お掃除おばちゃん雨ブーツ

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 Pixivで公開してきた小説以外の文章を、
 noteに移して行きます。

(文字数:約1200文字)


 ホームセンターで買った安いゴム長靴を、
 そもそも消耗品と心得て、
 約一年ごとに履き潰していたんですが、

 今年は真冬に穴が空いて、
 水が染みた爪先に見事な霜焼けを作ったので、
 ワークマンでちょい高めの、
 雨用ブーツに切り替えました。

 それはさておき今回は、
 目に見える姿が必ずしも真実とは限りませんよ、
 というお話。

 我々お掃除おばちゃんは、
 入居者の方はもちろん、
 近隣住民の方々の健康に生活状況を気遣い、

 顔を合わせれば可能な限り笑顔を見せ挨拶し、
 話し掛けられれば可能な限り、
 相手の気が済むまで付き合ってあげるよう、
 管理人さんからもお願いされているのでございますが、

 「お掃除の人達おしゃべりばっかりして、
  ちっとも動いていませんでしたわよ」

 との、
 苦情をお寄せになるお方がおられます。

 我々とて好きでおしゃべりはしていないのです。
 時間は限られておりますし、
 冬場は止まっていると寒いのです。

 しかしそのような本音を、
 住民の方々に対して、
 よもや主張するわけにもいかないのでございます。

 それ以前に苦情をお寄せ下さったA夫人、
 貴女もそのお一人。

 そして承知しておりますのよA夫人。
 同じアパートの別の階に住むNおばあさまと、
 普段からあまり折り合いがよろしくない事を。

 そしてNおばあさまもそれはそれは、
 楽しく長くおしゃべりをなさる。

 御自分こそが私共とおしゃべりしたかったものを、
 Nおばあさまがいらして表に出て行けなかったからって、
 なんともお可愛らしくはございますけれども、
 苦情を寄せられましては逆効果ですわ。

 管理人さんは状況を知っておられますけれども、
 と言うより管理人さんからたってのお願いですけれども、
 たまに抜き打ちで様子を見に来られる、
 オーナーの耳にでも入ってご覧なさい。

 真に受けられて減給にでもなったら、
 たまったものじゃございませんのよ。

 解雇ならむしろ望むところ。
 ほぼ人脈で雇われて、
 義理で引き受けたようなものですからね。
 辞めても良いけど代わりは容易に見つかりませんのことよ。

 御夫人達はそれぞれに、
 身体の不調や家族への不満、心配事を抱えていらして、
 皆お寂しいのです。
 それは分かっておりますから、
 こちらも笑顔でおしゃべりに応じているのです。

 わたくしもめでたく不惑を迎えましたとは言え、
 二十年、三十年、Nおばあさまは私よりも2倍近い、
 人生の先輩方なのでございます。

 今更小娘から叱られたくもありますまい。
 ですけれど、
 ですけれどもひと言、

 こっちの立場も考えろやコラ。

 くらいは申し上げてみたいのでございます。

 以上を持ちまして幕引きは、
 華麗なるお辞儀に代えさせて頂きます。

何かしら心に残りましたらお願いします。頂いたサポートは切実に、私と配偶者の生活費の足しになります!