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2019.06.07 TALKイベント「THERIACAデザイナー濱田明日香のあたまのなか」感想

#ファッション #トーク #濱田明日香 #洋裁

2019.6.7-23の期間中、神戸にある元輸出生糸の品質検査場であるKIITOで開催されていた濱田 明日香さんの展示「THERIACA 服のかたち/体のかたち / THERIACA Shapes and Forms: Clothes, The Body」のイベントとして、初日に開催されていたトークイベントに行ってきましたので、感想を綴ります。

まず濱田 明日香さんとはどなたなのか?という話なのですが、私がはじめて濱田さんを知ったのは「かたちの服」という手芸本でした。

濱田 明日香さんの手芸本「かたちの服」 表紙

本屋で表紙に惹かれ、ページを開いてみると、可愛くて変わった形の服がいろいろと載っていて、明らかに他の手芸本とは違うオーラを放っていたので、本を見た後すぐに購入しました。
その後、さっそく載っていた丸い形の服を作ってみたところ、何箇所か失敗したものの可愛くできあがり、今でも私のお気に入りの一着となっています。

かたちの本の型紙を使って作った服です

話を戻しますが、その後いくつか濱田さんの手芸本を購入してファンになった私なのですが、たまたまKIITOのニュースレターを見た時に、濱田さんが島根県立石見美術館でされていた展覧会の巡回展をKIITOで開催するというのを知り、しかも初日にトークイベントがある!!!という事で、すぐにイベントに応募したところ、有難い事に参加できることとなりました。
濱田さんについて気になり始めた頃に、インターネットなどでググってみたりしていたのですが、本当に情報がなく(写真も横顔のものが数点のみ)、どんな方なんだろうな〜と思いながら、当日が来るのを楽しみにしていました。

トークは神戸ファッション美術館の学芸員をされている次六 尚子さん、島根県立石見美術館の主任学芸員の廣田 理紗さんのお三方で、終始賑やかな雰囲気で進められました。
終始和やかな雰囲気でお話をされていたのですが、特に印象的だった部分を紹介させていただきます。

「手芸本」は自分の活動の発表の場

なかなかこういう作家さんは少ないと思うのですが、濱田さんは手芸本を最近のご自身の創作活動の発表の場にされているそうです。
発想が大分ぶっとんでいるなと私自身感じたのですが、濱田さんのお父様が建築家、お母様が陶芸家という事で、芸術一家で育った濱田さんの頭の中が一般的な思考である訳がないと勝手に納得しました。

紙に書くと、見たことがあるものしか出てこない

デザインなどを考える時に、よくパソコン上で考えるのではなく、実際に手を動かして紙に描いて考えよ、と言いますが(その方がデザインをしない人でも意見を言いやすいというのもあり)
濱田さんは紙に書くと見た事があるものしか出てこないので、実験的にいきなり布を切って組み立てられているそうです。そうする事で見た事がないものを作れるから、おっしゃられていました。
これは確かにそうだなと思うところがあり、WEBなどのデザインにおいては、アートではないので見たことのあるものでも問題ない(分かりやすい例で言うと、アプリのUIデザインなどにおいては今世の中にないデザインにすると、使う人にとって操作方法が分かりずらかったりするので、よく使われているデザインで何の問題もない)ですが、作品としての造形物であれば、むしろ既存のものでない方が面白いので、なるほど納得という感じでした。

服を作る時は服を見ず、服ではないものを参考にしている

これもまた面白い、納得!と思った内容だったのですが、他の服を参考にしてしまうとそれに近いものを作ってしまうので、服ではないものを見るようにしている(例えば自然界にあるようなもの)とおっしゃっていました。
私もついつい参考物にひっぱられることが良くあるので、これは何の創作物においても効果的な手法だなと感じました。

原型から出発する日本の洋裁教育に疑問を感じている

これは洋裁を習った人にしか分からないと思うのですが、最初に肩、バスト、ウエストなどのサイズから作り出される「原型」というものを作り、そこからその原型を元にダーツ(平面の布を体にフィットするように布をつまむ部分)の位置を変更したり、肩の位置を少し落としたりといったような「原型操作」を行っていろんな服のパターンを作っていきます。
私も趣味で通っていた洋裁学校で最初に原型を作るところから教わったのですが、私はゆったりとした服が好きで体型に沿った服でなくても良いので私も原型というものに若干違和感を覚えていました。
トップス、ボトムスどちらも穴が3つあれば服として着れるので(もっと言えば、巻きつけ方式であれば穴がなくても布だけでも着ることが可能)、教育としての「服の作り方」の最初の入りとしては確かにもっとプリミティブなところから入るのも良いかもしれないと思いました。
(すぐに既製品のような服を作りたい!という人は別ですが...)

教育は教えないということも大事なのかなと思った

濱田さんはロンドンの大学でファッションを勉強されていたそうなのですが、結果何も習わなかったと感じたそうで、けれども教えないということも大事なのかなと思ったとおっしゃっていました。
そう感じたのは、授業でフードを作るとなった時に、ある程度服の作り方がわかっていた濱田さんはすぐにフードのパターンが浮かんだそうですが、他の生徒さんで、風船を膨らましてそれに布を巻きつけてフードの作り方を考えていた生徒さんがいたそうで、最初から「フードはこうやって作ります」と教えられていたらそういった実験的なことは生まれないし、もしかすると一般的なフード作り方以外にもっと素晴らしい作り方を発見するかもしれないので、自分で考えたり実験することは、確かに大事だなと思いました。
ようするにきっかけだけを与え、あとは考えさせる、というのも教育なのかなと私自身感じました。

漫画には一瞬だけときめく漫画と、人生について考えさせられる漫画の2種類あるが、自分はファッション界の考えさせられる存在でありたい

山田玲司のヤングサンデー」というYouTubeの番組があるそうなのですが、そこで山田玲司さんが、漫画には2種類あって、かっこいい男の子がたくさんでてきて主人公がモテまくるような一瞬だけときめく漫画と、人生について考えさせられる漫画がある、というようなことをおっしゃっていたそうなのですが、濱田さんはファッション界の後者でありたいとおっしゃっていました。
ファッションに置き換えると、前者は流行の服だったり、パーティに着ていく服だったりするのかなと思います。後者は「ファッション」の枠を超えてくると思うのですが、例えば環境問題について考えさせられたりするような服や、今回の濱田さんの展示で言えば、生活の中にあるかたちをモチーフにした服を展示し、モデルさんが着ることで、「そうか、服って一般的な形でなくても良いのだ」(→服以外のことにも言える)という事に気づかされるんだと思います。
そうやって自分の立ち位置的なものを意識しながら物作りをしていくと、一時の興味などにひっぱられず、ブレずに創作活動を行っていけそうだなと思いました。

以上、長くなりましたがトークの感想を述べさせていただきました。
今回のトークは本当に興味深いお話ばかりで、私のこれからの創作活動にきっと影響を与えるだろうと思う内容でしたので、モノ作りをされる方たちにもきっとためになる内容だと思い、noteで公開させていただきました。
なんらかのご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。

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