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HOME: Chapter01 たいようのひかり

青い空、白い雲、どこまでも続く草原。
 “ぼく” は日の出と共に目覚め、ようやく扱い慣れた農具を握り、土を耕して、その日の生活の足しにする。

 久し振りに太陽の光を目にした時、あまりの眩しさで視界と頭が真っ白になり、”ぼく” は死んだのだと錯覚してしまった。もうすぐここに来る ”きみ” も同じ気分になるのだろうか?などと思いながら、”ぼく” は土から掘り出したばかりのジャガイモを籠に入れる。

 ここは ”ぼく” と “きみ” のために用意された場所だ。ほんの少し間、“ぼく” と ”きみ” は生命を繋ぐためだけにここで生活し、その後はまた、”ぼく” と “きみ” が物心付く前から暮らし、愛を重ねてきた ”HOME” へと戻る。

 僅かな休憩の間、鍬を支えにして遠くを見ると、大きな樫の木が見えた。でも、それが何マイル先にあるかは、今の ”ぼく“ にはわからない。”HOME” と感覚がまるで違う。昨日、あの樫の木まで散歩をしてみたけれど、随分と歩いた気がする。自分の足を使って遠くに行くのは初めてだった。

 管理官に頼んで 、”ぼく” を先に出してもらって正解だった。ここは退屈なように見えて、刺激に満ちている。光、音、風、何もかも 。 でも、管理官が言うには ”ぼく” はその刺激に適応できているらしい。だから、この先二人で一緒に頑張っていけるように、”ぼく” はもう一度鍬を握る。土の匂いにはまだ慣れない。

 そうだった。あの樫の木の先で "ぼく" は花を見付けたんだ。図鑑で見たものより、少し小ぶりの花。”きみ” を迎えに行く時、それを花束にして持って行くよ。豪華なラッピングができないのが少し不粋かもしれない。そこだけはどうか許して欲しい。

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