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きっと怪しげな客

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 Pixivで公開してきた小説以外の文章を、
 noteに移して行きます。

(文字数:約1300文字)


 かつて大阪は、
 心斎橋に存在していたココア専門店、
 『赤い鳥』が、

 惜しまれつつも閉店したものの、
 跡を継がれた方がいると、
 朝の情報番組で紹介されていたので、
 それは行かなければなるまいよ。

 常連と認識されるほどではない、
 ただの一利用客に過ぎなかった我が身だが、

 基本のココアはもちろん、
 トウモロコシ味カボチャ味ココア味ペッパー味、
 今や幻のメニュー「メドューサ」まで、
 全てひと通り試したっちゅうねん。
 普通にファンやったっちゅうねん。

 その隣で配偶者は、
 常に基本のココア
 (夏場のみミント味)だったけどな。

 新店舗は谷町筋空堀商店街付近に移りまして、
 メニューを見たらお懐かしい項目の中に、

 初めてお目にかかる
 「ショコラ・デギュスタシオン」
 なるものがございまして、

 綴り分かれへんけど、
 きっとフランス語で「試飲」だなと。

 やっぱり基本のココアを頼む、
 安定嗜好抜群な配偶者の隣で、
 私は初めて見るメニューに、
 そこでしか体験出来ないメニューを、
 やりたがりな人間なので、

 「こちら通常のメニューではなく、
  ショットグラスで3種類の、
  御提供になりますけれども」

 一見さんが頼むメニューではなかったらしく、
 心配気な説明を受けましたね。
 大丈夫です。それがやりたいのです。

 しかも傍らに置いた携帯に時々メモする私は、
 「きっと怪しい客だろうな」
 と呟いた隣から、
 「うん」
 と何のフォローも無い、
 配偶者の声が聞こえやがった。

 3種類のカカオの生産地がまずは呈示されて、
 その順番で提供されるとの事だったのだが、

   サントメ・ベトナム・ペルー

 すでに「サントメ」を知らない(泣)。
 ごめんなさいどこですかそれ。

 恥ずかしがらず飲む前に訊いておけば良かったと、
 後ほど悔やんだので、
 この時点でまとめておくと要するには、

   アフリカ・アジア・南アメリカ

 の3大陸で比べてもらうという趣向であった。

 サントメは赤道辺りにあるアフリカ大陸西側の島。
 国名は「サントメプリンシペ」ですけれども、
 サントメ島とプリンシペ島の共和国ですよ。

 という事で試飲。
 その時取っていたメモがこちらです。↓

 サントメ …… 基準。
        濃い甘。
        練ってあるのかな? 泡。

 ベトナム …… サントメの次に飲むとすっぱくて驚く。
        パッションフルーツ的。
        粒子細か。

 ペルー  …… 熟れ熟れなワインとかトマト。
        粒子荒め。

   かつてマヤ帝国では、
   王が生け贄の血をカップに受けて飲んだと聞くが、

   正味な話コイツやったんちゃうんか。
   いやきっとそうやろ。

   当時のスペイン人、
   征服の言い訳もしたくて話盛ったやろと、
   私は思いたい。

「我ながら八木プロか」
 と呟いた隣から、
「八木プロをなめるな。彼こそが天才だ」
 と何の容赦も無い、
 配偶者の声が聞こえてきやがった。

 事実心からの「うまい!」に勝る賛辞など無い。

何かしら心に残りましたらお願いします。頂いたサポートは切実に、私と配偶者の生活費の足しになります!