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My仏滅

先日、とんでもないことをしでかしてしまった。会社の男子トイレで用を足してしまったのだ……。

一から説明します(←これ、久しぶり)。説明するの恥ずかしいけど、説明します。

思えばその日はとんとついていなかったのです。
朝、通勤の為に家から外に出た瞬間、おろしたてのストッキングが鼠径部に食い込んで超痛いんですけど!とイラつく、その直後に駅の階段ですっ転ぶ、その直後にSuicaのチャージ切れで改札に挟まり数人に舌打ちされる、その直後にスカートに薄いシミを発見する、その直後にホームの鏡に映った自分の姿を見て、やはり本日の髪の毛の分け目がどうしても気に入らない!とムシャクシャする。
「ああ、今日はなんかあるで。My仏滅や!」と心の中で、あえて関西弁にて覚悟をしてみることで、何とか気持ちを落ち着かせた。

その後も、仕事のプチミスが多発したが、「なにせ今日はMy仏滅やからな」と平静を装っていたところ、ランチに食べたタイ料理弁当のせいか?鼠径部の圧迫のせいか?突然の腹痛&便意……。

今はやめてくれ。ランチから少し経ったこの時間、フロアの女子トイレは、キャーキャー声でもって歯磨きをするOLたちで溢れ返っているのだ。知り合いだらけのトイレに乗り込み、思い切りブリブリやるほど、私は神経が太くない。

そこで私は、5階下の来客用フロアのトイレに行くことを思い付く。あそこなら来客=知らない人しかいないから、ブリブリやってもいいや、と。来客には「この会社のOL、ブリブリやりやがる」と思われてもいいや、という熱い思いをもって。

でもそこはMy仏滅だから。フロアの入口で、隣の部署の立ち話が大好きなオバハンにつかまり、かつ、エレベーターは各階で停まり、死ぬ一歩手前で来客フロアのトイレへと駆け込んだ。

駆け込んだところでMy仏滅やから。このトイレには、ほぼ誰もいない想定だったのに、そこには来客誘導係の大量の受付ギャルたちが……。個室はまさかの全ふさがり、洗面ゾーンにもスカーフ付の制服をまとった隙のないギャルたちが、目ん玉ひんむいてマスカラつけ直している!

この中でのブリブリも、無理……。が、もう限界だ!ということで、私は隣の男子トイレに飛び込んだ。幸い小のゾーンには誰もいず、個室は一つが塞がっているだけだったので、私は命からがら滑り込む。
「さすが男子トイレや……」そう感謝し、用を済ませ、もう本当に精魂尽き果てたのだが、そこでやっと正気に戻る。ここを出るタイミングどうする?隣の個室はまだ人が入っている。多分、男子。同じタイミングで個室から出ることだけは避けなくては。
忘年会では「上沼審査員」とまで呼ばれてる私なのに、今さら変態容疑でクビとかやだし。

どうしよう……そう思っていたら、その個室から、ブリブリブリーッという、遠慮のカケラもない爆音が。そう、男子トイレには音姫なんてもんはないんですよね。個室に入った時点で、大の方だと気づかれる上に、音さえも披露し放題な男子トイレ、すごす。

ともあれ、彼は今から用を足すのだ!その隙に早く出よう!そう思ってストッキングを整えた瞬間、彼の携帯が鳴ったのである。まさか出ないよね?……
「円城寺です(仮名)」……出た。ウソでしょ!その名字の珍しさから、私は隣でブリブリやった挙げ句に携帯に出た男子(いや、おじさん)が、知り合いの役員であることを知り、一目散にトイレから逃げた。

その数時間後、私は六本木の洒落たイタリアンで美味しいワインを飲んでいた。
人間の数時間前には、何が起きたか分からない、という話です。

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