ムンクとゴッホ、精神病理と芸術/ムンク展感想

昨日は友人とムンク展に行って来ました。

最終日ということで人、人、人…!

私は障害者手帳があるので、チケットがいらず、チケット代もかからないので、入場まではわりかしスムーズでした。

それでも並びましたけど。

ムンクに関しては代表作の「叫び」と「マドンナ」くらいしか知らなかったのですが、面白かったですね〜!ムンク展!

一人の作家の作品を一同に観ると、作品もさることながら、作家としての生涯に興味が出ます。

そして、ムンクという人は作家としてはかなり興味深い存在でした。

意識的な画像、ムンク。

まず入っていきなり自画像とムンク本人の写真ばかりを観させられることになります(笑)。

友人と二人で「セルフィーだ…」「ギャルみたいだね…」と話しておりました(笑)。

そう、ムンクはなんだか現代人のような印象でした。

その後、家族の肖像画や友人の肖像画などが並ぶのですが、若い頃に母と姉を病気で亡くしたムンクは、死という主題に強く惹かれていたことがわかります。

そしてここでも面白いと思ったのは、葬式の絵の中のムンクと思われる人物がカメラ目線であったり、影が幽霊のようになっていることです。

ムンクは死という主題を沢山描くものの、その影は幽霊のようになっていたり、叫びもそうですが、どこか「面白い」のです。

なんというか、重くない。

水木しげるの絵のようなものがあったり、主題が手塚治虫の漫画のようだったり、妙に表現が漫画チックなのです。

この時期の画家の多くは日本の影響を受けていますが、ムンクもまた然りなのでしょう。

かなり浮世絵的な作品も多かったです。

しかし、ムンクは多作家でかなりのスピードで絵を描いていると思われますが、遠近感に関しては的確です。

もしかしたら水墨画などを意識しているのかなと思う絵も多かったのですが、西洋画家らしい奥行きを感じました。

色遣いに関しても、「叫び」などからイメージしていたものよりもずっと軽快で、洒脱な色遣いも多かったです。

特にグリーンやパープルの色遣いが素敵だと思いました。

なんというか、ムンクの絵は結構お洒落なんですよ。

そして特徴的なのは同じ主題、同じ絵を何度も何度も繰り返し描いているところです。

しかも、その年代に集中するわけではなく、かなり長いスパンで繰り返されているのです。

ムンクは版画も膨大な量があるのですが、このあたりは商業的視点というか、人気の絵を沢山描いている、尚且つ彼は非常に自分の絵を愛し、自分の絵を「子どもたち」と呼ぶくらいでしたので、自分用にも描いていたようです。

ムンクはスケッチに印象的な言葉を残していましたが、それは意識して書いていたそうです。

展覧会を通して感じたのは、ムンクという人のあざとさというか、利口さ、計算高さでした。

それは全く悪い意味で捉えているわけでなく、そのあざとさもすごく現代的なのです。

彼は自己愛が強いし、その上自分の見せ方もわかっており、しかし、自分に溺れることなく、きっちり商業絵も描いている。

そして画家としては大きく成功した人です。

個展を成功させ、勲章までもらっています。

神経症などの精神疾患に悩まされた側面もあるようですが、自ら精神病院に赴き入院するなど、ギリギリのところで自己を保っていたように思われます。

ムンクは端正な顔つきで、非常にモテたのではないかと思いますし、実際女性関係も華やかそうです。

女性に結婚を迫られたのを断ったところ、銃を暴発され、指を失くすという事件も起きてます。

ムンクは芸術のために“生涯独身”を貫いたようです。

所帯を持つとクリエイティビティに影響すると考えていたようで、これも現代の作家達にも通じる感覚のように思います。

非常に意識的な人なのです。

ムンク展を観れば観るほど、ムンクよりも10年早く生まれ、自殺という形で生涯を終えるゴッホのことを考えてしまうことに気づきました。

調べてみると、実際にオランダのファン・ゴッホ美術館では「どうしてここに『叫び』ないのか?」と聞かれることも多いそうで、2015年には「ゴッホ+ムンク展」も開催されたそうです。

『叫び』を描いたのはだれ?世界初「ゴッホ+ムンク」展!オランダとノルウェーの王室も駆けつける

https://www.huffingtonpost.jp/asaki-abumi/munch-gogh-museum_b_7248290.html

陽の目を見なかったゴッホ、成功したムンク。

ムンク展を観て、ムンクの生涯を知れば知るほどゴッホのことが気になり、今日ゴッホのwikipediaを読んでみました。

ゴッホは、生前は全然絵が売れず、かなり重い精神疾患に悩まされ、何度か自殺未遂をしたりしています。

そして、ゴッホ自身は非常に結婚願望が強かったようで、いろんな女性に求婚しては、しつこいと疎んじられていたようです。

全く対照的な二人です。

ゴッホは1890年に亡くなり、亡くなったあとに評価され始めます。

ゴッホとムンクが会ったことがあるかは定かじゃないですが、ムンクはゴッホを意識していたように思います。

そして、これは勝手な想像ですが、ムンクはゴッホを“反面教師”にしていたのではないかと思うのです。

ムンクの絵にはゴッホに似たような主題も数多く、技法なんかも影響を感じます。

ゴッホが亡くなった後で評価されていく様子をムンクが間近で感じていたとしたら、「作家としてすべきこと」を強く意識していた可能性があります。

ゴッホというのは、天然な人間です。

天然な人間というのはつまり、天才です。

彼は本格的に絵を描き始めるのはわりと遅いようなのですが、短い間に自分の画風を確立します。

というよりも、ゴッホの場合多分確立という形ではなく、もう天然で出来上がっている感じがします。

とにかく不器用で、なんにも上手くなく、絵を描くしか出来ないのに、その絵も売れないし、女性にはモテないし、自分の情緒不安定さのせいで周りは離れ、精神はどんどん削れていく。

ゴッホの後半の絵は、統合失調症だったのではないかと思うくらい、立体感や奥行きも不安定で、アウトサイダーアートのようになっていきます。

ゴッホの絵は色遣いが綺麗で端正でもありますが、神経質で、しつこく、重たく、無意識的なように感じます。

悪い言い方をすると、ムンクはファッションメンヘラっぽく、ゴッホはガチなメンヘラって感じです(笑)。

一見似たような絵を描く二人なのですが、その生き方の差を絵からどことなく感じてしまうように思いました。

現代人からすると、ムンクのセルフマネジメントやマネタイズは非常に勉強になります。

しかし、芸術とはなんぞや、と考えたとき、ゴッホの表現というのは、歴史に残るものなのでしょう。

クリエイターとして、どちらがいいのでしょうか?私にはわかりません。

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