Meldのマニュアルを読み、触った (2 of 3)

第2回。

文字だけ読むより、ぜひMeld鳴らしながら読むのがいいよ。(さもなくばYouTube見てたほうがいいので)

あと、おれの価値観の上では、こういう詳細仕様を把握するのってただのオタク・マインドに過ぎず、知っても偉くはなれない。かっこいい音やかっこいい曲を作れる奴が偉い。それを作るのは……あなただ!

↓前回

***

Abletonの細かい話は以下にまとめてます。

↓公式マニュアル (英語)。



4. エンベロープ

A/Bそれぞれに、ADSRのEnvelopeが2つある。

  • Amp Envは音量に -Inf 〜 +0 dBのrangeで繋がっている。

  • Modulation Envはそのままだと何も繋がってない。

tab横の四角い模様のLink buttonを押すと「BのEnvをAと同じにする」ことができる (ただし、Amp/Modの両方ともlinkしてしまう)。


共通param

  • ADSR: い つ も の

  • Envelope Loop Mode

    • NoneがふつうのADSR。

    • Triggerはsustainを無視するので弾き続けても止まる。

    • Loop, AD Loopは弾き続けるとsustainには留まらず動き続ける。

半端なタイミングでnote offすると即座にrelease stageへ移行する。
(その時点のlevelから、指定のRelease TimeをかけてFinal Levelへ遷移する)


Amp Env 専用param

  • ADR Slope: ADRそれぞれのcurveを曲げてクセをつけられる。

「noteなしでも音を鳴らし続ける」みたいな機能は意外にもなかった。多分。


Modulation Env 専用param

  • Initial Level: Envが動き始める前のAttackの最初の高さ。

  • Peak Level: AttackからDecayに切り替わる時の高さ。

  • Final Level: Envが動き終わり、Releaseの最後に到達する高さ。

総じて、目で見たらすぐわかるはず!


Engine BのAmp Env 専用param

  • Delay: 「noteが来てからEnvが実際にtriggerされるまで」を遅延できる。Aよりも遅れて鳴らす、ができる。


5. LFO

A/Bそれぞれに2つのLFOがある。

  • LFO 1: Serumみたいに手書きはできないものの、ひとクセあり。

  • LFO 1 FX: LFO 1にさらに変化を加えることができる。変化を加える前と後の形を、同時に使うことができるのがミソ。。。

  • LFO 2: シンプル。

どちらもMatrix tabでお好みのparamを揺らすのに使う。
つねにbipolarの加算 (元の値に対してプラスにもマイナスにも揺れる) でかかるっぽい。プラスだけがよかったらLFO波形自体を工夫する。


共通param

ほぼ他のsynthにもあるような普通のparamだけ。

LFOの速さは、周波数単位 (Hz) と拍単位 (bar) で切替可能。

Retriggerボタンで「特に打鍵とは関係なく動かし続ける (ゆらぐpadとかはこれがいいよね)」か「打鍵のたびに位相をresetする (ちゃんと動きを決め打ちしたいとき)」かを切替。そしてその位相も指定できる。

ちなみにpolyphonicで弾いているとき、Retriggerは「noteごとに独立した動きをさせたいならon」「弾き方問わず全音きっちり同期した動きをさせたいならoff」にする必要がある。


LFO 1

Engine同様、選んだ波形のTypeに対して2つのMacro knobで波形のshapingができる。

マニュアルでは特に詳述されてない (まあ、目で見りゃわかるもんね) が、とりあえず見てみよう。

【Basic Shape】
基本波形
。Sin -> Tri -> Saw -> Sqrで 波形がmorphingする。

  • Shape: 波形のmorph (地味にEngineのとは経過が異なるのでこだわりを感じる)
    0: Sin
    ↑↓
    33.3: Tri
    ↑↓
    66.7: Saw
    ↑↓
    100: Sqr

  • Fold: SinやTriではWavefold。SawではOscSync。SqrではPW。
    (これらはEngineのと大体一緒だけど、Sinはより単純な上下対称のWavefoldになってる)


【Ramp】
Saw Down -> Tri -> Saw Upでmorphする。
ミソは傾斜のカーブを自由に設定できるところ。同じrate, amountのLFOでもカーブの如何でキャラがガラッと変わるので、これはうれしい。

