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とある会社員が働きながら公認会計士になり国際税務マンになったお話

ツイッターの流行りに乗っかり、僕も一会社員が公認会計士になり、国際税務業務に携わるようになった経緯を少し綴ってみたいと思います。(かなり連投になるのでnoteで)

1. 僕は日系の多国籍企業()に新卒入社して、投資や予算・業績管理を行う部署に配属された。経理部ではないが、正直、営業部隊しか想像していなかったので、全くピンと来なかった。

2. すぐにわかったのは、これまでテキトーに過ごしてきた大学までとは違い、本気でファイナンスや会計を学ばないと話にならないということ。このままだと社内の打合せの会話にも付いていけないな、と。

3. 尚、最初の取っ掛かりとしては、とりあえず買い漁ったグロービスの本は意外と悪くなかったと思う。でも、先輩の薦めで買ったマッキンゼーのValuationの本はちんぷんかんぷんだった記憶。EBITA?うーん?という感じ。

4. 会社からはとりあえず簿記3級を取れとの指示。大学で少しやっていたこともあって大丈夫だったけど、ちなみに大問一つ思いっきり間違い71点でギリギリ合格。

5. で、次に始めてみたのが中小企業診断士の講座。十数万円支払ったら、寮の部屋に大量のビデオが届けられたが、ベッドに寝転がりながら再生して30分後には眠りに落ちた。

6. 簿記2級についてもテキストを買ってしばらくスタバで読んでいたが、結局、きちんと勉強しようというモードにならず。簿記の計算も大事だけど、理論的な勉強をもっとしたいという気持ちもあった。

7. ここから得た教訓(言い訳)は、まず、自宅では無理(教室に行って強制しないと集中できない)、ハードルを高くしてモチベーションを上げた方がいいという二つ。それで、無謀にも公認会計士試験の講座にトライすることにした。入社2年目の秋か冬くらいだったか。

8. 尚、寮でゴミ置き場に捨てた大量の中小企業診断士講座のビデオは、寮の誰かが回収したようだった。売ればよかった。

9. ちなみに、仕事でも当然ながら企業会計に触れるところはあった。投資のごく簡単な事業計画の作成だとか、連結ベースでの業績管理とか。会計は面白いな、という思いはすごくあった。

10. 当時、会社がUSGAAPを採用していたこともあり、USCPAと迷った。英語もやれて一石二鳥とも思ったが、会社法や税務については、まずは日本のことを学んだ方がいいかなということで日本の公認会計士に。

11. で、週末の土日(と、たまに平日の夜)に新宿のLECに行き、その場でビデオを見る講座をスタート。金額忘れたけどかなり高い金を払ったこともあり診断士の二の舞にはできないのと、周囲に会計士目指すと公言して、何とか継続した。

12. 会計士の勉強は会社での業務とすごく親和性があった。学んだことがすぐに業務で活かせる感じ。これも勉強を続けられた大きな要因。会計士補見習いとか揶揄されつつも、周りに会計や会社法のことを解説したりで重宝されるようにも。

13. あと、営業部隊の作ったBSがバランスしていない事業計画のエクセルを解読して、バランスさせる作業をいくつかこなした結果、バランサーという呼び名も頂いたりした。

14. 自分の中で決定的だったのは、とある投資案件での成功体験。自分で調べた税務と会計処理を踏まえて行った案件ストラクチャーの提案が見事にはまったもの。営業部隊からも凄く感謝された。

15. この頃から、社内の経理部や、社外のコンサルをライバルだと意識するようになった。営業部隊からすると、より早く、よりいいアドバイスをくれる方を頼るわけなので、彼/彼女らにどちらが選ばれるか、という勝負。

16. それは、本来は、そもそも組織としてどうあるべきかということではあるが、そういう組織論は上の人に任せて、若い内は個人で勝負と思って力を磨くことも悪くないと思う。

17. で、会計士試験の勉強はというと、頑張って土日に6~7時間くらい勉強する日々を継続。仕事ではその仕事に出てきたことを点で深く学ぶのに対し、試験勉強はその点と点をつなぐ体系的な勉強ができるイメージ。

18. その流れで、勉強を始めて2年くらいで受けた短答試験に合格。ちょうど新試験になったタイミングだったか(これ言うと、年バレますが)。ただ、論文試験には落ちた。

19. 尚、唐突だが、この間に結婚もした。遠距離だったのが急に同棲することになるわけだけど、結婚しても当面土日は勉強に専念するというイミフな条件?を受け入れてくれた妻には本当に感謝している。

20. で、この当りから少し勉強がしんどくなってきた。というのも、学ぶというより、試験に受かるためのテクニカルな要素が増えてきたから。一つでも穴を埋めて点を貰うような解き方とか、仕事では役に立たないし、面白くない。

21. それと、業務の必要があって学びたかった連結納税や組織再編税制が試験範囲外で、なかなか勉強できなかったことも大きい。家庭のこともあるし、会計士試験への挑戦はあと1年と覚悟を決めた。

22. ちなみにこの時から、LECをやめて大原のWEB講座に切り替えた。自宅の部屋にこもってPCで受けるやつ。さすがにもう継続するしかなかったし、通学時間も削れるのでこれにしようと。

23. そして迎えた翌年の論文試験に何とか合格。これも年がバレるけど、合格者が急増した年とも重なり、また、会社法の問題とかは得意分野が当たったこともあり、運よく拾ってもらえたというのが正直な感想。

