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橋を渡った

夢を見た。

遠い地に住む友人たちが今夜

こちらにやって来て宴を開くと聞く。

その中の一人は誕生日だそうだ。

私はまだ昼間なのに、

手ぶらでその地を目指す。

ここからは徒歩で行くには遠い場所だが、

今から歩けば何とかなるのでは?と思ったのだ。

でも、そこまでの正確な道のりすら

私は分からない。

ただ歩きたい方へ進み、

その道が合っているのかも分からないまま、

私は大きな橋を渡った。


橋を渡るとドン・キホーテの様な店があり、

なにかプレゼントでも買うか、と思い入る。

別にめぼしいものはなく、

ただ上の階を目指す。

最上階へ着くと

そこは、コーヒーのとても良い香りがした。

そこは、ドン・キホーテにあるとは思えない渋い喫茶店だった。

私は席に着くが、隣との感覚が異様に狭い。

隣の席の人と何故か仲良くなり、

一緒に店を出ることになる。

歳は私より若いその男性は、

恋人という感じでもなく、

弟や子どもという感じでもなく

私のお供、という感じがした。

結局手ぶらで店を後にした私たちは、

ライブハウスみたいなところの前を通りがかる。

中はパーティーの様子で、

外の看板を見て、

私の古い友人の誕生日パーティーであることが分かった。

こちらでも誕生日なのか、奇遇だなと思う。

その友人とはもう何年も連絡も取っておらず、

とはいえ大切には思ってはいたので、

折角偶然通りかかったのだし、

お祝いの言葉だけ掛けて行くか、

と思い中に入る。

店内は物凄く混んでいて、

座れる席は一つもない。

立っている人も大勢いて、

とにかく混沌としている。

中央の通路の奥に友人を見つけた。

私は友人の肩を叩いて声を掛けた。

すると彼女は

『誰??』

と非常に怪訝な様子で私に言った。

ああ、髪型や服装が昔と違うから

私だと分からないのかな?と思い、

私は自分の旧姓と

古いニックネームまでを名乗る。

すると、彼女はブツブツと小さな声で

『こんなだったっけ?こんな頭の形だったっけ?』と言った。

私はなんだか気まずくなって

クルッと彼女に背を向けて出口を目指した。

招かれざる客そのもので恥ずかしい感じがしたが

お供してくれた男の子はのんびりと私に

『ここには席もないしね。出て正解だと思う』と言ってくれた。

外に出て私は漸く息が吸えた心地がした。

さっきまでの混雑した自分の席もない場所を思い出して

あんな所に私は居たんだな、と思った。

そしてもう居なくていいのか、と

なんだか清々しい気持ちになって

よし、未練はないなと思った。

宴を目指そうと思ったら

目が覚めた。






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