  • Shape: 波形のmorph

  • Slope: 傾斜のカーブ
    100: logカーブ / Cカーブっぽくなる
    ↑ 上に曲げていく
    50: 直線的
    ↓ 下に曲げていく
    0: expカーブ / Aカーブっぽくなる


【Wander】
ランダム系。Rateの周期ごとにランダムな値に向かって変化/ジャンプする。Macro設定によっては「うろうろしている」ように見えるからWander。

  • Morph: ランダムの縦の値のとり方
    100: ±100%しか出ない
    ↑ 遠くの値に飛びやすくなる
    50: 基本的なランダム
    ↓ 近くの値に飛びやすくなる
    0: 値の種類もかなり粗くなる (25%刻みくらい)

  • Step: ランダムな値への移動の仕方
    100: Sample&Hold (SqrのRandom?みたいな見た目)
    ↑ 変化にかかる時間が短くなっていく
    50: linearな変化 (TriのRandom?みたいな見た目)
    ↓ 波形の角が丸くなっていく  
    0: (SinのRandom?みたいな見た目)

ランダムといえど毎度seedを振り直しているわけではなく、Retrigger On時の動きは常に同じ。逆に、Offにすれば異なる結果を得られる (周期に対するreset timingはズレかねないが)。

見た目上、Morph 0だと振幅が小さく見えるけど、この固定ランダムの最初の数stepがたまたま「ちっちゃい負値」ばっかりなだけで、回してるとちゃんと100%フルスイングする瞬間があることがわかる。


【Alternate】
自由に2値を決められるSquareみたいなもん。L1とL2の値を交互に吐く。

  • L1: 片方の値

  • L2: もう片方の値


【Euclid】
Unipolar Sawの見た目だが、ところどころ歯抜けがあって、歯抜けの規則性がいわゆるEuclidean Rhythmによってリズムづくられている。

まあざっくり、「nステップのループにk個の打点を、いい感じに規則的に散らばせる」ための簡単な数学的ルール……と思ってくれればOK。
「nやkが素数とかの時でもいい感じにしてくれるからポリリズムにも向いてる」まで覚えたらもう大丈夫です。

正確には「散らばせるために考案された」のではなく、「世界の音楽に見られるリズムを調査していくと、この法則性から導出できるものが多いのではないか、と提唱された」んだが、まあこれから我々が実用する上ではいいかなって……

「n steps, k beats (k < n)に対するEuclidean Rhythm: E(k, n)」という数列の得方は、手順を追う分には簡単なんだけど、数式で示すのはダルかったので、詳しいルールはWikipediaを読んでね。

  • Steps: n。常に3〜16の14段階。
    (この値に0.14かけて切り捨てて3足すとstep数がわかる。)

  • Pulses: k。knobとしてはn-1の段階数になる。
    (n=10なら、このknobの0〜100は9段階に等分される。)


【Pulsate】
pulseをランダムに
立てることができる。上下どちらにどんな大きさのpulseがいつ立つのか、すべてランダム。

  • Chance: pulseの発生頻度

  • Length: pulseの幅・持続時間
    0であればimpulseのようなプチッとした動き。値を上げていくと幅のあるSample & Holdっぽい動きになっていく。

「Chanceで密度上げるのとRateで周期単位縮めるのって同じことじゃね?」と一瞬思ったが、Lengthの単位は実時間ではなくRateに対する比っぽいので、「Rateを変えるとChanceとLengthを同時に変える (波形図を横に伸縮させる)」と考えるのが正しい。


LFO 1 FX

さて、↑のようにMacro knobで作ったおもしろLFOを、更に調整〜破壊できるのがこのFX sectionだ。
これも目で見たほうが早すぎるけど一応書くね。

FXをかけた状態でも、かける前の素のLFO1状態も同時にModulation Matrix上で扱えるのが面白い。
Serumなんかは「その気になれば周期も形状もぜんぜん違うLFOを8つまで」使えたわけだが、Meldは「基本1つ、シンプルなサブLFOがもう1つ、B側も使ってようやくもう1つずつ」であるときに、「完全にバラバラなmodulation sourceを多数用意するよりも、周期や基本形状が同じsourceを様々なdestinationに適用したほうが音楽的じゃねえ?」って発想がある気がする。実際SerumもLFO1やMacro1にあらゆるparam紐づけてませんでしたか?という…… ほんとのところは知りませんが

