライブで見ている「short hair」の瑞々しくも儚い情景描写に何度だって感動してしまうし、「初恋」で描かれるピュアな恋愛感情に泣けてしまう。「ポラリス」で表出するスリーピースバンドとしての矜恃に胸を掴まされるし、「changes」で描く不確かな未来の中に宿る確かな希望に何度だって励まされる。これまでの曲、何度も聞いた曲ですらこれだけ感情を揺り動かされてしまう2時間半。

何より今回グッと来たのは新曲の「海になりたい part.3」や比較的最近の曲である「風来」、そして「ドライブ」。音楽に対する真摯で純粋な愛を片思いに喩えながら歌う「海になりたい part.3」は、次の曲の聞き心地すら変えさせてくるほどのパワーに満ちていて、「風来」はまだまだこれからもBase Ball Bearの活動は続くという宣言のように武道館に鳴り響いていたし、「ドライブ」はすべての生きとし生ける人たちを大肯定してくれた。もちろんその端っこには自分もいて、そんな端っこにいる自分すらも掬い上げてくれるあまりにも大きな包容力があの「ドライブ」には宿っていた。ベボベと出会っていない人生を思い描くことはとても難しいくらいには人生に影響を受けているし、そんなベボベに人生を肯定されると胸が熱くなる。

ちょっと 愛しているよ

Base Ball Bear「ドライブ」

この「ドライブ」の最後のフレーズを噛み締めるようにライブが終わったのが本当に素晴らしいかった。思えば開演前からグッズやCD販売に沢山のファンが詰めかけていたことも、物販のスグ横に置かれたメッセージボードにミッチリとファンからのメッセージが残されていたことも、ファンに感謝を告げる小出祐介のMCも、前回前々回と動員数が殆ど変わらなかったというMCも、武道館という大きな会場にびっしりと参加者が集まっていたことも、1日中愛に溢れていたライブだった。「ドライブ」のこの最後のフレーズはそんな音楽愛やバンド愛に満ちた武道館公演を締めるのに相応しかったし、その瞬間会場の客電が点いたのも自身の存在を肯定された気持ちにさせてくれた。

「武道館のステージに立っているBase Ball Bearを見たい」という夢を叶えてくれて本当にありがとうという気持ちでいっぱいになった夜だった。そして20年絶えずバンドを続けてくれてありがとうとも。ただベボベの音楽が好きなだけで活動を追ってきただけなのに、バンドからご褒美を貰ったような夜だった。彼らはファンを篩にかけてきたと話していたし、そういう側面も確かにあるだろう。それはネガティヴなことなんかでは決してなく、ファンを篩にかけるような天邪鬼なバンドだからこそ活動を追うのが心底楽しいのだ。次はどんな音を鳴らしてくれるんだろうと常にワクワクしてる自分がいる。露ほども懐メロバンドじゃない、常に最新モードが最強のロックバンドがBase Ball Bearなのだと。

変わり続ける君を、変わらず見ていたいよ

Base Ball Bear「short hair」

これからも絶えず変わり続けるBase Ball Bearを変わらず見ていたいと思う。

Base Ball Bear「20th Anniversary 
「(This Is The) Base Ball Bear part.3」日本武道館

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

社会人の傍ら、ライターを目指して奮闘中。サポート頂けたら励みになります。ライター活動の資金にさせていただきます。