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仕事の最大の報酬は新しい仕事だ。

もう随分遠い昔に教わった言葉なので、誰から聞いたかは覚えていません。おそらく当時担当していた漫画家さんか、その漫画家さんが読んだ本か何かにあって聞いた言葉だったと思います。

「フリーで働いている人間にとって最大の報酬は、今の仕事をきっかけに次の新しい仕事が来ることです。」

失礼なことに誰の言葉かは忘れてしまいましたが、言葉そのものは僕の心に刻まれていて忘れることはありません。


漫画編集者が身近に接するフリーで働いている方は、同僚であるフリー編集者を除くと、主に漫画家さんとデザイナーさんです。

漫画家さんやデザイナーさんと一緒に仕事をしていくうえで、時にはちょっと厳しい修正をお願いすることがあります。

皆さんからは、編集者って容赦なく直しやボツを出す人に見えているかもしれませんが、僕たちも人間なので、厳しいことを伝えなくてはいけない時は結構怯んだり逡巡したり緊張したりします。

そういう時、僕はこの「最大の報酬は新しい仕事」という言葉を思い返します。

漫画家さんの作品を読んだ人、デザイナーさんのデザインを見た人が、もっと大きな新しい仕事を頼みたくなるのは、このまま進めるのと、厳しくとも直してもらうのと、一体どちらか。

心の中で確かめて、直した方がよくなると思えているなら、たとえ大変な直しであっても直してもらうことをお願いします。

どんなに大変であっても、出来上がるものの価値が上がる方が誰にとってもいいことなはず。結果、新しい仕事が舞い込むなら絶対にその人にとってもいいことなはず。

そう信じて正直に相談すると、大体の場合相手も納得してくれます。


「最大の報酬は新しい仕事」というのは、何もフリーで働いてる方に限った話ではありません。

僕たちにとっても心構えとして必要なことだと思っています。

漫画家さんやデザイナーさんに、次の作品でもまた一緒にやりたいと思ってもらいたい。そう思っていると日々の付き合い方も変わってきます。


映像化の仕事でもそうです。

昔、アニメやドラマCDでよくお世話になっている声優の鈴木達央さんが「アニメは一度現場が解散すると、次に別の作品で一緒になるのは5年後だったりする」と言ってたのですが、確かに映像化作品は一つ一つの規模が大きく準備に時間がかかる分、気がつくと何年も経ってしまいます。

しかも漫画の場合は、必ずいつも作品が映像化されるわけではなく、大ヒットするか、作品を特別気に入っていただくかしないと、次の映像化してもらう機会は巡ってきません。

だから映像化に関わる時は、毎回毎回、少しでも「また一緒に仕事したい」と思ってもらえるように心がけています。

もちろん漫画家さんと一緒に、また凄い漫画を生み出すというのが一番大事な目標ですし、漫画が凄くて映像化の声をかけてもらえるのが理想です。

でもアニメや映画の関係者の皆さんと「いつかまた一緒にやろう」と思い合える関係を築くことが出来ていると、再び仕事でご一緒できる時がとても嬉しいんです。

今週3月26日にもう最終回を迎えてしまうのですが、アニメ『3D彼女 リアルガール』では、アニメ『好きっていいなよ。』でお世話になったプロデューサーIさんや、アニメ『となりの怪物くん』のシナリオを書いてくれていた赤尾でこさんと6年ぶりにご一緒することができて、凄く嬉しかったし、仕事もとてもやりやすかった。

お二人ともまた一緒に仕事できたらいいなと思うし、他の方たちともまたいつか遠くない未来に一緒に仕事がしたい。一緒に作品を作りたい。

あちらも「新しい仕事」を楽しみに思ってくれてたらいいなと思って、また今週も一つ一つ頑張ろうと思います。


今回のエントリーは、週末にアニメ『好きっていいなよ。』の佐藤卓哉監督が素敵なメッセージをくださったので、書きたくなって書いてみました。

佐藤監督の作品へ向き合う誠実さは本当に素晴らしかったです。また佐藤監督とも何かでご一緒できるといいなあ。


ではでは。


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