女剣士ミズキ改め_タイトル3

女剣士ミズキ改め、

春日部の観光のコンテンツをちりばめたストーリーを何度も書き直してきました。小説としては未熟。挿絵をつけたいけどイラストがうまく描けない。
それでも、この作品が春日部の魅力的なコンテンツとなるよう編集を重ねていきたい。

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    女剣士ミズキ改め、九

 マップでは川をさかのぼって行くと梅若塚のある満願寺に出るのだった。明るい川べりは昨夜とは全く違って見えた。なんだかピクニックみたいでうきうきした。途中で川が分かれるところは地図通り、左の方へ。
 「そうか、こっちの細い川が古隅田川っていうのか……」

 草が生い茂る細い川に添って歩いていたミズキがはたと立ち止まった。
 「川がない……」
 川が途切れているのだ。しかし、そのあたりにお寺など見当たらない。人も見当たらないので道を聞けない。


 (どうしよう……そうだ、ハルさんに聞いてみよう)
 ハルにメールすると、すぐに返事が来た。
 「封筒の中にある番号に電話して」
 (え?封筒って?昨日陽子さんから渡されたのしかないけど、そういえば、電話番号を書いたって言ってた。でもなんでそれをハルさんが……)
 混乱しているところに、電話の着信。とりあえず、出てみると
 「ミズキちゃん?今どこ?おばさん、迎えに行きますから」
 「あの……すみません。どなたですか?私を知ってるんですか?」
 「あはは、ごめんなさい。初めてよね。私、小田文子です。ミズキちゃん、暗きょのところ?目の前に緑道があるでしょ。それを左に行くと東屋があるからそこで待ってて。すぐに行きます」
 ミズキには何が何だかわからなかったが、電話で言われたほうに行くと、休憩できる東屋があった。腰かけて待つとまもなく
 「あー、ミズキちゃん!来てくれてよかったー!」花束を持った文子がにこやかに近づいてきた。
 みずきは立ってぎこちなく会釈して
 「あの、私のこと知ってるんですか?」
 「知ってるよ。ちょくちょく写真見せてもらったもの。小さいころから節目節目にね、豊さんが手紙と写真送ってきたのを美千代さんがね、見せてくれたから」
 「美千代さん?」
 「そう、由香里さんのお母さん」
 「え?ママにお母さんいたんですか?知らなかった。」
 「そうだね、由香里さん、美千代さんと喧嘩別れして家出してからこちらに来ることも連絡も一切なかったから」
 「え?喧嘩……?家出……?こちらって?」
 いつも明るく笑っていた母が家出していたとは。しかもここが母の故郷だったとは、にわかには信じられない思いだった。
 「美千代さんは土地持ちのご主人を持って生活には困らなかったけれど、そのご主人が心臓の病気で、それも遺伝性の。由香里さんの次に生まれた男の子はその病気で五歳の時に亡くなって。まもなくご主人も亡くなって。美千代さん、由香里さんだけは病気に取られたくなかっと思う。厳しいくらいに過保護に育てたんだけど、由香里さん、それが窮屈でよく喧嘩してたらしいの。年頃になると美千代さんに結婚相手まで決められそうになって、大喧嘩して、もう家には戻らない、探さないでほしいって書置きして家出してしまったの」
 「あの……美千代さんはママを探さなかったんですか?」
 「そりゃあ、探したわよ。さんざん捜し歩いて……でも見つからない。もしかしたらどこかで亡くなってやしないかって思ったころにね、豊さんから手紙と生まれたばかりのミズキちゃんの写真が届いたの。由香里さんに内緒で豊さんが連絡をしてくれたの。豊さんがお医者さんで優しい人で子どもも授かって由香里さんが幸せなのを知って、美千代さん、ようやく踏ん切りがついたの。それで跡取りとして美千代さんの甥を養子にとって。それが私の主人」
 「美千代さんは今は?」
 「それがね……ちょうど由香里さんが亡くなってすぐ、脳内出血で亡くなったの。今日はその三回忌。それから私も驚いたんだけど、由香里さん、豊さんの籍に入ってなくて、内縁の妻でいたんだって。それで、三回忌を機会に実家のお墓に入るの。その納骨が今日なのよ。さあ、そろそろ法事が始まるから行きましょ」
 促されて農家の敷地のような細い道をミズキはぼんやりと歩いた。道は急に開けて、お寺の前に出た。
 黒い服を着た人たちの中から陽子が駆け寄ってきて
「ミズキちゃん、よく来られたわね。あ~よかった!」次いで豊も出てきて「さあ、中に入って。もう始まるから」

     女剣士ミズキ改め、十 に続く


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