なぜ世界は存在しないのか

作者: マルクス・ガブリエル

出版社: 講談社選書メチエ

発売日:  2018/01/13日

20世紀後半に一世を風靡した「ポストモダン」と呼ばれる潮流以降、思想界には多くの人の注目を浴びるような動きは長らく不在だったと言わざるをえません。
そんな中、21世紀の哲学として俄然注目されているのが、新たな実在論の潮流です。中でもカンタン・メイヤスーは「思弁的実在論」を主張し、思想界をリードする存在になっています。それは「人間が不在であっても実在する世界」という問いを投げかけ、多くの議論を巻き起こしましたが、その背景にはグローバル化が進んで国家や個人の意味が失われつつある一方で、人工知能の劇的な発展を受けて「人間」の意味そのものが問われつつある状況があるでしょう。
こうした新たな問いを多くの人に知らしめたのが、本書にほかなりません。「新しい実在論」を説く著者ガブリエルは1980年生まれ。2009年に史上最年少でボン大学教授に就任したことも話題になりましたが、2013年に発表された本書がベストセラーになったことで、一躍、世界的スターになりました。
本書のタイトルにもなっている「なぜ世界は存在しないのか」という挑発的な問いを前にしたとき、何を思うでしょうか。世界が存在するのは当たり前? でも、そのとき言われる「世界」とは何を指しているのでしょう? 「構築主義」を標的に据えて展開される本書は、日常的な出来事、テレビ番組や映画の話など、豊富な具体例をまじえながら、一般の人に向けて書かれたものです。先行きが不安な現在だからこそ、少し足を止めて「世界」について考えてみることには、とても大きな意味があることでしょう。

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