見出し画像

7/3昼・7/8昼【クロードと一緒に Being at home with Claude】「彼」の初恋の物語

2014年から再演を繰り返している作品であること、松田凌さん自身がクロードは原点だとお勧めしていること、ずっと気になっていた作品だった。2023年7月の再演が決まり、とても楽しみにしていた💙

横浜を訪れた二日間とも天気は最高で、赤レンガ倉庫の写真をたくさん撮ってしまった。

馬車道駅から歩いてくると最高な景色

概要

◇日時
横浜公演:2023年7月1日(土)~ 7月9日(日)赤レンガ倉庫1号館3Fホール
京都公演:2023年7月20日(木)~ 7月23日(日)京都文化博物館別館ホール

◇特長

1967年のカナダ・モントリオールを舞台に、殺人事件で自首してきた若い男娼の取り調べを描く。1986年の初演に始まり、フランス語から英語に翻訳されてカナダ国内、イギリスなどで長年にわたって再演が繰り返されている。日本での初演は2014年。

Wikipedia

◇あらすじ
1967年7月5日、月曜午前10時。カナダ、モントリオール、判事の執務室。容疑、殺人。自首してきた若い男娼。外には大勢のマスコミ。
刑事の取調べは36時間を超えた。真実だけが、見付からない。

◇公式サイト

以下、個人の感想となります。ラストまでのネタバレが多く含まれてるので、未鑑賞の方は避けていただければと思います。

実は観劇1回目はあまり内容理解できず、面白いとか感動したとかいう段階にいかなかった(その直前が忙しかったのもあって頭がボーっとしていたかも)。「彼」の混乱ぶりを表しているのだけど、話があっちこっちに飛んだり、主語がコロコロと変わったりして、時系列や話の流れが掴みにくかった。そして、とにかく台詞量がとんでもなくて圧倒されてしまった。観てるだけですごく疲れたんだよね。怒鳴ったり落ちたり、人の感情の揺れを見てるとものすごく疲弊する。演者はこの公演を昼夜やるのかすごいな、と思っていた。
って感じだったので……2回目は、ある程度Twitterで流れてる感想や、過去公演のレポを読んで臨んだ。そうしたら、2回目はよく理解できてすごく面白かった!!! この内容を2回観るの辛いのでは思ったりもしたけど、行ってよかった。

「彼」の、クロードへの初恋の物語

1967年当時のケベック州では、同性愛は犯罪だったらしい。そんな時代背景の中で起きた物語だった。時系列とか誰が何をしたとか調べたり人のレポを読んだりもしたんだけど、2回目を観てもっと単純な話だと思った。これまで性とお金でしか人と繋がれなかった「彼」の、クロードへの初恋の物語なのかなと……愛というか、恋みたいな青々しさがあって可愛らしかった。
お風呂にお湯をためておいたって思われたら恥ずかしい、私はここがものすごく好き。なんだ、ただの恋じゃないか! と思った(良い意味で)。ケツの穴でしか人と繋がれなかったイーブ。客とのセックスがいいものであっても、自分自身が楽しんだ時であっても、お金を貰うことを忘れたことなんてなかった。なのに、クロードからはお金を貰わなかった。クロードは二人分の食事とワインを用意してくれた。

究極の愛のお話ではあるんだと思うけど、私はどこかで、ありふれたカップルの話なんじゃないかとも感じた。最後に相手を殺してしまうこと以外は。愛を知らずに育った青年が、人に大切に扱われて、とてつもない幸せを感じたのだろうと思う。クロードからイーブへの愛情は「手帳の記載」でしかわからないけど、イーブのこと大切に思ってたのが伝わった。日記のほとんど全ての行にイーブのこと書いちゃうくらいに。
これについて、日記に自分のことが出てくるのは、すべてのページなのかすべての行なのか、をはっきりさせようとするイーブ、かわいかったね。

同性愛が認められないという時世だからこそ悲恋ではあるけれど、誰もが誰かを普通に好きになるように、イーブとクロードも普通の恋愛だったんじゃないかなと。けれど、同性同士だと普通の恋愛すら許されなかった。だから、幸せの絶頂の瞬間で終わらせたくて、相手を殺してしまったのかな。

