栄光の名文たち 追悼かなざわいっせい氏 第4回

最初の勢いがなくなりつつありますが、コツコツとつないでいかないと、かなざわ氏のエッセイ「八方破れ」の単行本化のムーヴメントが消えてしまいかねないので、まだまだ続きますよ!もっとも単行本化のムーヴメントが生まれているのかはよく分かりませんけども。

かなざわ氏がマヤノトップガンなどを生産した川上悦夫牧場で夏季限定の牧夫をしていたことは有名な話ですね。そういった経緯から、宝塚記念でマヤノトップガンの単勝を100万円買うなどのエピソードが多数出てくるのが川上悦夫牧場というわけですね。

今回は単行本4冊目、『八方破れ どもならん!』からの紹介でございます。なお、これ以前の3冊はサラブレッド血統センターからの出版でしたが、4,5冊目は流星社からの出版となります。よって、掲載号の表記が以前の3冊は9/15, 16号みたいになっていたのですが、下記のような表記になっています。

ほな、サヨナラでございます(本紙掲載1996年9月16日号)

かなざわ氏は子馬を憶えるのが苦手のようで、川上悦夫牧場で生産された子馬をあまり憶えることができなかったようです。しかし、そういう馬に限ってよく走るという会話からスタートです。実は散々コラムに登場するマヤノトップガンも憶えてない馬の一頭だったらしく、夏季限定が終わって帰るときには記憶から全て馬のことを消して帰ってね、なんて牧場を訪れていた馬主さんから言われる始末(もちろん、冗談ですよ)。そんな会話をきっかけに昔を思い返すと、最初に夏季限定牧夫として来たときはあまり馬もいなかったが活躍馬が出始めると生産馬も増え始めてきた、そしてその馬を見に来るファンも増えてきた、ついでに八方破れを書いているかなざわいっせいを見に来るファンまで増えてきた、しかし来られても仕事を真面目にやっているので無愛想にしか対応できないだろう、それを見たファンは嫌な思いをするに違いない、あわせて自分もそんな状況では嫌な思いをするに違いない、そういうのは嫌だから今年限りで夏季限定牧夫を辞める、という展開です。

で、なんで真面目に仕事をしているかというと、あるとき牧場主の川上悦夫氏から仕事終わりのときに「牧草も刈っておいてくれ」と言われてふて腐れていたところ、同い年で本職の牧夫の金沢さん(同名なだけで血縁関係なし)から「あんたは部屋に帰って休んでていいよ」といわれたのがショックだったらしく、より仕事に本腰を入れていたという事情があったのです。

そんなことで辞めるという流れになったのですが、この回はオチもいまいちに感じますし、ほかにも理由はあるのかなと思います。例えば、牧場の仕事は力仕事ですから、日々ダラダラしてコキコキのビール飲んで酔っているかなざわ氏には重労働であることは確実で、その辺の体力的なものなどもあったのではないでしょうか。さらに勝手に推測すると、それを理由に川上悦夫氏から戦力外通告を受けた、とかね。それをストレートに書いてしまうと川上さんが悪者になってしまうから、上記のようなネタになったのかも。

あくまでも憶測ですし、後日談としてどこかに出ているかもしれないので、見つけたらお知らせします。でも本当は文中にもあるように、単に締め切りギリギリだったからというのが真相でしょうね。アハ。

(了)

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