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マクドナルドと宝くじと、それから相続と。

1. マクドナルド vs 1人2000円のイタリアン

表参道駅付近でインターンをしていた頃、不思議な光景に出会いました。会社付近にあるマクドナルドが、ランチの時間帯、毎日サラリーマンが行列をなしていたのです。

その横にあった、1人2000円のイタリアンはすぐに入れるのに。

「渋谷にはIT系の会社が多いからなあ、きっと忙しくて優秀な人が多いんだろうなあ」

悲しいほど優秀と真逆で、お金もなかった私は、当時、長い行列に並びながらそんなことを思ってました。

そして、私のそのなんとなくの感想は、半分は合っていました。

みんな、並んでる最中も、仕事の返信をしたり、中にはパソコンを持ち込んで仕事をする人などがいたりと、休憩 してる人はごく一部でした。

当時、お金があまりなく(今もですが)、照り焼きチキンにするか、100円マックにするか真剣に悩んでいた私を尻目に、彼ら(彼女ら)は、黙々と食べ、仕事をし、食べ終わるとすぐまた会社へ帰っていく。

時間が取られてしまうイタリアンに入らないのも納得です。

...ですが、毎日のその行列の理由は、それだけではなかったと、今ならわかります。つまり、入りたくても入れない人、もまたかなりの数になるのです。

その理由は、お金。

子育てや住宅ローンだったり、はたまた介護だったりと理由は様々ですが、皆限られたお金でやりくりしているのです。

学生の私は全く知らなかったのですが、年収が1000万円であっても、結婚していて子供がいれば、サラリーマンのお小遣いはだいたい月に5万円で、一日の外食費用は900円にも満たない(!)そうです。

年収1000万円クラスであれば、当然のことながら役職がついて会食だったり、部下だってたくさんいると思うのですが、どうやってやりくりしているのでしょうか。

2. 数年前の記事をたまたま読んで

...さて、話は変わりますが、最近たまたま下記の記事を読みました。

マネーフォワード取締役執行役員の瀧氏へのインタビュー。
テーマは、"宝くじで一億円以上当たった人の末路"でした。

この記事が書かれたのは3年半前と、かなり昔です。

その一部を抜粋させて紹介させていただきます。

瀧 :人間の浪費というものは一回始まるとなかなか止まらないものなんですね。普段、2000円の寿司を食べている人が、宝くじが当たって「自分へのご褒美」などといって1万円の寿司を食べたとしましょう。ところが美味しい物を食べた時に出る脳内麻薬は、寿司の金額が5倍になっても比例して5倍になることはありません。「あれ、おかしいな。じゃ3万円はどうだろう」とすぐエスカレートしてしまいます。クルマ、旅行、宝飾品…。浪費はどんどん膨れ上がり、周囲からすぐに「何かあったな」と勘繰られるようになるはずです。

聞き手:「そんなことには絶対にならない。自分は鉄の意思で自制心を失わない」と思っている読者もたくさんいると思いますが。

瀧 :そう思っている人ほど、危ない。企業側も「急に資産を築いた人」の財布を開くためのマーケティングは研究し尽くしています。ただでさえ人は、「日頃、不慣れな金額の取引」は、金銭感覚が麻痺して失敗しやすいものなんです。普段800円のランチを食べている人が、別の店に行ってランチが1150円だったらどうします。

聞き手:慎重にメニューを吟味します。

(中略)

瀧 :超高級宝飾店で買い物をすれば、豪華なパンフレットやインビテーションが届くようになります。行けばVIPルームに通される。この“あなただけ感”、“エクスクルーシブ感”に堪えられる人は多くはないですし、更にはそのような生活を諦めることはより難しくなります。「急な富裕化」というのはそのくらい危険なことで、例えばNBAを引退した人の60%は5年以内に破産しているというデータもあります。

聞き手:宝くじが当たった結果、固定費が上がって「かえって貧困化」しかねない、というわけですか。

どうして、この記事が目に止まったかというと、相続と宝くじの構造が似ていると思ったから。

3. 宝くじと相続財産の類似点

では何が似ているのか。

大きく分けて2つあります。

➀努力をせずとももらえる
➁資産があるうちに生まれるか否かは100%運

一言でまとめる、要はであるということです。

宝くじはいざずもがな、ですよね。売り場でやることは、番号を決める、ただそれだけです。
相続税も程度の差こそあれ、親がいくら持っているのか、親戚がいくら持っているのか、そればっかりは、やっぱり100%運です。

そこに気づいたとき、私は強烈な恐怖に囚われたのでした。(ここで言う、恐怖の正体は、本文最後の方でお話しします)

4.  "新しいもの、面白いものは、若ければ若いほど、創造されやすい"

私が相続の情報を続ける中で一貫してあったもの、それは、

  "お金さえあれば、人々は幸せになれる、なりたい自分になれる"