1997年にカナダのケベック州で、世界で初めて性的指向による差別が禁止され、雇用、住居、社会サービスなど、公私に関わらず誰もに同じ人権、権利が認められるようになりました。そして、2003年にはBC州とオンタリオ州で同性同士の結婚が認められ、2005年にはカナダ全土で同性同士の結婚が合法となりました。

https://www.canadaimin.jp/lgbt.php

舞台がモントリオールである理由。美しい景色だったりとかに意味もあると思うんだけど、もう一つ、世界で初めて同性愛が認められたケベック州だからこそなのかな。30年後だったら寄り添えた。でも、世の中が変わるまで30年待つことなんてきっとできなかったと思う。
よくわからなかったけど、クロードの預金残高が減っていた?(経済的に困っていた)のはやっぱり親に性的嗜好がバレてしまって勘当された、ということなんだろうか。あるいは勘当されることを想定してお金に細かくなっていたのかな。

幼い青年のようなイーブ

この前まで新撰組をやっていたのに、今回は海外ドラマに出てくる幼い青年のような感じがして、本当すごいな松田凌! と思ったよ。イーブは何歳くらいの設定なのだろう……18〜20くらい?
「サンドウィッチでも食べたんじゃない? 覚えてないけど」「言っただろ胃が痛かったって!」「酔っ払ってたのかもしれない、わからない」とかの普通のセリフが好きだった。支離滅裂だし、海外の戯曲ならではな感じの軽快なセリフ。
私は2回とも上手側の前列で観たので、イーブの表情がコロコロ変わるのがよく見えた。怒ったり呆れたり絶望したり、無表情だったり。顔が整ってるのもあるが、どの表情も魅力的だった。

ほとんど笑わないんだけど、「(クロードの)ガールフレンド」について、刑事に聞いた時の笑顔が印象的だった。ガールフレンドがいたというショックを隠して、わりとサイコパスな表情で皮肉るような顔。これは2回目だけだったと思うのよね。クロードは毎公演、セリフ回しや動きが違うと見かけたけど、まさにそうだったと思う。

判事は二人目の客だったんだね。イーブは、クロードの性的嗜好が面白おかしく世の中に出るのを恐れて、判事と取引をしようとした。クロードの部屋を出て、意味不明にいろんなところに行って走ったり寝たりしたけれど、警察に電話をした。「腐っちゃう」から。クロードのこと大切に思ってたんだね。タンクトップにジーンズ、使い古したスニーカーを履いた、幼い青年のようなイーブ。どんな気持ちでいたのかを思うと、胸が苦しくなる。

最後の一人台詞、30分以上ひとり喋りだったんじゃないかな。二人の会話劇だけで場面が一切映らないのに、モントリオールの夜の広場、クロードの部屋なんかが想像できた。

キャスト、劇場全てが良かった

イーブのことを中心に書いてしまったけれど、神尾さん演じる刑事も本当に良かった。かっこよかったな〜! 刑事の一人台詞もかなり長かったと思う、上手かった……! 男娼をたくさん見てきた経験は本当なんだろうけれど、イーブはイーブとクロードの個別の話をしていたんだなと。それは伝わったんじゃないかな。
井澤さん演じる速記者。7/8のマチネでは、イーブの投げ捨てたスニーカーが引っかかってしまってドアが開かなかった。井澤さん、丁寧にスニーカーを揃えてドアを開けるんだけど、そのアドリブ(?)すごく良かったな。(その日のソワレでも、やっぱりスニーカーを揃える演技が入ったらしい)
鈴木さん演じる警護官。開演前の「見回り」で、思いっきり目があってびっくりしちゃった! 怖かった。笑


パンフレットを読み、クロードの青、Blue Blood(貴族の血筋)の意味を知り、ゾワっとしちゃった。

美しい青💙

松田さんがモントリオール巡った記録も読めて大満足。実際の地を知って演じたからこそのリアル感なんだろうなぁと。

そして赤レンガ倉庫の劇場は、雰囲気ぴったりで。

赤レンガ倉庫一号館
窓から海が見える風景もたまらん
このビジュアルほんといいよね!

きっと京都公演も、雰囲気ある劇場なんだろうな〜

心残りは、2回ともマチネだったこと! 普段ならどちらでもいいのだけど、ソワレ観劇後、夜の赤レンガ倉庫も見たかったな……と少し心残り。こんなにも、観劇前後の環境から世界観が作り込まれてる作品ってそんなにないよ。

赤レンガのbillsに行ったのも良き思い出

パンケーキ食べながら、「パンケーキのように裏返しになって…」のセリフを思い出してしまう🥞 
モントリオール写真集楽しみだし、いつか必ずやモントリオールに行こうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?