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【卓球】良くも悪くも卓球界は狭い【ブームからカルチャーへ①】

「ブームからカルチャーへ」

今の日本は、空前の卓球ブームです。

卓球界のいまの盛り上がりを続けさせるためには、どうしたらいいのか?

プロ野球やJリーグのような「文化」として定着させるにはどうしたらいいのか?

「ブームからカルチャーへ、日本卓球界が抱える課題」と称して、TTD編集部が考える「卓球をブームからカルチャーへするためにはどうしたらいいのか?」を、これから連載していきます。

第1回では、先日公開した「データで振り返る『24時間卓球』」という記事で書かれた「議論を呼んだ一文」に絡めて、このテーマを書きました。

ブームからカルチャーへ、日本卓球界が抱える課題を考える
・【ブームからカルチャーへ①】良くも悪くも卓球界は狭い(当記事)
・【ブームからカルチャーへ②】**********(近日公開予定)

結論

卓球をブームからカルチャーへするためにはどうしたらいいのか?

最初に結論を書いておきます。

・肯定的や否定的や懐疑的など、いろんな意見や考えを主張できる雰囲気づくり
・居心地の良い場所から離れて、キャパシティを広げる

24時間卓球とは?

まずはじめに、この記事で話題の中心となる「24時間卓球」を、知らない人のために概要説明をしておきます。

「24時間卓球」とは、Lili PingPong Channelと照井雄太卓球チャンネルのコラボにより開催された卓球イベントで、テーマは「私達は勝手にTリーグを応援します」でした。

ゲストには、Tリーグチェアマン・松下浩二氏や、琉球アスティーダ代表・早川周作氏、T.T彩たま監督・坂本竜介氏など、豪華ゲストが登場。

イベント内容は、24時間にわたり、卓球をしたり、Tリーグの説明をしたり、卓球レッスンをしたり、卓球用品のプレゼント企画をしたり、と卓球のあれこれを行ったイベントでした。

企画立案からイベント開催まで3週間もなく、ドタバタ感あふれるイベントでしたが、見事やり切っただけではなく、オリジナルTシャツの作成、被災地復興のための寄付活動、プレゼント企画、上にあげた豪華ゲストの登場、同時接続視聴者数500人突破など、大成功と言って差し支えないイベントでした。

そんな「24時間卓球」で達成した数値のあれこれをまとめた「データで振り返る『24時間卓球』」という記事に、議論を呼んだ一文がありました。

それがこちら。

「今回の24時間卓球は、良くも悪くも身内だけで盛り上がって終わってしまったのではと思います。」

そしてこの記事に関するツイートには、このような一文も書きました。

※このアカウントは2019年3月23日をもって運用を終了、3月24日以降は第3者に譲渡しました。
「果たしてこの卓球イベントは成功?失敗?」

書いた本人でも思います、なんて意地の悪いひと言だろう、と。

なぜこのような反感を買いそうな文章を、わざわざ書いたのでしょう?

それについて書きました。

ポジティブな意見しかない不気味さ

「果たしてこの卓球イベントは成功?失敗?」

Twitterにてつぶやかれたこの一文に答えるとするならば、成功、それも大成功です。

8月26日に株式会社Liliの村田雄平代表と照井雄太さんが企画をツイートしてから開催日まで、およそ19日。

Tリーグチェアマン・松下浩二氏を始めとしたビッグゲストの登場、約50個ものプレゼント、500人を超える同時接続視聴者数、etc……。

いった誰が予想できたでしょうか?

わかりやすく点数で評価するのであれば、100点満点中200点や300点の結果を叩き出しました。

ではなぜ、「果たしてこの卓球イベントは成功?失敗?」というひと言をツイートに添えたのか?

それは、賛否両論の議論を巻き起こすためでした。

読者の方は、ぜひ数秒程度でいいので考えてください。

卓球界隈って肯定的な意見や考えばかりで、否定的や懐疑的な主張が極端に少なくないですか?

照井さんも以下のようにツイートしていました。

ということで、以前からこのことには違和感や気持ち悪さを感じていたため、せっかっくなので今回の24時間卓球の記事に絡めて種火を投下してみた、という経緯になります。

そして予想通り、さまざまな意見や考えがTwitter上に上がり、交わされました。

その内の、いくつかのツイートを紹介したいと思います。

良くも悪くも今の卓球界は狭い

卓球界隈が肯定的な主張ばかりで、ネガティブな意見や主張が極端に少ない理由はなぜか?

それは隣人との距離が近いからではないでしょうか。

試合に出れば必ず知り合いの人に遭遇するし、地元の卓球場に行けば試合で当たったことがある人がいる、卓球イベントに行けば顔見知りの人がいるし、卓球仲間の友達は別の卓球仲間の友達だったなど、「卓球界隈は狭いなー」と思ったことが誰しもあるかと思います。

このような卓球界の狭さが、否定手や懐疑的な主張をしづらくしているのです。

メジャースポーツの野球やサッカーでは、肯定的・否定的・懐疑的、すべての主張がそこらじゅうで見られます。

野球では、チャンスで三振をしたりエラーをすれば「何やってんだ」とスポーツ紙で叩かれて、Jリーグでは、チームが負ければサポーターもブーイングをするし、最近行われたサッカーW杯では、多くの人がある人に対して好き勝手に言って、最後には「本田△」となったのも記憶に新しいと思います。

卓球は、ミスをした時のため息こそあれ、プロ野球やJリーグのように、ここまで散々なことが言われることはありませんでした。

それは隣人との距離が近いため、否定的・懐疑的な意見を言うと嫌な顔をされるから、自分の評判やビジネスに影響するから、という理由があると思います。

しかし、ネガティブな意見がないものほど、信用できないものはありません。

例えば、ある商品のレビューを見たときに、ポジティブな意見しかないのは気持ち悪くありませんか?

