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vol.17 誰かと何かを作るはなし、その2(トム編)

さて、前回からずいぶん間があいてしまいましたが『トムとジョリー(髭)』のお話の後半です。(また今回も長いですw)

実はmiyaさんと始める時に、密かにもう一つ『縛り』をつけていました。それは私の原作は全て『恋愛物』にすることでした。せっかくの機会だったので普段は違う物をやって見たかったし、miyaさんの描く女性はとても魅力的だったので頑張ってみました。その結果…

【原作】

『特別な人じゃなかった
そう思えれば楽なのに
何度理解して欲しいと絶望すればいいのか
でも信じてる …いつかガッキーが俺に一目惚れしてくれる未来を!
「それまではお前でガマンしてやるよ」
「バカヤロウ、こっちのセリフだ!」
きっとこれからも繰り返される日々
そんなに悪くない毎日』

【マンガ】

必死に恋愛ものを拒否されるっていうね。

私が必死に頭をひねって毎回恋愛物の原作を書いているのに、miyaさんはどうにか恋愛以外のお話にしようという謎の追いかけっこが始まる訳ですw。

miyaさんのメイキングマンガ『誰かと何かを作るはなし』でも描かれていましたが、lineで打ち合わせをしていた時、発表の仕方などは話し合ってきましたが(あと雑談w)、作品の内容に関しては基本的にノータッチでした。
相手がどんな原作を書いてくるか分からないし、自分の原作がどんなマンガになるのかも分かりません。事前にチェックなどはしないので、ドキドキしながら相手が更新してくれるのを待つことになります。
私にはそれがとても楽しくて。まるでファンレターを書いたファンのようにしてマンガを読ませて貰ってましたw。

本来、1ページマンガって(特に創作などの物語形式の場合)それほど中身を詰め込められないと思うんです。相当練り込まないと見ている人が立ち止まって見てもらうことが難しいし、誰かと一緒にやるにはあまり適さないジャンルではないかなーと。
でも(私のヘタレ具合から)miyaさんとこの企画を一緒にやることになって、どうすれば時間を掛ける価値のあるような物が出来るんだろうと考えていました。前回も書きましたが『一緒にやれる楽しさは、時間を経るごとに薄れていく』と思っていたので。
そうして、考えたことが以下の事でした。

お互いがそれぞれ作品として残せる形にする
(著作権の問題をクリアする)
原作、マンガ、それぞれを作品とし、その『解釈の部分』をコラボする
原作は自由に変えていいことにする。むしろ、そこからどれだけ発想出来るかを考える


つまり『それぞれが(原作に縛られずに)自由に作り、原作とマンガの違いを楽しんでもらう(自分たちで楽しむ)』という事ですね。口で言うのは簡単ですが、実際にやるにはなかなか難しいことだと思います。色んな意味で相手を信頼してないと出来ない事ですから。

そんな感じでやっていたので、miyaさんがどんな原作やマンガを出してくるのか、当日まで全然分かりませんでした。その結果、上に書いたような《恋愛物を描かせたい/描きたくない》という妙な追いかけっこが始まったりしてたんですねw。
個人的にはそういうことすら楽しくて、毎回いやがらせのように恋愛物を書いていた部分もありましたw。


そんな時に起こったのが、例の『原作が19文字』事件でしたw。(詳しくはmiyaさんのマンガへGO!


それはvol.10、トムとジョリーの最後の回の事でした。
いつものように原作を受け取るために、miyaさんからのLINEを待っていた時でした。送られてきた原作に、私はしばし固まりました。

『《原作》私はここにいるよ  あなたもどうかお元気で』

あれ?これだけ??

そう、大体140字前後で送られてくるはずの原作が、今回は19文字しかなかったのです。その後しばらく待っていても追加の文章はありませんでした。

きっとこうするには何か理由があるんだろうな~と思っていたら、miyaさんからこんなお返事を頂きました。

・miyaさんの原作が私の想像力の枷になってしまっているのではないか
・もしそうなら、本当に伝えたい言葉をそのまま渡したらどうか
・素材としての言葉を渡して、私がそれをどう料理するのかを見たい

原作によって縛られている部分があるのだとしたら、その影響を限りなく小さく(物語ではなくキーワードにして)してやったらどうなるのだろう、という事で必要最低限の文章のみで原作を作られたという事だったんですね。

私はそれを読ませて頂きながら、『悪いことをしちゃったなー』と反省しました。これは『原作を自由に変えてよい』という悪い部分で、本来『楽しいこと』であるはずのコラボなのに、私の要望によって不必要な悩みを増やす結果となってしまったからです。

その時にあらためて『原作を自由に変えてよい』というルールは、気楽には扱えない難しいルールだなーと改めて感じました。ともすれば傲慢なエゴの張り合いにもなりかねないし、(原作を変えられる側からすれば)勝手に変えられるのですから、気持ち良いはずがないですもんね。むしろ「これだったら原作なんて必要ないじゃん」って思ったとしても不思議はありません。
もしかしたらmiyaさんにも、そういう部分があったのかな~と、LINEを読みながら思ったりしていました。

そうして、
反省しつつもmiyaさんからの原作を初めてボツにさせて貰いました。
一番最後の作品なのにw。

この企画、『トムとジョリー(髭)』は私にとって大きな企画でした。それはやる前からそう感じていたし、やった後もそう考えています。
それは(見て下さった方が多くいたことも確かにありましたが)miyaさんとの初めてのがっつりしたコラボであり、私自身にも大きなハードルが課せられた企画でもありました。やっている時が楽しかったのはもちろんですが、同時に『この企画は、miyaさんから多くの時間を奪っているんだ。少しでも価値のある物を作らないと』という部分もずっと思い続けていました。

だからこそ、19文字の原作を見て、そしてmiyaさんからその想いを聴いた時に、最後までがっつり関わって欲しいと思ったんです。せっかく時間を掛けて一緒にやってくれるのだから、最後までやりきりたい。
相手を気遣った『最低限の原作』ではなく、後でやって良かったと思えるような"自分のための企画"にするための『最大限、miyaさん色の原作』が欲しかったのです

そうして再度送られてきた原作は、とても素晴らしい物でした。

【原作】


スマホを見せながら
友「ホラ担任まだ生きてたw」
私「え?同窓会あってたの?」
友「も〜FBかLINEどっちかアカウント作りなよ。いつもあんたがどこで何をやってるのか皆に聞かれる私の身にもなって?」
私「w」

LINEにもFBにもいないけど私はここにいるよ、あなたもどうかお元気で

【マンガ】


そして、頂いた原作をほぼそのまま描いたのが最後の作品『vol.10 ~いつかどこかで~』となりました。
これに限らず、どの作品もmiyaさんの原作無しには描けなかったものですし、どれもその時々の想いがいっぱいつまった作品になりました。

生産枚数わずか10ページのコラボではありましたがw、毎回新しい発見と喜び(と苦悩w)に満ちたとても楽しいコラボユニットでした。

一緒にやって頂いたmiyaさんと共に、見てくださった方々に精一杯の感謝を表したいと思います。

これが、私から見た『トムとジョリー(髭)』の物語でした。

●誰かと何かを作るはなし

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