【None: None】


【Offset: Offset】
波形を上下にずらす
ずらしすぎて波形の一部が最大/最小にぶつかったら、そのまま張り付く (clipping)。

100: 元波形の上半分が全部最大に張り付く
↑ 上にずらしていく
50: 効果なし
↓ 下にずらしていく
0: 元波形の下半分が全部最小に張り付く


【Attenuverter: Scale】
上下反転

100: 完全な上下反転
↑上下逆さに振幅が戻っていく
50: 無になる
↑ 振幅が縮んでいく
0: 効果なし


【Gate: Time】
LFOを途中でピタッと止める

100: 効果なし
99.9: LFO 5周期+ちょい くらいで止まるようになる。
↓ 止まるまでの時間が早くなってく
0: 即止まる

これは必ずnote triggerによって開始するので、LFO1側でRetrigger Offにして、「polyでバラバラに弾いたときに常に動きが同期する」ようにしていても、バラバラに止まる。


【Skew Unipolar / Bipolar: Shape】
波形を上下に引っ張るように曲げる

100: logカーブ / Cカーブっぽくなる
↑ 上に曲げていく
50: 効果なし
↓ 下に曲げていく
0: expカーブ / Aカーブっぽくなる

Unipolarは図の上下端 (+100% / -100%)から引っ張るので上下非対称な曲がり方をする。
Bipolorは上半分 / 下半分に分けて、それぞれを引っ張るので、上下対称な曲がり方をする。
これもう口で言うより見たほうが早いから……


【Unipolarizer: Morph】
元のLFO1が-100〜+100%の範囲を振れているとしたら、プラスの範囲だけに収まるよう変換する。
Morphがいくつでも絶対プラスだけになるが、収め方は変わる。

100: 元波形のプラス範囲は採用。マイナス範囲は上下反転
↑↓ morph
50: 元波形のプラス範囲は採用。マイナス範囲は0になる
↑↓ morph
0: 元波形がそのまま上半分にぎゅっと圧縮された形


【Quantizer: Amount】
量子化。いわゆるロービットのようなカクカク階段の形にする。
階段を縦何段にするかを先に決めるので、各段の横幅は異なることがある。

100: 縦3段になる
↑ 縦の段数が減っていく
0: 効果あんまりなし (ちょっとある)


【S&H, Independent S&H: Rate】
これらもカクカク階段の形になる。
Quantizerと違うのは、こちらは階段の横幅を先に決めるので、各段の縦の高さは異なることがある。

100: かなりカクカクになる
↑ 横の更新周期が遅くなっていく
0: 効果あんまりなし (ちょっとある)

ふたつの違いはRate設定にある。
普通のS&Hは、LFO1自体のRateを整数倍したものになり、IndependentはLFO1 Rateと関係なく自由に決められる。
普通のほうだと周期性が元波形と同じように担保されている (1周目、2周目、n周目がつねに同じ波形になる)。


【Clipper: Gain】
クリッパー。

100: パツパツ
↑ 波形の振幅が大きくなる
50: 効果なし
↓ 波形の振幅がしぼんでいく
0: スカスカ

大きくしていくと、clipして最大/最小に張り付く

小さくしていくと、ゼロ (中央の線) に吸い込まれていく
しぼみ方がただのtrimっぽくはなくて、元波形のフルスイングに近い箇所はほぼしぼまず、比較的小さいところがガッツリしぼんでいく。


【Fade In / Out: Ramp】
鳴り始めから、Inは徐々にLFOが効くようにできる。

100: 最遅
↑ Fade Timeが徐々に長く
0: 効果なし

Outは鳴り始めから徐々に効かなくなる効果で、Rampの0〜100は逆に100が最速、0が最遅になる。

Gate同様、これもLFO1 Retriggerに影響を受けず常にバラバラに走る。
Gateと違い、RampはLFO1 RateともBPMとも関係なく実秒数 (最大1分以上)。


【Slew Down / Up / Up & Down: Slope】
Downだと、元波形のうち、値の下がっている区画だけ、よりゆっくり直線的に下がるように書き換える

Slopeはその下がる傾斜・遅さ。
Slopeを大きくするほどゆっくり直線的に下がるようになる。
Slopeよりも元々ゆっくり下がってる区画には影響が出ない。
逆に、急峻に下がる区画はSlopeが小さくても書き換えられやすいということ。

Up, Up & Downはその上下版。


【Trigger Env.: Decay】
元波形のzero cross pointのrise (マイナスからプラスに転じるところ) をtriggerとして、unipolar envelopeが走る。

