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7.TOEIC試験について

今回はTOEICについて解説します。私の英語学習における考え方を改めてまとめましたので、ぜひ読んで頂きたいと思います。

本記事のコンテンツは、以下の通りです。

1.TOEIC試験についての考え方

2.使用するテキスト、トレーニングのコツ、注意事項

3.まとめ

【1.TOEIC試験についての考え方】

TOEICは英語力の指標として何かと話題に上ることが多く、肯定的や否定的な意見もそれぞれ多く存在します。これまでの私のnote記事をご覧になった方はおわかりかと思いますが、私はTOEICのスコアアップを英語学習の目的にしていません。あくまで「聞く」「話す」「読む」「書く」の基礎能力を伸ばしていくことに重点を置いています。目的が「英語を日常生活や仕事で(ある程度)使えるようになる」ことだからです。

しかし、人によってはTOEICのスコアが必要となることも理解しています。特に日系企業でTOEICスコアを参考にするところは多く、昇進などの際にある一定以上の点数を要求されるケースが多々見られます。実際に私も、会社での昇進と海外部門への異動には930というスコアが多大な威力を発揮しました。そこで、TOEICに対する世間の評価と私自身の意見を交え、以下(1)~(7)に分析してみました。

(1)一定レベルまでの英語力測定のための尺度としては優秀

TOEICは、ある一定のレベルまでの英語力を測定するための尺度としては信頼性があり、利用しやすい試験といえます。これはTOEICが試験として良く設計されていて、「傾向と対策」的な対策ではスコアがほとんど上がらないからです。対策本をこなしたらスコアが上がった人もいるかと思いますが、それは単に試験の形式に慣れただけで、その後スコアが上がっていくことは稀です。

TOEICは、大量の比較的平易な英語を高速処理するという問題形式ですので、レベルの高い英語を求める人には物足りませんが、英語の使用能力を測るには有効な形式です。つまり「英語力そのものを上げずにTOEICスコアを上げる方法はない」といえます。巷にあふれる「短期でTOEIC大幅スコアアップ」等の謳い文句は、まやかしです。それは試験形式に慣れただけです。

上記の理由から、私の英語学習法では英語レベル表現のためTOEICスコアを利用しています。これは、英語力を定量的に表現するためで、TOEICを英語学習の目的にする意図は全くありません

(2)「話す」「書く」能力を測定できない

TOEICはリスニングとリーディングから成る試験ですので、「話す」「書く」能力を直接測定することができません。ただ実際には、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4能力には相関があるので、どれか1つや2つが突出して他はダメ、ということはあまり起こりません。しかし直接測定できないのは事実ですし、独学でTOEICの勉強だけをしていると、「読めて聞けるけど、書けない、話せない」という偏った英語力になってしまう人もいます。これは独学のせいではなく、TOEIC試験対策のみを行っているからです。

実は、TOEICが測定しているのは「聞く」「読む」能力ではなく、英語の「基底能力」と言われています。基底能力とは、英語を使いこなすための土台となる力のことです。これは「基礎力・基礎知識」とは異なる意味です。「基底能力」とは単なる知識ではなく、英語を瞬時に処理することができる能力のことです。「基底能力」は、英語を聴いたときや読んだときに、英語の語順・スピードのまま理解する「速読力」「速聴力」に直接反映されます。この「基底能力」を強化するのが、私が英語学習の柱に据えている「音読」です。

ただし「基底能力」を高めても、「話す(スピーキング)」だけは能力のばらつきが生じることがあります。自己学習によって英語の基底能力向上に成功する人は例外なく、大量のインプットを行います。その過程でアウトプットが不足する場合があり、スピーキングがうまく上達しない、ということは起こり得ます。そのため、以前の記事で紹介した「英作文トレーニング」でスピーキングの強化を行います。

(3)ある一定以上の高い英語力を測定できない

TOEICは、ある地点から先の英語力を正確に測定することができません。具体的には、900点台の前半~中盤を超えると、それ以上はスコアと英語力に相関がなくなります。これはTOEICが大量の英文を短時間で処理することにより英語の基底能力を測定する試験であることと、満点が990点と決まっているからです。

900点台前半、またはそれ以降のスコアを取る人にとっては、このテストの英語は大量でも短時間でもなくて、だいたい時間が余ります。そうなると、あとは集中力やモチベーション、細かい文法知識、という英語力とはちょっとズレた部分の勝負になってきます。

ネイティブスピーカーにTOEICの試験を受けてもらったらどうなるか、という調査を色々検索してみると、920~満点まで幅広く分布しています。しかし、例えば920点のネイティブより930点の私が少し上かというと全くそんなことはなく、むしろ足元にも及ばないというのが正しいところでしょう。920点のネイティブは、この試験に対するモチベーションが低く、多くのケアレスミスを犯した、ということが容易に想像できます。

(4)スコアが統計的に算出され、細かい刻みで参照できる

TOEICはスコアが5点刻みで990点満点のため、その時点での英語力が把握しやすいといえます。その他多くの英語検定は合否形式ですので、英語力の詳細な判定が困難です。

さらに、TOEICを作成している機関(ETS)が、統計・数学的技術を使用し、受験する回によるスコア偏りがないよう配慮しています。

多くの(英語に限らず)合否形式の試験では、年々試験形式・難易度が変化し、数年経てば同じ「○○級」であっても求められる能力が全く異なる、という状況です。しかも、一度合格してしまえば、その後能力が落ちたとしてもその資格は一生有効です(英検など)。

