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春ギタートライアスロン【毎週ショートショートnote】

 全国には知られていない事だが、九州某地方では毎年結構な規模のトライアスロン大会が行われていて、私の伯父が出場していたんだ。
 全国レベルでは知られてなどいないんだが、伯父の次男、すなわち私にとっては従兄弟に当たる青年は、バンドを組んでおりギターを担当していて、
 毎年春頃になると伯父の家の近所の浜辺では、アコースティックギターの音色が響く中、走り込みやら腹筋やらのトレーニングに励む伯父さんの姿が風物詩となっていたものだった。
「あやぁ。もうそげんな時期じゃぃねぇ」
「今年もお父さんは出らさすとじゃねぇ」
 魚に包丁を入れ開く度に、地域独特の魚干し網に尾びれを刺しながら、近所のおばあちゃん達がおしゃべりしつつ、あまりに小さな魚はその辺をうろついている猫に放る。
 
  春の海 ひねもすのたり のたりかな

 従兄弟の楽曲は中原中也に短歌・俳句といった、日本文学をモチーフにしている。この環境に生まれ育った事と無関係ではあるまい。


(410文字)

 小説ですよ。
 似通った景色にそれっぽい人物たちを知ってはいますがね。

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