おそらく、今の卓球界はこのような状況にあるのではないかと思います。

ある一定程度のネガティブな意見は必要なのです。

以下は、Jリーグクラブ関係者が唱えるネガティブな意見の必要性。参考までに。

さて、これまでは卓球界の狭さのネガティブな側面を述べてきましたが、もちろんポジティブな側面もあります。

今回、24時間卓球が大成功を収めたのも、卓球界の狭さがポジティブに働いた結果だと考えています。

一個人のイベントに、Tリーグの組織トップであるチェアマンや各チームの代表や監督がゲストとして登場して、卓球メーカーからプレゼントの差し入れが来るなど、プロ野球やJリーグでは考えられないでしょう。

隣人との距離が近かったため、多くの人の献身的な協力が得られたのもまた事実です。

どちらの方が良いとは一概には言えませんが、卓球を「ブームからカルチャーへ」するには、今の狭く深い卓球界の関係を、浅く広くする必要があるのではないかと思っています。

部外者を受け入れられるだけのキャパシティはあるか

「今回の24時間卓球は、良くも悪くも身内だけで盛り上がって終わってしまったのではと思います。」

最後にこの一文について書きたいと思います。

先ほどまで「良くも悪くも卓球界は狭い」という話をして、卓球を「ブームからカルチャーへ」シフトするには、今の狭く深い卓球界の関係を、浅く広くする必要があると書きました。

今回の24時間卓球というイベントが大成功した、というのは事実です。

しかし、卓球を知らいない人や卓球をやっていない人は「参加しても楽しめなかっただろうな」と容易に想像がついてしまうのもまた事実です。

24時間卓球の、卓球関係者以外の参加者は、おそらくDr.ストレッチの川島さんだけ。

「身内だけで盛り上がって終わってしまった」という意味は、まさにこういうことでした。

さて、ここでTリーグの現状を見てみましょう。

卓球を知っている人でもTリーグを知らなかったり、卓球事業をしている人でさえTリーグの開幕日を知らない惨状です。

このような状況では、そもそも身内だけで盛り上がるのでさえ難しいですし、卓球を知らない人を呼び込むなんて夢のまた夢です。

24時間卓球の対談で「卓球を知らない人・卓球をやっていない人にどうやってTリーグの会場に来てもらうか、そして観戦してもらうかが重要」と、坂本竜介監督や早川周作代表が語っていました。

しかし、まずは身内だけで盛り上がることが重要ではないでしょうか。

しっかりと身内へアプローチして、足を運んでもらい、観客の満足度で100点以上をとる。

そうすれば、多くの人がリピーターになりますし、リピーターがTリーグを拡散して、卓球を知らない人を呼び込んでくれる流れが出来上がります。

そしてそのあと、卓球を知らない人へのアプローチを始める。

山手線沿線や名古屋駅に掲示されたTビジュアル、非常に良かったですが、イノベーター理論でいうところの、イノベーターやアーリーアダプターといった、卓球界の中でも新しい物好きな人や流行に敏感な層への周知や宣伝が必要だったかと思います。

ここまで話したところでお気づきかもしれませんが、24時間卓球のアプローチの仕方は、正しいものでした。

まずは身内だけでも盛り上がれることを証明して、次の機会につなげていく。

1回目から卓球を知らない人へのアプローチができていたら、さらに評価は高かったでしょう。

しかし、ここからが正念場です。

「卓球を知らない人・卓球をやっていない人」に卓球の魅力を伝えたり、会場に足を運んでもらうのは、並大抵の努力や行動力、アイデアやPRではなしえません。

そこで重要になってくるのが、部外者を受け入れられるだけのキャパシティ、懐の深さです。

当たり前ですが、卓球を知っている人、身内の人たちだけでわいわいがやがやするのは楽しいですし居心地が良いです。

そこに、卓球を知らない人・卓球をやっていない人をあえて呼び込むという懐の深さを持てるか。

これが、いまの卓球界の盛り上がりが「ブーム」で終わるか「カルチャー」として根付くかの、分かれ目だと思います。

卓球を知らない人・卓球をやっていない人を呼び込むということは、隣人ではなく遠方の人に、意識的に働きかけて労力を使うということです。

そうすると、今まで隣人に費やしていた時間や労力を遠方の人に費やすので、今の居心地の良い場所が少なくなってしまう、もしくはなくなることもありえます。

あえていばらの道を進む選択肢に、卓球界の懐の深さは、キャパシティは耐えられるのでしょうか?

卓球界の命運を握るTリーグ

卓球をブームからカルチャーへするためにはどうしたらいいのか?

再び最後に結論を書いておきます。

肯定的や否定的や懐疑的など、いろんな意見や考えを主張できる雰囲気づくり
居心地の良い場所から離れて、キャパシティを広げる
Tリーグという卓球界の命運を背負った船は、もう出航してしまいました。

これからの卓球界が盛り上がるのも、盛り下がるのもTリーグ次第。

「ブームからカルチャーへ」

もしくは第3の道を見つけるのでしょうか?

ブームからカルチャーへ、日本卓球界が抱える課題を考える
・【ブームからカルチャーへ①】良くも悪くも卓球界は狭い(当記事)
・【ブームからカルチャーへ②】**********(近日公開予定)

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