離れてください。てか自分で離れよう。

息子が何日か前から新しいケータイのカタログを見ている。
私は知らん顔をしていたが、
ページに折り目をつけてテーブルに置いてある。
それでも知らんふりしていた。
息子はもうけっこうイイ年なのだ。あと2年ちょっとで三十路。
不登校や大学入学後の紆余曲折あって昨年大学を卒業したけど
司法浪人中。しかも、何か月も口をきいていない。
口を開くときは何日後かに病院に行くとか
今週末は夕食は要らないとか、
つまり、お金をくれというときだけ。
バイトでもいいからちょこっとでも働いてもらいたい。
ケータイ代くらい自分で出してほしい。

それなのに、また新しいケータイのカタログ見てるのを
見せてるのがいやな感じ。

いやだと思っていてもしょうがないから
新しいケータイを買いたいと言ってきたときが
私の思いを話すチャンスじゃないか……

カタログを黙殺して4日後の今日
「そろそろケータイを変えたいんだけど……」
やっと話しかけてきたか。辛そうに話すね。

なんで?
「今のがへたってきた」
それならさ、いい機会だからちょっとだけでいいから
バイトして自分でケータイ代出してよ。

辛そうなのが余計に辛そうに目を細めて
後ろの棚にもたれかかりながら
「自分だってそうしたいけど、頭と体が……動かないんだ」

野球を見に行ったり、友だちと会食するときはどうなん?

「自分がいかないとみんなが心配するから
体調みながら行けそうなときに約束してる」

悲壮感溢れる様子。具合が悪そう……過換気か?
とにかく私の要求は受け付けられない雰囲気を醸し出す。

私自身、パニック障害だったことがあるから
いつでもだれにでも助けを呼べると思えばいいよ。
そのかわり、誰かが具合悪かったら助けてあげる。
そうやって乗り越えてきたと話す。

それに、友だちが心配するからって……
人のことを思ってあげられる人なら
資格取って何者かにならなくても、誰かのために
何かしてそれでありがとうと言われて
対価を得て、それでほしいものが買えるんだよ。

中3の通知表、きれいなオール1だったよね。
あのときには、想像できなかった場所に立てたよね。
その自分を認めて褒めてやってもいいじゃない。
自信を持っていいじゃない。
大丈夫だよ。

私もこれまで言いたくて言えなかったことを伝えた。

それを話している最中も、少し返事はしたけど
気が遠のいているかのように、棚にもたれかかって
荒い息をして、しゃべりも死に行く人みたいに
のったりと、聞こえずらい。

ほんとに具合が深刻ならどうしようかと思ったけど
ひょっとしたら、私がそばにいるからか……

それで、
あ、3時になっちゃう。銀行間に合わなくなるから
行ってくる。それからまたね。

そう言って離れた。

そして、銀行で用を済ませた後
この街で一番好きな桜のある風景を見に行った。
最勝院というお寺の境内の桜。
ここのご本尊の千手観音像は、本堂全焼の火事にも
スス一つつかなかったという不思議なパワーのある仏像。
桜は見事なのにお花見客がおらず
いつも静かなたたずまいで、とても癒される。

息子にとりついて?私にまとわりつく何者かわからないもの、
離れてください。というか、自分で離れよう。
共依存というものから自分が離れる。
自分だけの世界を充実させる。
それが、今年の私のテーマだ。

あなたがいたから私は自分だけでは見られない景色を見た。
ここまで頑張ってこられたのもあなたがいたから。
それはありがとう。
でも、あなたはあなたでがんばって。

これは夫にも言えること。

私から少し離れて。
もし必要以上にまとわりつくなら
私は自分から離れます。
じゃあね、お達者で。幸せを祈ります。

そう言える自分になるのがテーマ。


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ki-rari

日記

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