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どうしても拾えない

トイレットペーパーを新しいロールに取り換えた時、古いロールの芯をすぐさま捨てることが出来ますか?私は床に落としたまま、数週間放置する癖(へき)があります。

一から説明します。女友達と「清潔」に関する意識について意見交換をした。人それぞれ、「どこまでを清潔と考えるか、どこから先は不潔か」という感覚はバラバラで、「えー、ウソでしょ?それ、潔癖過ぎ」とか「えー?ウソでしょ、それ汚なすぎ」等と言い合ったが、こればかりは、お互いの感覚でそう感じるんだから仕方なく、全員一歩も譲らず、うすら笑いで終了。

まず自他共に認める潔癖症のA子は、「とにかく外が敵」とのこと。例えば、彼女の旦那は、毎晩会社から帰ると、玄関先でスーツやYシャツ、つまりはその日外に着て行ったものの全てを脱がされ、風呂場に直行、そこで身を清めてからでないと居間に入れないのだそうだ。それはどんなに夜中であろうとも、泥酔時であろうとも同じで、きちんと風呂に入った後に居間に入るかどうかを見届ける為だけに、A子はどんなに眠くても起きて待っているという。しかも、全部を脱ぐと言っても、靴下だけは脱衣所まで履いて行かねばならないらしい。何故なら、「靴下は、日中、靴とズボンの中に存在している為、外気には触れていないから。そして、汗のついた裸足で玄関→風呂場まで歩かれるよりは、靴下を履いている方が清潔だから」だそうだ。分かるような分からないような理屈だが、疲れて帰って来て、玄関先で全裸に靴下姿で風呂場に直行する旦那に同情する。「冬の玄関は、寒くてキッチぃ……」とか言っているらしい。

そんなA子だが、以前、オープンエアのカフェでお茶をしていた時、彼女の飲んでいたスムージーに大きなハエが飛び込んだ。わ!と驚く私たちをよそに、A子は平然と手でハエを掴むと、プイっと背後に投げ捨て、そのままスムージーを飲み干したのである。「お店の人に言って新しいのと交換してもらおうよ」と言ってみたが、「ハエが入ったのは自然現象であって、お店に責任はない。一瞬で取り除いたんだから、ハエのエキスは入ってない」とか言っていたが、小学生の「3秒ルール(落ちて3秒以内の食べ物は汚くないから食べてよし、というハチャメチャなルール)じゃあるまいし、直前にウン○にたかってたらどうすんだろう。私の感覚では、1秒でハエのエキスは浸透するのだが……。

一方B子は、トイレに行く前にこそ必ず手を洗うべきだと主張する。トイレの後じゃなくて前に?という全員からの突っ込みにも、表情ひとつ変えずに「前にこそよ!」と言い切る。前にこそ……?つまりは、「トイレに入るということは、パンツを下ろすこと、パンツという自分の身に直接触れる下着に、汚い手で触れることはご法度だ」とのこと。「じゃあ、トイレの前と後と、いちいち二度も手を洗うってこと?」と聞くと、「後は、別に洗わないこともある」とのこと。え……という顔をする私たちに、B子は慌ててつけ加えた。「あ、外のトイレでは後でも洗うこともあるよ。家のトイレの話」と。家のトイレであっても、トイレの後に洗うよね?前よりは、確実に後の方が洗うよね?と聞いてみたところ、「だって、用を足した後のお尻なんてさ、ウォシュレットでちゃんと洗った後、トイレットペーパー経由で拭くでしょ?まさかダイレクトに手で拭いてるの?トイレットペーパー経由なんだから、手は汚れないじゃん」とのこと……。

C子に至っては、「大して汚れていない小皿一枚であっても、洗っていない皿がシンクにあると思うと、どうしても眠れない。一旦ベッドに入ったとしても、起き上がってスポンジを握って洗ってから寝る」というくせに、「今日はうすうす雨が降るなって分かってる日でも、洗濯物を干して出かける。だって、洗濯物が溜まるのがイヤなんだもん。だけど、案の定、雨が降って洗濯物が濡れちゃっても、そのまま晴れるまで干し続ける。そしたら、乾くから」とのこと。雨って結構汚いんじゃないの?とか言ってみても、「戦時中の黒い雨のこと言ってるわけ?」と訳の分からない逆ギレ。

おかしいだろ!とお互い突っ込みを入れ合ったものの、一番おかしいのは、私の「トイレットペーパーロール問題」だということに。これ、どうしてか説明がつかないのだけど、昔から、トイレットペーパーを取り換えた時、古い芯をそのままゴミ箱に捨てることが出来ないのです。芯は、まず、ポーンと床に投げつけたいし、ちょっと転がってトイレの隅に追いやられた芯を、トイレに行く度に目の端で捉え、「あ、あるな」「今日もあるな」「捨てないとな」って思いつつ、最低数週間はどうしても拾えないという……。その他、会社のデスクの床の微妙に奥まった位置にも、もう一年くらいになるでしょうか、消しゴムが落ちているのを知っているけど、これも毎日「落ちてるな」って思いながらも拾えず、隣の席の男子の目を盗んで消しゴムを借りています。拾えばいいのに!

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