素人なりに考える騎手の安全

相次ぐ重大事故

今年に入って、知っている限りで3件の騎手の死亡事故が発生しています。イタリア人騎手のステファノ・ケルキ騎手、高知競馬の塚本雄大騎手、そして中央競馬の藤岡康太騎手です。落馬自体はそれなりに起きています。その後も松山弘平騎手、吉田隼人騎手や木幡初也騎手が落馬負傷するといった事故が起きています。これまではそれが最悪の事態に繋がることはあまりなかったので真剣に考えたことはなかったのですが、ここまで続くと騎手の安全対策は万全なのかと考えてしまいます。

もちろん、いちファンとして考えているに過ぎず、ド素人なのでどこまで本質に迫れるかは全く自信がないのですが、競馬を楽しむ裏側には騎手が命がけで騎乗していることを考えると、一考しておいても悪くないのかなと思った次第です。

何が問題か

落馬時の事象としては2つあると考えています。

  • 落馬そのもの

  • 後続馬との接触

重大な事故に繋がるのは後者と思われますが、こればかりは避けられない面もあるでしょう。雑に言ってしまえば「運」ですが、極論、そういうことかと思います。よって、運に左右されない部分での改善が求められます。また前者についても、上述の松山弘平騎手はゴール入線後の落馬ということで後続に絡まれたわけではなさそうで、いずれにしても重大事故に繋がる可能性は大なり小なりあるものと思われます。よって、当たり前のことながら、落馬時の衝撃と接触時の外的な力から騎手をどう守るかがポイントとなると考えます。となると、防護具をいかに用意するかが鍵となります。

ヘルメットが軽すぎないか

以前から騎手が被っているヘルメットがあまりには軽すぎるのではないかと思ってました。競技の性質上、あまり大きくできないという事情はあるのでしょうが、頭部保護だけで顔面や後頭部は丸出しというのがどうなのかなと思ってました。せめて、モータースポーツのようなフルフェイスのヘルメットは採用できないものか。例えば、こういうやつ。

これはF1チャンピオンのマックス・フェルスタッペン選手の画像ですが、F1仕様なので最上級の安全性能を盛り込んでいると思われます。さすがにここまでは要らないと思いますが、せめて一般的に販売されているレベルの保護機能はあってもいいでしょう。

斤量の問題もあるという声が聞こえてきそうですが、今年からは斤量が増えていますし、もともとヘルメット自体は被っているわけですから、軽量の素材を使えば追加で500グラムほどではないかと思います。斤量自体は1キロ増えているわけですから、その範囲で吸収可能と思います。そもそも安全性第一でなければおかしいわけで、斤量云々はまずは度外視して考えるべきです。

ついでに言うと、F1では6年前から「ハロ」(ヘイロー)と呼ばれるドライバー保護のための装置が装着されています。当初はカッコ悪い、ダサいのオンパレードでしたが、私が見ている限りでは数回はハロがあったために大惨事にならなかった事故もありますので、結果的に効果抜群であったと言えます。

もちろん競馬ではつけようがないですが、これはハロ自体がどうこうではなくてこういう発想が必要だということで取り上げておきます。

なお、この記事をアップした5月1日は、30年前にアイルトン・セナ選手が事故死した日です。あのときはかなり衝撃を受けたことを記憶していますが、同じような事故は起きて欲しくないものです。

エアバッグもある

実はバイク向けにはエアバッグがあります。バイクのレースでは見慣れた風景ですが、ライダーの背中にこぶみたいなものがついています。背中への衝撃を和らげるなどの目的があるようですが、ここにエアバッグがついているものもあるようです。

私は1980年代によくバイクレースを見ていたので今でも記憶していますが、当時のレーサーはレーシングスーツ着ただけでした。こんな感じです。確か、プラスチックの板みたいなものが入っていた気がしますが、300キロ近いスピードで走っていたらオマケにもならんです。

今では上記のようなこぶのついたスーツになってますので、安全性は増しているのだと思います。競馬に導入するにはいろんな工夫が必要だと思います。まず、上記の製品カタログでは重さが1.2キロありますので、この軽量化が必須です。しかしこれもクリアできないような話でもないでしょう。

競輪の場合

競馬では最速で時速60キロくらいは出ていると思いますが、競輪も同じくらいのスピードが出ています。競輪の場合は自転車に乗っても自分の身長くらいの高さにしかならないので、騎座が180センチくらいの高さにある競馬とはちょっと違うのですが、競輪の場合は下がアスファルトですので、芝やダートと違って固いはずです。よって、安全性はバイクと同等のものが求められます。下記の記事でヘルメットが取り上げられています。

これによると、バイクと同等の基準を持つとのことですが、画像を見れば分かるとおり、耳まで覆われています。多分、耳の部分は柔らかい素材なんじゃないかと思いますが、そこまで覆われているのは競馬と違うところです。競輪の場合は斤量の制限がありませんので、少しくらい頑丈に作ってもなんとかなりそうですが、競馬に導入するとなるとこれまた工夫が必要でしょう。

できない理由は要らない

いくつか知っている範囲での候補を挙げてみましたが、できない理由は要らなくて、どうしたらできるかをJRAには考えてもらいたいです。

ただ、先日引退した藤井勘一郎元騎手によると、彼が乗っていたオーストラリアでフルフェイスヘルメット導入の話が持ち上がっていたようですが、視野などの関係で見送られたそうです。

視野についてはヘルメットの開口部を広めにするとかでなんとかできませんかね?F1のハロも最初は邪魔だとか言われててかなり不評でしたが、いまは誰もそんなこと言ってません(記事だけ見ると)。

そんなところで、川田将雅騎手がちょっと変わったヘルメットを被っていたなと検索してみたら出てきました。

後頭部まで保護できているという点では、既存のものよりもマシだと思います。ちょっとした工夫でここまでできるのですから、視野の確保の問題を解決することもできるんじゃないかと思います。

選手の安全と健康はどのスポーツでも関心事であるでしょう。ラグビーでは選手の頭部への衝撃を軽減するため、スクラムの組み方を変えたり頭部へのタックルには一発退場(いまは若干緩和されて、よほど悪質でなければイエローカード)で対応しています。また、あまり詳しくはないのですが、アメフトでも防具を改善しようという動きがあると聞いたことがあります。

ここまで来て何もしないのであれば、あまりにも対応としてはお粗末というレベルになりますので、JRAは覚悟を決めて取り組んで欲しいものです。あるいは、すでに取り組んでいるのであれば、早々に対応策を実施してもらいたいものです。

(了)

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