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盗聴花火大会

どんな時も「平常心」て大事だよね、結局、そこな!それな!という思いに至った、昨日の神宮外苑花火大会の夜。

一から説明します。
昨日の東京は、昼過ぎまでは晴れていたものの、午後からは段々と雲行きが怪しくなり、雨雲レーダーによれば、花火の打ち上げの頃には、神宮球場の上に思い切り大きな雨雲がかかるという予報。私は神宮球場の指定席を買っていたし、花火の前座でAKBだの渡辺美里だのが歌うのも楽しみにしていたけれど、自分もずぶ濡れ、まゆゆもずぶ濡れ、というシチュエーションに萌える、みたいなこともないわけなので、渡辺美里のMy Revolutionさえ聴ければオッケー、という気持ちで、当初予定よりかなり時間を遅らせて、大江戸線の国立競技場駅の出口で友人と待ち合わせをした。

少し早く着いたので、例によって、地下鉄出口のエスカレーター脇で、待ち合わせをしている人々の会話盗聴開始。とにかく昨日は天気が安定しなかったので、多くの人にとり、家の近くから地下鉄に乗った時には晴れていたのに、いざ、国立競技場駅の出口を出てみたら豪雨、という状況だったはず。

そのうち、女の子は浴衣、男の子は甚平という、ヤンキーテイスト満載の若いカップルがエスカレーターを上がってきた。この雨にどんな反応をするかなと見ていると、彼女の方は、予想と寸分違わぬキンキン声で、「えー!雨降ってるし!マジあり得ないし!」と言い放ちながらも、余裕の表情。ところが彼氏の方は、さっと顔色が変わり、地下鉄の壁をガンガン!と叩くと、「おい、これ、中止じゃねえの?この状況でやるか、おら!」と彼女を威嚇。彼女はすぐさまスマホを取り出し、花火大会のホームページを見る。「本日の花火大会は予定通り開催の方向です。なお、小雨の場合は予定通り決行します、だって」と言うが否や、彼氏は「小雨!はっ!これが小雨ですか?むしろ豪雨じゃね?」とキレ出した。ある意味、地下鉄出口で雨宿りをしていた全員が、そのホームページについて同じこと(小雨決行は分かったけど、現在豪雨だし)を思っていたのだけど、予期せぬ事態に対応出来ず、弱い者にキレるその甚平の様子に、「彼女よ、その男、やめといた方がいいよ」と、これまた皆、同じことを考えたに違いなかった。
主催者でもあるまいに、花火大会の日に雨降ったくらいで、テンパるな!

その後も雨はしばらく降り続け、AKBもびしょ濡れで熱唱したものの、渡辺美里先生が登場した途端、雨はピタリと止んだ。お陰様で、老体にむち打ち、神宮球場にたどり着いたアラフィフ、アラフォーは、無事にMy Revolutionも、サマータイム・ブルースも堪能することが出来たのだ。そして、私の隣の席は空いていた。まあこの雨だし、諦めて来ない人もいるよね、席を広く使えてラッキー!などと、隣の席に荷物を置き、すっかり寛いでビールを飲んでいたその時、私は後ろから肩を叩かれた。
「荷物!!」振り向くと、お団子頭、黒のノースリーブに黒のパンツ、真っ赤な口紅に黒縁眼鏡のアラフィフの女の人が私を睨み付けていた。すみません!と慌てて荷物をどかすと、お団子は、黙ってどっさりと座った。まさかのお一人?私が彼女の席に荷物を置いちゃったから機嫌を損ねちゃったかしら?と心配したものの、彼女はMy Revolutionに拳を振り上げ、一発目の花火には、「たまやー!」と絶叫。その後も、「ピンク色ー!ふーん、可愛いーこの花火ぃ!」などと、全ての花火について、大きな声で口に出して感想を述べていた。かと思うと、急にクルッと後ろを向き、花火をバックに満面の笑顔で、セルフィーまで。
常々お一人様行動を好む私にも、花火大会一人観覧、一人感想述べ、という域には達しておらず、驚愕。
すごい平常心だ。
さっきの甚平、雨は止んだじゃないか。メンタル、弱すぎ。
お団子の平常心、見習え!メンタル、強すぎ。

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