Decayはそのenvelopeの傾斜・decay time。


【Comparator: Threshold】
なんでも2値化
ある基準より高い値は+100%、低い値は-100%に矯正する。

Thresholdはその基準レベルの設定。

ここだけ文字幅収まってないね


LFO 2

シンプルで、おまけ的な立ち位置。

波形はSine, Tri, Saw Up, Saw Down, Rectangle (Square), Random Sample & Holdから選ぶのみ。

LFO 1みたいな複雑なLFOを2種類使いたければ、「BのLFO1をAに対して使う」こともできる (Cross Modulationという機能名になっている。後述)。


6. マトリックス

ここまでのenvelopeやLFOで、実際どのparamを動かすのかを設定する表。
使いたいmodulator(=source)の列 x 動かしたいparam(=target)の行、にあたるマスをdragすると、数字が表示されて効果をかけることができる。

Matrixが見えている状態でparamを触ると、そのparamが行に追加される。"Wavetable"と同じっす。


レンジと重ねがけ

数字は基本的に-100%〜+100%で設定できる。
ここでいう100%とは、knobの最小から最大のことなので、例えば「LFO2で、Macro knobの端から端までをきれいに揺らしたいな」ってときは、knobを50にしたあとで、±50%振れてくれればいいので、LFO2 -> Macroの数字は+50%に設定する。それ以上にすると、knobの最大最小よりも広い範囲へ動こうとするが動けず (clip)、値が張り付いて揺れが止まる時間帯ができる。

Modulationは基本的に「knob valueに対するoffset」なので、同じ行に複数列からModulationを与えると効果は足し算でかかる。
例外がVolumeで、掛け算でかかる。つまり「note入力してないから無音のはずだが、プラスのModulationを足したら音が鳴った」ということは起きない。


拡大表示

左上の▶ボタンを押すと、この表をもっとデカく表示可能。

ここね

このexpanded viewでは、targetの追加をしなくても、最初っから全てのtargetが揃ってている。そのマス目の多さに目が回ること請け合い。


見慣れない項目名

ピックアップしてみる。

【Detune / Pitch Mod / Pitch Quant】
いずれもpitchを動かすためのtargetなのだが、挙動が微妙に違う。重ねがけ可能。

  • Detuneはfine。最大でも±100 cent = ±1stしかズレない。

  • Pitch Modはcoarse。普通にpitch動かしたかったらまずここ。最大±48st。

  • Pitch Quantも最大±48stだが、滑らかな変化ではなく半音階段になる。[b#]でscaleに絞ることもできる。

【Spread】
これ、第三回で改めて話します。主にVoice Stackをするときに使う。


7. MIDI / MPE

さっきは「LFO→pitch でVibratoだ!」みたく、sourceがmodulatorのときの話だった。
今度は「velocity→cutoff で強く弾いた時ほど音を明るくする!」みたいなsourceがMIDIのときの話。

この辺の項目・種類とかも"Wavetable"と同じっす。

MIDI

  • Vel: Velocity

  • Pitch: note number = keytrack。弾く鍵盤の高さに応じて〜的な話。

  • PB: Pitch Bend Wheel

  • Press: Pressure = After Touch対応鍵盤で扱える、押し込みの強さ

  • Mod W: Mod Wheel = CC#1

  • Rand: noteが来るたびにランダムな値を一つ吐く。

MPE

MIDIの説明を改めてする気もないが、MPEはLive 11から強くサポートされている「MIDI Polyphonic Expression」のことだ。

端的に言えば「noteごとに音色を変えられる」。たとえば今までは「和音を弾きながらpitch bendしたら、和音全体のpitchが一律に変わる」のが当たり前だったが、1音1音異なるpitchの動きがさせられるようにMIDI情報を扱えるようにしよう……的な規格拡張のことだ。

これはAbletonのMIDI clip view上で自由に線を描くことができるし、ハード機材で演奏することもできる。有名なのは↓ ROLI Seaboardとかの鍵盤と感圧タッチパネルの融合みたいな感じで、弾いた指一本一本の押し込みや上下移動によって、指ごとに音色をコントロールできる。

VelとPressはMIDI側と全く同じもの。

  • Note PB: noteごとのpitch bend。Seaboardでいう、横の動き

  • Slide: noteごとのexpression。Seaboardでいう、縦の動き


主だったところは終わったな。

次回はおまけ、アウトプット&その他編でお会いしましょう。

↓次回


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