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種族解説:人間(およびその諸国と特記すべき地域)

🔰序章&項目一覧

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人間は、ハルクウーベン全土で栄える種族だ。各地に強大な文明諸国を築き、種族として繁栄の絶頂にあるといってよい。短命であるがその気質は溌剌(はつらつ)としており、欲が強くて深く、世代を越えての技術や知識の伝承にも優れている。

生まれついた地域により、白人種、黄色人種、黒人種がいるが、これらの混血はかなり進んでいる。肌や髪、瞳の色や顔立ちも異なるほか、背丈や体格も多種多様だ。この世界の人間は我々とよく似ているが、現実の世界、さらに言えば現代社会と比べた時、その道徳観や倫理観は我々のそれとは大きくかけ離れているし、それを求めるべきでもない。

人間の文化習俗は、それぞれの国や地域、あるいは階層によって多彩だ。服飾や建築、生活習慣、食事や言語、文字に至るまで、まるで同じ種族とは思えないほどの多様性を持っている。

また、善悪の尺度や宗教観、道徳や気質などにも大きな隔たりがあり、しばしばこれらの相違点が、血で血を洗う同族紛争の発端となるゆえ、人間たちの血塗られた歴史書は、他種族との争いと同じかそれ以上に、同族間の争いによって埋められているのだ。

例え同じ人間であっても、その気質や性格、暮らしぶりや文化、技術の進行度などは、その人間が暮らす地域と、本人の社会階層によって大きく異なる。それゆえに人間は、肌や髪、瞳の色や顔かたちなどよりも、政治的な境界で自分たちを区別しがちだ。大きく言えば国、次に地方や共同体、果てには通りを挟んだ区画をもってさえ、自分たちと他者を区別したがる。

こうした意識は人間社会の隅々に行き渡っており、それゆえに人間は非常に好戦的で縄張り意識が強く、同族間ですら紛争や戦争が絶えない。人間は、自分の生まれた共同体こそが自分の帰属する社会とみなし、境界を越えた先の土地に住む者や自分と異なる社会階層にある者を(たとえそれが同じ人間であっても)「余所者」「外国人」とみなすからだ。一方、未開地域の人間を「野人」と呼んで等しく蔑み、しばしばオークやゴブリンと同一視するのは、人間の文明諸国で共通する認識である。

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ここからは、オールドスクール・ファンタジー世界「ハルクウーベン」に割拠する人間の諸国と、それらを取り巻く地域について大まかに紹介しよう。

これらが、君の想像力と創造力を刺激することを願って。

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*神聖アルフモート王国*
団結は不壊の盾なり

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城塞都市シュタッツブルグを本拠とするアレクサンダー・シュワルツハウアーを国王にいただく連合国家。その領土は国王直轄領以外に無数の国に分かれており、各地の諸侯が大きな自治権を持つ。過去、国王の座を巡り何度かの内戦を経験したが、現在は三代に渡ってシュワルツハウアー家の治世が続いており、今の所政情は安定しているようだ。

一方王国領内は未だ平穏とは言い難く、山林に覆われた国土は、今なおオークやゴブリン、あるいはさらにおぞましい者たちの跳梁を許す。とはいえ主要な街道ぞいや大河に限って言えば、王国諸軍および諸侯の面子、ないしはアレクサンダー王の権威が概ね保たれていると言っていいだろう。国境を接する大ズンゲールサン帝国と何度も干戈(かんか)を交えてきたが、増大する北方の脅威に対して連帯、現在は同盟関係にある。

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白ケ原

かつてはまったく別の名で呼ばれた北方の島。長い年月に渡り、雪解けの春と収穫期の秋は、アルフモート王国の海沿いに暮らす民にとって恐怖の季節であり続けた。しらなみ海峡を超えた先に浮かぶ白ヶ原から、血に飢えた野人たちの船団が略奪にやって来たからだ。
近年、襲撃の頻度は目に見えて減じつつあり、諸侯は軍の努力が功を奏したと喧伝している。しかし実際のところ、この変化は、沿岸都市と北方部族の関係が変わりつつあることによるものだ。沿岸部を中心に、かの地からの交易商や傭兵を見かけることも出てきたが、両者の文化の溝は全くと言っていいほど埋まっておらず、流血沙汰を含む様々な問題が起こっている。

出でずの森

世界が始まって最初に生まれたとされる森。樫やブナの巨木がひしめき合っており、昼なお暗い上古の樹海である。ここは、王国の人々にとって禁忌の場所だ。西部は閉鎖的なエルフの隠れ里が点在し、侵入者は必中の矢によって冷たい歓迎を受けることになる。東部は邪悪なる諸種族の温床であり、不穏な場所と化して久しい。

霧の平原

出でずの森を吹き抜けてくる湿った西風と、南のカタンコタン砂漠からの熱風が吹き溜まり、一年中晴れぬ霧に包まれた平原。人間に仇なす諸種族、および近隣諸国を追われた性悪な手合いが無数の小国を打ち立てては、小競り合いを繰り返しているようだ。

白鷺山脈

太陽の光を受けて輝く山並みが、翼を広げた鷺の群れを思わせることからこの名がつけられた。白鷺山脈に点在するドワーフ砦町は大方滅んだものの、いくつかは今なお健在であり、旧ドワーフ帝国の栄華を今に伝えている。
白鷺山脈を北に越えれば北方人の土地であるサレクロフトへ、南へ越えればアルフモート王国へと至るが、峻厳なる山並を越えようとする者あらば、それが何者であれ、話の通じぬドワーフたちによって行く手を阻まれよう。

内ヶ海

北西岸に神聖アルフモート王国、北岸に大ズンゲールサン帝国、東岸にケイポン国、南岸にシャムシール首長国がそれぞれ国境を接する、大陸における水運貿易の大拠点。過去、内ヶ海の領有を巡って何度も紛争が起こってきたが、現在は「誰のものにもあらず」を主旨とする〈内ヶ海の和平に関する四国協定〉が結ばれ、沿岸を各国が厳重に守っている。
例外が南西部で、ここは邪悪な海賊どもの巣窟として悪名高い。霧の平原から流れこむ濃霧が一帯へ張り出しており、岩がちな地形も手伝って、内ヶ海の南西部は航海の難しい一帯だ。それゆえに、船の隠し場所として、また賊の隠れ家として、うってつけなのである。

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