24. もちろん超うれしかったし、会社のPCでドキドキしながら合格発表を見た日のことは忘れない。月並みだけど、頑張ってよかった。

25. 正直、勉強時間そのものは周りの受験生よりだいぶ少なかったと思う。特に答練や計算の練習は著しく少なかったと思うし、電卓のブラインドタッチもできない。ひたすら計算系の原価計算問題とか出たら捨てようと思っていたくらい。

26. 一方で、社会人として連結決算とかValuationの実務とかに携わっていた身からすると、逆に学生の受験生が座学でやるよりもずっと優位がある部分もあるはず、という思いはあった。

27. でも皆さんご存知の通り、これはまだ試験合格者、というだけ。ここに実務補習と業務従事、そして修了試験を経てようやく公認会計士になれる。

28. 業務従事は、もちろん会計監査の経験はないが、これまでの会社での経験(主に財務分析の切り口)でもって金融庁に届け出てOKを貰えた。

29. この頃、会社で付き合いのあったBig4の方から監査法人との交換留学というご提案も頂いた。こちらの希望通りだったのだが、残念ながら会社の偉い方の承認を得られず破談に。

30. 偉い方の判断は、監査の経験は会社の業務上必要ない、ということなんだろうか。決してそんなことはないと思うし、今でもこの件は残念に思っている。

31. それと、実務補習については、本来3年間のところを2年に短縮にして、会社の後やら土曜日やらに補習所に通った。時間の拘束はそれなりにはあったけど、まあこれはこれで何とかなった。

32. で、やはり最後の難関は修了試験。これ、試験合格者で監査法人勤務の同期たちが受験して、それでもけっこうな割合で落ちるわけで、しかも試験内容もかなりガチ。

33. しかも、こちらは監査経験もないので、正直、監査論とか、公認会計士法や職業倫理とかは座学の域を出なくて(というか座学でもなかなか興味を持てなくて)、苦手意識もあった。

34. とはいえ、何とか合格できたのは、修了試験用のWEB講座を受けたのと、あとは、この年、初めて連結納税が出題されたのが普段実務でやっていて余裕だったのと(修了試験の範囲には入っている)。

35. ということで、晴れて公認会計士になって、引き続き今の会社で働いている。いわゆる経理部に配属されたわけではないし、典型的な決算業務も会計監査の経験もない、会計士としては珍しいタイプだと思う。

36. 投資なんかをやっていたこともあり、ファイナンス的な思考だとか、或いは連結の範囲(IFRS10とかは、IASBでの議論から超読み込んだし)、企業結合とかは自信ある一方で、経理実務の現場的なところはたぶんかなり弱いと思う。

37. その後、希望叶って社内で税務の部隊に異動。僕は会計も税務も大好きだが、やはり税務の特徴は、会計とは違い、自社のキャッシュフローに直結するところ。

38. 守りの税務から、場合によっては積極的なタックスプランニングまで、成功すれば自社のキャッシュフローやPLが改善するし、その後の税務調査でのヒリヒリする勝負はしんどい時もあるけど、やはり楽しい。

39. また、外部のコンサルとも違う。外部の税制と自社の税務ポリシーやポジションの両方を把握しているからこそできることがあるし、その成果もそのまま自社に帰属する、という楽しさ。

40. それから、国際税務を本格的に学んだのもこの時。移転価格もタックスヘイブンも租税条約もPEも、試験勉強ではほとんど出てこなかったけど、実務では頻繁に遭遇する重要分野。

41. この頃は、世の中で公表されたM&A案件や税務調査否認案件について、有価証券報告書やニュースリリース等の公開情報から会計・税務インパクトをガチ分析するブログもやっていた。今見ると100件以上も。。

42. 一応、今後の自分の案件に役立てるためというのと、ま、実際には趣味か。今は時間もなくてほとんどやめてしまったけど、ほんのごく一部、このnoteでも継続している。

43. また、最近の流行りは税務ガバナンスというやつ。一応、多国籍企業なので、BEPSという激流の中、外国の関係会社含めたグループ税務ガバナンス、税務マネジメントをどうやるのかというのは非常に面白いチャレンジ。

44. で、話を戻すと、僕自身は、公認会計士試験にチャレンジしたのは本当によかった。でもそれは、たまたま合格という結果も付いてきたから言えることであって、周りに社会人受験を推奨するか、というと悩ましい。

45. 実際、本当に会計士になりたいのであれば、会社を辞めて退路を断って挑む人の方が多いだろうし、その方が断然、合格確率は高いと思う。もちろん合格後にやりたい仕事も、前の会社とは全然違うものだろう。

46. 僕の場合、もちろん真剣に取り組んだが、究極的には仕事の役に立てば資格そのものはなくてもよかった。それでも合格できたのは本当にラッキーだったし、だからと言って、今の会社を辞めようとも思わなかった。

47. そうすると、試験合格(資格取得)が目的なのか、学ぶことが目的なのか、だろうか。まあ、学ぶために始める試験勉強としてはなかなか高い買い物かも知れないけど。

48. それと、会計士協会の会費を年間10万円くらい、ずっと自腹で負担してる。効用は公認会計士を名乗れることくらいだが、これは自分のアイデンティティーだと信じ、今も続けている。

49. しかし、ツイッターを見ていると、凄い会計士・税理士の人たちがたくさんいる。自分ももっともっと色んなインプットを続けていかなければと思う。海外駐在していながらまだまだ得意とは言えない英語も含めて。


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