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クリスマスの東京は、夜の8時

クリスマス三連休初日の朝。このnoteで選んで頂いた「赤い口紅」コンテストの賞品が届いた。野宮真貴さんのCDと、赤い口紅(サプリルージュ)。なんて嬉しい幕開け!(ありがとうございました)

それから、第九を聴きに行ったり、友達と食事をしたりして、少しだけクリスマスっぽいことをした。そして、三連休最後のクリスマスの日。夕方の中途半端な時間に、私は一人、部屋に戻った。駅前で夕飯用のお惣菜は買って来たし、もう今日は外に出ることもないだろうと化粧を落とし、パジャマに着替えた。そして、少しだけベッドでウトウトした。

目が覚めた時、何だかものすごくだるくて、ああ今日はもう、このままご飯を食べないで寝てしまってもいいかも……そう思ったのに、「でもなぁ、どうしよう、あれとあれが足りない。だから、今からドラッグストアに行かなくては……」私は、ようやっと立ち上がった。
今思えば、足りないものと言ったって、寒空の中、眠気を押してまで買いに行く必要のないものばかりだった。それに、今までの経験上、そういう場合、私は必ず「明日にしよう」そう考えてベッドに戻るタイプだ。なのに何故か私は、ノーメイクをマスクで隠し、ひっつめ髪のパジャマ姿をダウンコートで隠し、近所のドラッグストアまでの坂を下った。

そうしたら。ウソでしょう?信じられないことに、ドラッグストアの手前の交差点に、信号待ちをしている、鮮やかな黄色のコートを着た野宮真貴さんが!ほとんどの女性が、分厚いタイツを履いている中、程よく目の詰まった黒色の、それはそれは美しい網タイツの立ち姿は、そこだけ光が射しているみたいだった。
(その頃、「東京は夜の8時」)

「説明のつかないこと」って、こういうことを言うんじゃないだろうか。私は今まで、野宮真貴さんを東京の街でお見かけしたことは一度もない。それが、ついこの前、私の書いた短い小説(もどき)を読んで頂き、賞に選んでもらった。その直後、クリスマスの晩、出掛けなくてよいはずのドラッグストアに行く道で、偶然お見かけするという奇跡。あと1分、ベッドでグズグズしていたら、そして交差点の信号が青だったら、この奇跡は起きていない。

そのほんの2時間位前(東京は夜の6時頃)、私は、私が書いた小説の主人公のように、ジル・サンダーのネイビーのコートを着て、届いたばかりのサプリルージュParis Redを唇に塗って出掛けていた。あぁ、どうして……!あまりに汚い格好の私は、勿論、野宮真貴さんに話しかけることも出来ず、そそくさとドラッグストアに駆け込みました。 
いつでも綺麗な格好をしていないといけないっていうのは、本当だ。

だけど、私にとっては、とても印象的なクリスマスの東京の夜の8時の出来事でした。

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