絵画教室

あなたはもう自由よ
そう言われてもはや
青年は立ち尽くすしかなかった
その姿をスケッチしていた少女が
「あ、まだ動かないでください」。

オーダーされて青年は
ムッとした表情になり
実のところでは心底安心し
ぎこちない呼吸でもって
キャンバスに汚されていった

それを俯瞰していた三毛猫は
「うつし世の春は悲しき男かな」
自由を誰よりも謳歌し
にゃあと鳴いて泣いた

少女は許された途端に調子づいた
青年の得意げな表情が気に喰わず
わざと下手なハミングをした

するとこうだ、
「随分と個性的な歌声ですね」
青年は鬼の首を取ったように
そんなつまらない嫌味を吐くから
少女はまるで相手にしなかった

無視された青年の不安は
再びはち切れそうになる
少女の気を引くために
食べログで点数の高い
夜景のよく見える
シャンパンで乾杯できる
ベシャメルソースの美味しい
そんなレストランを
スマホで
探し漁っては
震える指先を強めに
しゃぶっている(現在進行形)

「お嬢さん、お嬢さん、こちらへ」

春の飼い主は少女です
つまりパステルの風が吹いたら
青年には惑う権利すらないのです
ただただまっすぐ、
自由の名の下に笑い出すほか
何もしてはならないのです

(破裂と諦観/許可)

泣きながらあるいは笑いながら
全力疾走で青年が去っていく
それを見送った少女はひとり
春のほとりでキャンバスを閉じる

暖かい風が通り抜けると
少女は静かに言うのだ
「次の方、どうぞ」

#詩 #小説 #現代詩

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