主夫にはどうやったらなれるの?【宿題】
「お母さん、○○君(僕)は怒られないと宿題しませんよ」
二十数年前、塾の面談で母に向けて伝えられた言葉。
確かに。
量が尋常じゃない塾の宿題は嫌いだった。
塾に行きだしてから放課後に友達と遊ぶ時間は皆無になっていったし。
怒られるから、って強制力がなければしなかっただろう。
そんな宿題嫌いだった僕なのだが、今、宿題を抱えている。
あのころとは違ったタイプの宿題を。
因みに、今でも強制されるのは好きじゃない。
◇◇◇
あなたは主夫と聞いて何を思い浮かべますか?
僕の予想では、かなりの確率でヒモ的なイメージが浮かび上がってくるのではないかと思う。
実際にネット検索でも、”主夫 ヒモ”が検索候補にすぐ出てくるくらいだし。
20年ほど前であれば、確かにそういったとらえ方が多かったのかもしれない。
あくまで、割合として。
ただ、今はかなり世の中の状況が違う。
女性の社会進出とともに、主夫の数も増えてきている。
だが、主夫の認知度は低い。
働く女性の認知度よりもはるかに。
なのに残念ながら主夫への誤解度は非常に高い。
平日の日中仕事に行かずに家にいると、あの人は一体何をしているのだろうか?と奇異な目で見られてしまうかもしれないのが今の男性の宿命だ。
バリバリ働く男性、働きながら趣味も楽しむ男性、イクメン……
なぜ男性は外で働いていないといけないのだろうか?
稼いでこないといけないのだろうか?
「そういうものだから」
この思考停止にはとても便利で、実はなんら中身のない言葉でさっさと議論もなく片付けられてしまっているのが非常に悲しい。
外で働かないという選択をする少数の男性は悪なのだろうか?
外で働かない男性、稼がない男性を悪とする根拠に、ただダラダラしているだけ、何かに寄生しているだけという点があげられたりする。
たしかに、そのような人ももちろんいる。
だがそうではなく、家庭を支えるという役割を担うために外で働かない、稼がないという選択肢も存在している。
そして、そういった人たちは着実に増えてきている。
選択する自由を受け入れる環境はもっとあってもいいのではないだろうか、と強く思う。
ちなみに今、どれくらいの新卒入社男性が子供が生まれた際に育児休業をとりたいと思っているかご存知だろうか?
アンケート調査の結果を知って、現在39歳となる僕は少し驚いた。
7割ほどの男性が取得したい、との意向をもっているようだ。
意向と現実との乖離はここではさておき、これだけの割合で希望者がいるということは、主夫に対しての希望者も確実に存在してると思う。
ただ、どうやったら主夫になれるのか、という疑問はどこにぶつけたらいいのだろうか?
あまりにもぶつける先がなさすぎる気がする。
主夫になりたい僕にとって、これは大問題だ。
なにせ、育児休業を取得する際に相談する先ですらなかなかなかったのだから。
僕は息子が生まれた3年前にはじめて育児休業を取得した。
だが、どうやって育児休業を取得したらいいのかという相談先を持ち得ていなかった。
だからただひたすらネットで情報を探し、自分の会社でちゃんと適応されるのか不安を目いっぱい感じながら、半ばやけくそで育児休業の申請をしたことはしっかり覚えている。
ほんと、この時の悪い意味でのドキドキ感は半端じゃなかった。
ただ、こんな不安定な状況にもかかわらず、僕は育児をすることに関してはほぼ何も心配していなかった。
「僕もしっかり育児をできる」
何か得体のしれないこの気持ちだけで息子の生後5か月~1歳までの時期、外でフルタイムで働く妻を家で支え家事育児をこなすことができた。
男性の僕がそれをやったということで褒められることも多かったのだが、女性が同じ状況で家事育児をこなしていても同じように盛大に褒められることはまずない。
「お母さんだから」
と、あらがいにくい強制力で家事育児を行うのが当たり前にされてしまう不公平な状況だ。
家事育児に全力で取り組む女性は皆、大変なことに立ち向かっていて素晴らしいのに。
この状況はおかしい。
女性にだって育児よりも働く選択の自由を受け入れる環境がもっとあってもいいのではないだろうか。
家事育児に取り組んだ時に強く思っていたこと。
「母乳授乳以外は、男性の僕でも女性とくらべて子育てで出来ないことは一切ない」
育児に専念していた時には、誰に教えられるわけでもなくこの考えが僕のベースにあった。
もしかすると学術的にみると、出来ないことは何か色々あったかもしれない。
けど、僕はそんなことは一切考えず、ただ出来るとだけ信じていた。
僕は育児ができると思い込んでいた。
だから、育児に対して男性だからと思い悩むことは一切なかった。
「自分にもできる」
この思い込みのおかげで、元来はネガティブ思考の僕なのだが、育児に対してネガティブな考えは驚くくらい出てこなかった。
人は不安になった時、できない理由を探すのがとにかく得意だ、と今になってとても思う。
育児休業の取得に関して、ダメなんじゃないかというネガティブな思考が次から次へと襲ってきていたように。
だからこそ、
「男性だから育児は……」
という思い込みは、世の中からいち早く消え去ってほしいと切に願っている。
日中一人で家事育児をしてきた日々は、僕に主夫の素晴らしさを垣間見せてくれた。
僕は主夫という生き方に魅了されている。
主夫は決してヒモなんかじゃない。
ただ主夫になるにはいろんな障害があって、僕のはじめて育児休業取得よりもハードルは高い。
でも大丈夫。
僕なら主夫としてしっかりやっていける、って思い込んでいるから。
障害も、一つ一つ乗り越えていけばいい。
◇◇◇
今は主夫に向けての宿題をこなしている日々だ。
自分で自分に出した宿題は、こなすのが楽しい。
この宿題をやり終えたとき、僕は主夫になっているだろう。
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