という考えでした。

大学の友達で、
「お金があれば〇〇するのに」
が口癖の人がかなり多かった。
「いや、別にお金なくてもできることも多いよ??」
と思う反面、反論できない自分がいました。私も海外に行ったり、プログラミングスクールに通うために、バカみたいにバイトした時期があったので。

大学の家族法の授業で、相続について触れました。

興味を持ってちょっと相続を勉強してみただけでも、すぐに下記のようなことがわかりました。

・貰い手のない相続財産は最終的に国のものになる
・孫に相続財産を非課税で贈与できる

そして、その情報をきちんと持っている人は、あまりにも少ない、ということも。

よく、「高齢者はカネを貯金しすぎだ」という声を聞きます。

私は、"自分のお金はどう使おうとその人の自由"、という考えがあり、その考えには全面的には賛成してはいません。

ですが、東京の大学に入り、全国から集まってきた、思わず嫉妬してしまうような才能、能力の高さの同世代を目の当たりにし、そしてそんなすごい可能性がある同世代の人たちが、皆お金で苦労していることを目の当たりにし、"若者たちにお金を回して欲しい"という思いを持つようになりました。

"新しいもの、面白いものは、若ければ若いほど、創造されやすい"
と、私は思います。

そして、今はお金がちょっとだけあれば、できることが格段に増えました。
本来だったら相続税として国へ行ってしまう、わずかなお金を循環させるだけで、優秀な同世代の人がどんどん面白いことができるのではないか。

このnoteを始めた理由の一つとして、そんな考えがありました。

5. そういえば、"いざお金を得た後"については、そこまで深く考えてはいなかった

ですが、先述したように、宝くじのインタビューを読んで、私は一抹の不安を覚えました。

なぜなら、"お金をもらえた後"のことについて、やんわりとしか考えていなかったからです。

以前の私の考えは、

   相続税として国に納められるはずだった税金をもらう
    →挑戦してみたかったことができてハッピーになる

でした。

しかし、当たり前ですが、そんな簡単な話ではありません。
私たちには内に秘めたたくさんの欲望があります。

つまり、

   相続税として国に納められるはずだった税金をもらう
        →固定費を上げる活動に使われる

そう、贅沢をする選択をとる人も現れます。

大学生はとにかくお金がありません。

よく、最近の若い人は欲がない、〇〇離れが盛んだと言われますが、そんなことはありません。ただお金がないのです。

ブランドものの服が欲しい、バッグが欲しい、旅行に行きたい、美味しいものが食べたい、、、

挙げればきりがありませんが、大学生が固定費をあげるポイントは、たくさんあります。

ここまで大学生の話ばかりでしたが、人間の欲望は年齢が上がっても根本的に変わることはありません。

あの、マクドナルドを流し込むように食べていたイケイケサラリーマンの彼らもまた同様です。

・行けるなら行かせたい子供の留学費用
・子供を少しでも良い高校、大学へ入れるための教育費
・欲しかったブランドもののバッグ・服
・我慢していたタクシー帰宅
・会社の同僚・ママ友に自慢できる海外旅行
・通いたかった美容院・スポーツジム
・見栄を張った飲み会での奢り
・自己投資の英会話・資格習得
・手狭になったマンションからの脱出

冒頭にあげたマクドナルド vs 2000円イタリアンも、これらあげたことのほんの1つだったのです。

基本的に、一律で貧乏である学生と比べ、40代も過ぎるとそれぞれの年収の違いもくっきり現れ始め、それに加えてお金がかかるイベントが集中するため、こちらの方がたちが悪いかもしれません。

そう、みんないろいろなことを諦めて、折り合いをつけて生きているのです。

6. 諸悪の根源

と、ここで大事な補足をします。私は

・相続で得た財産を投資ではなく消費してしまうこと
・固定費をあげること

それ自体が悪いと思っているわけではありません。

それは個人の自由です。理想は、

   相続税として国に納められるはずだった税金をもらう
    →挑戦してみたかったことができてハッピーになる

ですが、私が口出しすべきことではありません。消費に回すこともまた、選択肢の一つです。

ここで言っている諸悪の根源。それは、

"相続財産という、努力せずとも得られてしまう財産で、日々の生活の固定費を上げてしまう事

です。

相続によって一時的に財産が手に入ったとしても、それは自分の能力によって得た対価ではないのです。宝くじと同じ、なのです。

それを自覚することができないと、いざ相続財産を引き継いだ時、それまで我慢してきた山ほどの欲望が解放されてしまうのではないかと思うのです。

私も含め、人間は怠惰です。

ある日、身内が死んで、数百、数千万単位のお金が入ってきたとイメージしてみてください。

あなたはそのお金をどう使いますか??

有効に使える自信はありますか??

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