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レタル展示会記録4:「そもそもレタルとはなんなのか?なぜ白いシャツの店なのか?」

展示会記録を書いていてふと思った。

「レタルの説明してないな!」ということ。

レタルは2011年の5月30日に立ち上げた。

準備期間はその前年の9月くらいから。

そのとき私は27歳だった。

「白いシャツがお好きなんですね?」とよく聞かれるけど、それはそうなんだけど、ブランドを始めたのは「白いシャツが好きだから」ではない。

レタルを始めたのは「自分のブランドを作りたかったから」だ。

27歳…それはとても半端な年齢で、会社の仕事にも慣れてきてマンネリになり始め、しかしその頃いた会社は中堅のアパレルで、上の先輩もたくさんおり、下は全然入って来なくて、いつまでたって下っ端だった。

その頃のアパレルは、海外生産が過熱している時期で、日本の工場から韓国、中国、ベトナムへとシフトしていた。

海外生産は、その頃まだ技術的に安定しておらず、安いは安いけど、どうなんだろう?と日々疑問を感じながら、だけど自分には何も変えられない世界で仕事をしていた。

そして、プライベートもいまいちパッとしない日々を送っていた。

そんなときに私は好きな男の子が出来た。

大学時代の後輩で、彼はサラリーマンの傍らバンドをやっていた。

ライブを観に行ったら、イキイキとした彼が目に入り、そして昔よりも落ち着いて大人っぽく見えた。

今思えば「くすんだ日常からのエスケープ」だった。

私は彼が好きだったけど、好意に気付いた彼が私にこう言った。

「僕、もう大学時代の僕と違うんだよね。」

私は失恋し、その言葉に殴られた。

しかし、よくよく考えたとき、その自分の「くすんだ日常からのエスケープ」を彼に託すなんて大変失礼な行為だと思った。

私はどこかで、彼を応援すれば「自己実現の欲求」が解消されると思っていたのだ。

言葉に殴られた私はフラフラしながら考えた。

「そんなに何かやりたいなら、ブランドをやろう…!」と。

もともと自分のブランドはやりたかったのだ。

だけど、社会人になるとそんな夢は「いつか」の話だった。

でも、それこそ林先生じゃないけど「いつかっていつ来るの!?」と思ったのだ。

会社でちょっとだけデザイナーをやったのと、パターンを引くくらいしかやってなかった私はその頃、素材を仕入れる仕入先も、請求書の書き方も、資金繰りの仕方も、Webサイトの作り方もなんにも知らなかった。

今思えば無謀だったけど、なんにも知らなかったから出来たのかもしれない。

白いシャツの店の理由

無謀とはいえ、自分がやれることは少ないことはわかっていたし、一人でブランドを回そうと思ったときに(しかも当時は会社員をやりながら)、多くは手を拡げられないので、アイテムは極力絞ろうと考えた。

資金もまったくに近いほどなかったので、コスト的にも無理がなく、尚且つブランドとして成立するものを考えたときに「白いシャツ」に行き着いた。

白いシャツは、私ではなく、母親が好きだった。

何枚も白いシャツばかり買う母の姿を見ていたのと、その当時はシャツのパターンばかり引かされていたからだった(今よりずっとキャリアが少なかったので、軽衣料を中心にパターンを担当していた)。

「生地は白い生地でごくごく限られたものに絞り、本業であるパターンをひたすら増やしていく…」それがレタルのシステムの始まりだった。

資金的に在庫を抱える余裕もなかったし…、それに上記の通り当時は海外での大量生産品が主流だったので、せっかく自分がやるなら一点一点を国内縫製する受注生産にしようと考えた。

プラスワンとして、自分はパタンナーなのだから、お客様に元のデザインを提案する形にしつつ、細かいサイズを調整したり、ボタンなどの附属をカスタマイズ出来る“セミオーダー”のシステムにした。

今の自分でやれるブランドはどういう形か?の答えが“白いシャツの店レタル”だったのだ。

レタルの成り立ちを話すと、当時は「白いシャツが好きで仕方ないからじゃないんですね…」とガッカリされることも多かった。

しかし、最近はエシカルな傾向も高まり、「まず白いシャツというアイテムに注目したこと、セミオーダーという形で生産することはとても経営的にも無理なく、パタンナーであるヒグチさんの能力を存分に発揮するやり方ですね。」と言われることが増えた。

たくさん在庫を積んだり、必要以上に無理をしなくても…、アイテムを絞ることで集中でき、豊かなデザインバリエーションをお客様に提供することができる。

そして、私がパタンナーであるからこそ可能な“カスタマイズ”というホスピタリティを確保する、レタルはそこをきっちりやりたいと思う。

今回の展示会では、“より豊かなデザインバリエーション”と“パタンナーならではのシルエットへのこだわり”に注力していきたいと考えている。

27歳の頃の失恋した中途半端な自分からは考えられないくらい、私はレタルのおかげで成長し、強くなった。

辛いこともたくさんあったけど、強くなれたのはいつも支えてくれたお客様や一緒に働いてくれる人たちのおかげである。

その人たちに更に成長したレタルを見せられるよう、今回の展示会は気合いを入れていこうと思う。

どうぞ何卒よろしくお願いします。

【白いシャツの店レタル新作展示会】

“The Stories of the Twelve Apostles:the First Part”
(12使徒物語:前編)

会期:5月23日(木)〜26日(日)
会場:西荻窪ギャラリーステラ
〒167-0042 東京都杉並区西荻北3-13-11-1F

5月23日 16時〜20時
24日・25日 11時〜20時
26日 11時〜18時30分

レタルの新作の白いシャツの展示会となります。

レタルのシャツ以外に参宮橋ピカレスクギャラリーからアート作品とアクセサリー、Miyako Gotoの帽子を一緒に展示販売します。

『いままでのシャツ』も注文可能です。

本展示会は受注生産となります。

お支払いはVISA/Master、代引き対応可能。

9年目に突入するレタルの新しい世界観をどうぞお楽しみにくださいませ。

白いシャツの店レタル
http://retar-amip.jp

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