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【錬金術】"MercuryTriplex"とは何か

≠Queenのボーカル

 マーキュリーです。こんばんは。
 今日はHNと、twitterIDの@MercuryTriplexの元ネタは何ぞや、という話をします。話のネタが無いので。

 マーキュリーといえば何といってもフレディ・マーキュリー、ロックバンドQUEENのボーカルです。他には水星だったり(最新のガンダムは「witch of mercury」ですね)、水兵リーベな方々には水銀が真っ先に浮かぶかもしれません。
 しかしこれら全て、Mercuryという単語のそもそもの元ネタは、ローマ神話のメルクリウスです。そのメルクリウス(=マーキュリー)と習合して同一視されるギリシャ神話のヘルメスは、旅人や盗賊、商業の神として知られています。ケリュケイオンという杖と、羽の生えたサンダルでお馴染みです。

 一方のTriplexは英語で「三倍」「三部構成」みたいな意味です。トリプルですね。つまりMercuryTriplexは「3倍のメルクリウス(=ヘルメス)」を意味します。
 ヘルメスが3倍になると、単に分身の術を使うとかではなく、全く特殊な別の存在になります。すなわち「3倍も偉大なヘルメス」、ヘルメス・トリスメギストス。史上最も有名な錬金術師です。

ヘルメス・トリスメギストスの啓示

 ヘルメス・トリスメギストスは単なる錬金術師ではなく、15~16世紀に広く信奉を集めた異邦の神官でした。無論のこと実在が証明されている類のものではなく、基本的には伝説上の人物とされています。
 トリスメギストスは色々なごちゃ混ぜ、主にギリシャのヘルメス神とエジプトのトート神が融合した存在で、様々な文書や伝説が積み重なるうちに「古代エジプトにそういう奴がいた」という話になりました。出エジプトの指導者であるモーゼの同時代人とされる彼は、エジプトを治める王であり、預言を伝える神官であり、全宇宙を観想する哲学者でした。哲人皇帝+1という感じです。3つのジョブを兼任していたから「3倍」です(諸説あり)。
 トリスメギストスの伝説は多岐に渡りますが、その錬金術的思想の中心には「大宇宙と小宇宙の照応」があります。全宇宙とその一部は相関しているというか、後者は前者の写し鏡としての側面を持つということです。
 こういう思想は別に珍しいものでもなんでもなくて、「この広大な宇宙の一惑星にたまたま何の必然性もなく生まれて死んでいくヒトである自分」を相克するためにあるのが宗教であり哲学なわけなので、まずは自分という存在に何かしらの必然性を持たせるとこからスタートですわね。だから自分の中にも宇宙に通じる何かがある。小宇宙を弄ればピタゴラスイッチ的に桶屋が儲かって全宇宙が動く。梵我一如。

異邦の神官から胡乱な術師へ

 トリスメギストスは「キリスト以前に救世主の到来を預言した」として中世末期からルネサンス期にかけて広くヨーロッパで注目されました。当時は宗教改革直前、カトリックはぐじゅぐじゅのほにゃほにゃですから、異教の教えを無理なく取り入れつつ宗教全体の調和を取るために、トリスメギストスは格好の存在だったのです。トマス・アクィナスがアリストテレス哲学を取り入れたりしてましたが、基本的にキリスト教は(少なくとも当時は)信者以外の言うことは悪魔の妄言という体でできているので、「いやでもほら、このエジプト人は違うから! 名誉信者だから!」という言い訳をできるのは都合がよかったんですね。
 しかしここで大事なのは「キリスト以前」というところで、実際にモーゼの時代(旧約時代)にキリスト誕生がわかっていたなら預言者としてマジだなってことになるんですが、科学の発展につれて、トリスメギストスに関する文書が実は紀元後(キリスト誕生以後)に作られたことがわかってしまいました。
 その時点でもうトリスメギストス=インチキとなり、彼を使った宗教改革は終わってしまいまして、そこから今に至るまでトリスメギストスはオカルトの文脈でのみ細々と生き延びています。巷でいわゆるヘルメス的な何かというのは、真っ当に考えるのであれば新プラトン主義に属する思想の一例でしかありません。
 ちなみにここまでうろ覚えとたまにwikipediaで確認してるだけで書いてます。専門家じゃないから間違ってても知らないよ。一応内容はほぼイエイツ『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』に依ってて、これはかなり面白かったです。翻訳のせいなのか滅茶苦茶読み進めるの大変だったけど。あとクソ高いけど。でもオススメ。

3倍のMercury

 で、僕の話ですが、前に使っていたHNがそろそろしんどくなってきて、ちょうど映画『ボヘミアン・ラプソディ』が跳ねたあたりだったこともありMercuryになりました。錬金術師とロックシンガーを重ねることによってパワーを3倍にしようという目論見です。平たく言うと機体を赤く塗るようなものですね。
 なので街で見かけたら気軽にマーキュリーさんって呼んでください。いつも真っ赤なストローハットとアザラシの革のチョッキとホットパンツと30cmの高下駄で過ごしてますので、すぐにわかると思います。

 

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