TOEICも年々難易度が上がっているという意見も目にしますが、これは試験の改定により、より実践的に必要な能力を測定できるよう進化しているためで、英語の難易度自体が上がっているわけではありません。

(5)日系企業や大学が(現時点で)英語力測定に使用している割合が最も高い

現時点では、ほぼ誰もがスコアからその人の英語力を推定でき(900点超えは神格化されすぎていますが)、共通の物差しとして最もよく使用されている試験です。転職や昇進、入試などにも幅広く利用されており、人生のある時点においてTOEICのスコアが必要となった経験のある方も多いと思います。

(6)受験機会が多い

年10回、全国80都市で実施されており、手続きも簡素で、受験しやすいテストです。年に一度しか受験できない大学入試や国家試験と違い、気軽に受けられる試験といえます。定期的に、自分のペースで受験することができます。

(7)その他の試験について

・TOEIC Speaking & Writing Tests

「話す」「書く」能力を測定するためのTOEIC Speaking & Writing Testsもありますが、日本の企業・学校では現時点でスコアを活用する機会がほぼ無く、標準指標としての立ち位置も確立していないため、ここでの考察は割愛します。

今後知名度が上がっていき、ある点数を獲得した場合に「そのスコアがどれぐらい凄いのか」を大半の人がイメージできるようになれば、英語力指標としての地位が確立されると思います。

・TOEFL

「聞く」「話す」「読む」「書く」の4セクションから構成される、世界的に広く実施されているテストです。スコアは主に米国の大学・大学院への入試に使用されます。現在はインターネットベースのiBTという形式で、事前にテストセンターを予約し、(ある程度)好きな日時に受験することができます。スコアは各セクション30点満点、合計120点満点です。

試験の難易度は高く、TOEICより多くの語彙力、長文読解力、長文リスニング力が求められます。また、ライティング・スピーキングのセクションがあるため、文章の書き方や話し方など、TOEFL試験に適切なアウトプットのトレーニングも求められます。

しかし、ライティング・スピーキングセクションの添削があるため、受験料が225ドルと高額で、気軽に何度も受けるのは難しい試験です。また、ライティング・スピーキングについては試験対策で添削サービス等を利用すると、さらに高くつくことになります。

一般の学習者が自身の英語力のベンチマークとして受けるにはハードルが高いですが、海外の大学・大学院へ留学するならば避けては通れないテストです。

・英検

日本英語検定協会が提供している試験です。中学や高校時代に受けた経験のある方も多いのではないでしょうか。5級~1級まで、全7段階(準1級・準2級含む)あります。

特に1級の単語集を見ていただくとわかるのですが、単語、例文ともに「一体いつ使うんだ?」と首をかしげるようなものが多いです。日本の大学受験がそのままレベルアップしたような、特異な発展を遂げた試験、といった感じがします。また、スコア制ではなく合格・不合格の2択のため細かい英語力が測定しにくく、学習のモチベーションアップに使用するのもあまり適切ではありません。さらに前述の通り、時間が経っても試験形式が変化しても取得した級はそのままですので、企業等が英語力測定に使いにくい、といった側面もあります。

とは言え、日本においては歴史もあり、1級・準1級を取れば英語力のアピールにはなると思います。またインタビューもあるため、スピーキング力の証明にもなります。もちろん海外の会社や大学へは、ほぼ使用できないスコアですが。

こうして書いていると、TOEICが有用なのは「何点がどれぐらいすごいのか」を多くの日本人が共通認識として持っていることだと思います。

【2.使用するテキスト、トレーニングのコツ、注意事項】

TOEIC対策ですが、まずこれまでに紹介してきた基礎力向上トレーニングを十分に行うことが前提です。それだけで、いずれは900点、少なくとも800点台には必ず到達します。

私の場合、900点を取るための日程が迫っていたため、800点台に到達した後、3ヶ月間のみTOEIC対策を行いました。

まず語彙力ですが、「5.単語トレーニングで語彙力増強」で紹介した書籍では900点レベルに少しだけ届かないので、追加で以下の単語集を使用しました。これに限らず、「スコア900」と記載のある単語集を1冊選び、使用することをお勧めします。

TOEIC TEST完全攻略3000語—目標スコア600-900

試験前には、ETSが発行している公式問題集を使用してください。問題を解いて答え合わせをするだけでなく、リスニングセクションを音読素材として利用し、口に落ち着くまで音読・シャドーイングしてください。

また、公式問題集にはTOEICに出やすい単語・熟語がたくさん出てきます。それらのうち、わからないものは自分でノートに書き出し、単語トレーニングと同じく、記憶に定着させるようにしてください。

TOEICテスト公式問題集 新形式問題対応編

公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 1

公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 2

公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 3

【3.まとめ】

本記事のまとめです。

・この英語学習法ではTOEICのスコアアップを目的としていない。あくまで基礎力を測定するベンチマークとしての位置づけ

・TOEICは、一定レベルまでの英語力測定のための尺度としては優秀。しかし、「話す」「書く」能力は測定できない

・TOEICはある一定以上の高い英語力を測定できない

・受験機会が多いため、学習のベンチマークとして使用しやすい

・TOEICに対しては「何点がどれぐらいすごいのか」を皆がほぼ共通認識として持っている

・TOEIC対策は、これまでに紹介してきた基礎力向上トレーニングを十分に行うことを前提とし、900点レベルの単語集と、ETS発行の公式問題集を使用する

・公式問題集は、問題を解いて答え合わせをするだけでなく、リスニングセクションを音読素材として利用し、口に落ち着くまで音読・シャドーイングする

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