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東福寺が見たいんじゃない『東福寺展』が見たいんだ

 京都国立博物館で、
 12月3日までやっている『東福寺展』に、
 10月13日の金曜日に行って来たわけですが、
 仏教寺院展を見に行くのに不吉も何も無かろう。

(文字数:約2300文字)



とは言え前日に内職が入った

  事前に前売り券も購入済み。
  天候に他の予定に、
  月の障り周期も予測しての体調に、
  会期中の展示替えも考えてここしかないと、
  13日に狙いを定めていたんだが、

  「大丈夫だよ。来週月曜までで」
  と配偶者は言ってくれるんだが、

  頂いた内職にざっくりと目を通して、
  「家から博物館まではドアtoドア2時間だ。
   朝9時から行って11時に着いて、
   約2時間見て昼食を食べて、
   14時に京都を出れば16時に帰宅して、
   18時の貴方の帰宅までには出来るぞ」

  「良いよ。そんなに無理しなくて」
  「無理ではない。

   繁忙期でもあり貴方の会社は、
   ちょうど14日が土曜出勤日だ。
   私はこの案件を私の下で、
   月曜日まで留め置きたくないだけだ」

  そうしたわけで今日に限っては、
  私は『東福寺展』が見たいんだ。
  (本当はせっかく京都まで行くんだし、
   東福寺にも足を延ばそうと思っていたんだが。)


禅宗の何たるかは知らん

  生家が浄土真宗で、
  婚家が真言宗で東寺大好きなもんだからな。

  しかしながら先日高野山大学で聞いたところ、
  高野山と東福寺とは、
  わりかし縁が無くもないらしい。

  開基である円爾(えんに)、
  後の聖一(しょういち)国師も、
  宋に渡ってたった2年で、
  師匠の無準師範(ぶじゅんしばん)から免許皆伝、

  って空海かよ、
  って素で思ったし。

  円爾本人の物だっていう払子(ほっす)、
  僧侶が法要で使う白いホウキっぽいヤツを、
  ガラス越しだけど見た時が、
  今回イチでテンションが上がったかな。

  高野山の霊宝館で、
  空海所有の数珠とか倶利伽羅剣見た時も、
  大阪は道明寺天満宮で、
  菅原道真の笏に硯見た時も思ったけど、

  私「本人が実際に使ってた」って要素が、
  かなり大好きみたいね。



つまり明兆を見に来たんだ  

  そもそもわざわざ前売り券を購入したのは、
  東福寺お抱えの絵仏師で、
  室町時代の人である明兆(みんちょう)の、

  『白衣観音図』
  
がとにかく観たかったから!
  (前期展示11月5日まで)

  自分の視界に入る範囲に、
  出来るだけ長く居座り続けたかったから!

  隅々まで大好きでたまらん絵の一つなんだ。
  特に龍の前爪の並べ揃え具合何あれ私ツボ。
  正面付近が幸いガラ空きで見放題だったぜ♪

  私が世界で最も大好きな画家は、
  実はヒエロニムス・ボッスなんだが、

  なぜボッスが大好きかと言えば、
  ボッス本人はいたって真面目に、
  聖書を一行ずつ綿密に解読し、
  仕事としてキリスト教絵画に取り組んだ結果、

  後に「悪魔崇拝の絵だ」と誤解されたほど、
  奇妙な絵柄になってしまった事。

  そして同時代の人たちはおそらく、
  何の違和感も無くその絵柄を受け入れていた事。

  同じ香りを明兆にも感じる……!

  コイツただただ大好きな絵を、
  思うさま描かせてもらえて、
  画材も好きな物使わせてもらえて楽しかったよな!

  だって現実にコイツもボッスも、
  同時代人の中では明らかに絵が上手い!

  ルネサンスも始まる以前で、
  後世からは理解されなくても、
  生きていた当時は圧倒的な実力!
  そりゃ周囲も信者も黙らせるってもんよ。


餓鬼に施す三色団子

  今回の展覧会の目玉はやはり、
  その明兆が30代の頃作成した『五百羅漢図』。

  10人の羅漢(つまり僧侶)を描いた図を、
  50幅も作成して、
  会期中に約12幅ずつ入れ替えるから、
  全図見たけりゃ4回来てね♪

  ……ってなかなか鬼畜な企画。

  4回コンプリート出来る割引チケットを、
  買えるだけの余裕までは正直無かったので、

  第50号は会期中ずっと展示されるから、
  第1号が展示されている、
  10月22日までに行きたかったわけさ。
  全ては観れないならせめて最初と最後だろう。

  そして私のお気に入りは第6号!
  餓えまくった餓鬼たちに、
  僧侶が何でか三色団子ほどこしてる!

  ちっちゃいけど明らかに、
  わざわざ串に刺さってピンク、白、緑の、
  紛うかたなき三色団子!
  群がる餓鬼たちが哀しいながらもかわいい。
  わざわざ串まで描いて色付けした、
  明兆の作業風景も想像すると尚更かわいい。

  ってか室町時代に三色団子あったのかよ。
  調べてみたけど文献として残っているか微妙だけど、
  どうやら京にはあったっぽいらしいんだよな。

  明兆、さては団子好きだったんだな。

  餓鬼に施すならこれにしたい!
  僧侶たちの手ずからで有難さ倍増!
  みたく思ったんだよな。きっと。


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  会場の最後は圧巻の巨大仏像群だ。
  仁王像だ二天王像だ釈迦の弟子迦葉と阿難像だ。
  正直進路が分かりにくかったがまぁ構わん。

  そんな事より再現してある内陣の、
  ご本尊まではさすがに借り出せなかったらしく、
  写真が貼られているんだが、

  その写真を差して「バナー」言うなww

  若者にはそっちが通じる思うたかもしれんけど、
  そこは普通に「写真」で良かったやろ。
  ちょっとだけど確実に、
  現代俗世に引き戻されまくったわ。

  みっちり2時間強見まくって、
  予定した通り16時には家に帰り着いて、
  内職も無事終わりましたとさ。  

  

  

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