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貴様は何者だメンドン(『日本の仮面』展)

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 そんな次第で国立民族学博物館、
 友の会入会直後から、
 満を持しての特別展観覧だ。

(文字数:約2700文字+写真1枚)


   『日本の仮面
     ー 芸能と祭りの世界』
    国立民族学博物館 特別展示館
    3月28日〜6月11日まで


民俗学と民族学

  ところで音も一緒だし、
  大した違いも無いかの如く思われそうな、
  二種類の「みんぞくがく」だけども、

  英語で表せば
  民俗学はFolklore
  民族学はEthnology

  なんか違うからお気を付けて。

  どこがどう違うかは私もこれから探る。
  民俗学も大好きだしな。


貧乏性ですから

  博物館の中でも特別展は、
  円形二階建ての別館になっていて、
  特別展専用の空間を堪能できます。

  今回は、
  1階部分で展示品目に合わせた、
  9種類(+裏手にもう1映像)もの、
  祭り・芸能映像が流されていて、

  その全部を見倒しちゃうよね私はね。

  なんて事をしてくれるのかな。
  1映像が約10分として、
  1階だけで軽く1時間半は費やしたね。
  ほぼ立ちっぱなしだから体力削ったね。

  いや。
  椅子も適宜置かれているし、
  別に座ったって良いんだよ。

  ただ私は目の前に並べられた仮面群も、
  逐次参照しながら観たいんだよ。
  要は骨の髄までしゃぶり尽くしたい、
  貧乏性がここに極まっているんだよ。


かわいそうやん

  大好きだね。

  その土地土地に伝わる独特の、
  正直他所者にはワケ分からん囃子に踊り、
  大好物だね。

  神楽道具の貸元、林木はやしぎ
  なんて職業の存在にも、

  徳島の面劇を創始した「花の家花奴」に、
  人形作りの名人初代天狗久てんぐひさ
  なる人物たちにも、

  ゾクゾクワクワクドキドキするけどもさ。

  私的に最も目と心を奪われたのは、
  長野県雨宮の御神事で、
  橋から逆さ吊りにされる獅子役よ。

  しかも逆さ吊りにされたまま頭を振って、
  川の水を派手に飛び散らかさなならん。
  伝統の神事ですからって……、
  いやいやいや。

  過去数十年で橋の材質に高さ、
  ものごっつぅ変わってんですけど!

  ええんか?
  そこは橋に応じて変わらんでもええんか?

  そこには恐れ多いとか、あるいは、
  獅子役に選ばれた事自体が晴れがましいとかで、
  誰もよぉツッコまんのか?


何者だメンドン

  しかし何よりもメンドン。
  貴様は何者だ。

しかし立体で見た前後フォルムこそ超可愛い。

  いや。
  鹿児島県ではないが九州出身者の私は、
  おそらく貴様を知っている。

  名前と姿の異なる貴様を、
  見聞きして言い伝えられた数々がある。

  祭の最中に現れて、
  仮面というより頭全体をすっぽり覆った被り物で、
  顔が分からないのを良い事に、
  女性たちを狙って襲い回る。

  しかし女性たちは皆笑顔だ。
  襲われた方が厄除けになるとか、
  縁起が良いとか信じられている。

  なのでこの日は男の子たちも、
  「天下御免」と書いた紙面を、
  自作して被り暴れ回るとの事。

  恐ろしさに身が震えてたまらねぇ存在を、
  無理矢理にでもめでたきものに昇華して、
  愛でて笑い飛ばさずにいられねぇ、
  DNA的な血の騒ぎを感じるぜ。


ウィークエンドサロン追記

  展示内容について研究者が、
  より掘り下げて語ってくれる。

  5月5日は福岡正太先生。
  「八朔踊りとメンドン」

  そもそも「八朔踊り」という、
  旧暦八月一日、二日に行われる、
  神社前での奉納踊りが本来の行事で、

  黒い着物のかね叩き一人を中心に、
  太鼓を胸にした10人ほどが、
  円になって太鼓を鳴らしながら踊る。

  メンドンはその途中で乱入する役。

  暴れ回り女性を襲うとは言いながら、
  けしかけているのは見物に来た、
  おばあさん達だったりする。

  実は開催場所は鹿児島県の硫黄島
  (東京都の硫黄島ではないので注意)

  更にこの硫黄島、
  実は古文に出てくる鬼界ヶ島だ。
  (本当に文献的に確かだってよ。)

  火山島で現在の人口は120人。
  それなのにどうやって踊り手や、
  メンドンを確保しているのかって。
  (元々は数え14歳で初踊り。
   成人式的な名誉もあったそうな。)

  まず小中学校(生徒数は32人)の先生達に、
  山村留学で来た子達。
  そこまでは予想が出来ていたが、

  ジャンベスクールなんて学校が、
  2004年から出来ていて、
  2年間ジャンベを教える代わりに、
  村の行事とか参加してと頼んでいる。

  1994年にギニア出身の世界的ジャンベ奏者、
  ママディ・ケイタさんが、
  生まれ故郷に似た環境だからって、
  硫黄島と交流してくれたらしい。

  島の人たちの話では
  (確からしさは要検証だけど一応)、

  メンドンは悪者ではなく、
  集落に溜まった悪いものを集めて、
  海まで送り返してくれる存在。
  ヤハズ岳の天狗とか思われてる。

  八朔太鼓の方は実は、
  神社との関係は意識されていなくて、
  朝鮮出兵時に島津の殿様を救った事を祝うもの、
  とか。

  県または国の重要無形民俗文化財指定と、
  ユネスコの無形文化遺産との、
  兼ね合いとかすれ違いとか、
  ちょっと問題点も聞いた。


注意事項

  私は特別展全体に惹かれて行ったので、
  さほど残念ではありませんでしたが、

  「千本ゑんま堂大念仏狂言」の、
  仮面群が目当ての人は、

  今年5/4までの公演が終わらない事には、
  展示してもらえないと思われますので、
  要注意。


友の会に入ったからには

  さてどうしようかな。

  本館展示にも、
  行き倒し観倒したくてたまらないんだが、

  4月後半は丸一日を使いまくれる、
  平日(休館日の水曜除く)が、
  見つけられなかったので、

  4月の分含めて5月中に2回と、
  5月開催の講演会にも、
  丸1日参加する予定でいる。

  アホやで。

  自分でもなんでそんなもんに、
  惹かれまくるんか分からんで。
  吹田市までそこまで近くない交通費に、
  ほぼ丸一日と昼食代も使い込んでやな。

  せやけど観たいねん。
  なるべくなら世界各地から収集しまくった、
  実物を間近で。
  なら行くしかなかろ。



以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございました。

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