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【掌小説】 夏休みとお墓参りとポップ

「三浦さん、店頭にアピールするポップがほしいですね」
「そうですね」
「具体的には、犬でもパンダでもコアラが、
 『0円安いですよ』って話す感じで」
「いんじゃないですか」
「じゃ、作ってください」
「え?、わたしですか」
「そうです」
「そこまで考えているなら長谷部さんがやればいいじゃないですか」
「こういうのを男性がやるとイラストの線がかわいくないんですよ」
「下手なのができたら店頭に貼られるの嫌ですよ」
「こういうのは作ったものをラミネート加工すると、
 なんでも立派になるんですよ」

「いつまでに作るんですか?」
「週末までにですね」
「いいですけど、長谷部さん、実は木曜日夏休みをとりたいんですけど」
「え?、三浦さんが休み取るってめずらしいですね、なぜですか?」
「実は、お墓参りに、、」
「お墓参りって、お盆は終わりましたよ」
「実は飼っていた猫の命日なんです」
「猫の、、命日?」
「そうなんです」
「え?、猫にお墓なんてあるんですか?」
「ありますよ、霊園に入れてもらってるんです」
「猫にお墓参りですか??、いいんじゃないですか」
「長谷部さん、笑ってます?」
「笑ってないですよ」
「笑ってるでしょ」
「いや、猫のお墓参りなんて、三浦さんらしくていいんじゃないですか」
「いいんですよ!、もう」

「まあそれで飼っていた猫のお墓参りに行くのですか」
「はい」
「死んだ猫って、でもどこにお墓があるんです?」
「霊園の猫専用のお墓に入れてもらってるんです」
「ふーん」
「長谷部さんは、猫とか飼ったことないんですか?」
「うちのお袋が猫とか犬とか大反対するんですよ、
 今考えると情が移って大変だからって知っていたんでしょうね」
「お母さんは猫とか飼っていたんですか?」
「うちのお袋は昔の農家出身ですからね、
 猫とか犬だけじゃなく、鶏とか耕作用の牛とか飼っていた世代です」
「じゃ、猫が死んだらどうするんですか?」
「神社かお寺に捨てますよ」
「え!?、ひどい」
「いや、うちの田舎では神社も寺も山の中にあって、
 神社や寺の山のどこかに穴を掘って埋めるってことですよ」
「そういうことなんですね」

「じゃ、今は猫がいなくて寂しいということですか」
「いや、新しい猫を飼っています」
「じゃ、今はその新しい猫を可愛がっているんですね」
「それが、その子は前の子と違って、、なんとなくかわいくないんですよ」
「前の猫と比較しないでください」
「うーん、でも、、前の子の方がいいんですよね」
「前の子のことばかり考えないでください、今の子もそう思ってます」



──もしもし
──はい、こちら販売店サポートセンターです
──北口店の長谷部です、外国のお客さんがいまして、
  そちらにひとり、英語が話せるオペレーターさんいましたよね?
──はい、在籍しています
──その人に代わってもらっても?

「長谷部さん、お待たせしました」
「ああ、三浦さん、もう終わりましたよ」
「お客さん帰っちゃったんですね、、」
「いや、契約はいただきました、ほら」
「え?、どうして?、長谷部さん英語喋れないじゃないですか?」
「実はぼくは話せるのですよ」

「ああ、それで長谷部さん、頼まれていたポップ完成しましたよ」
「お!、ありがとうございます」
「いいですよ、自信作です」
「うん、いいですよ、かわいいですけど、やっぱり猫なんですね」
「そうですよ、かわいいでしょ?」
「そうですね」

「あ、契約されたこの人、ポートランド出身なんですね」
「そうみたいですね」
「わたしの留学先もポートランドだったんです」
「そうなのですか」
「ポートランドって、ほんとうになにもないアメリカの田舎町なんですよ」
「それだとせっかく留学したのに、楽しさ半減ですね」
「楽しさ半減?」
「え?、アメリカに留学ってなにか楽しそうじゃないですか」
「そんなことはないですよ、
 うちの大学は英文科は三年生になると全員半年留学するんですけど、
 みんなで一緒に大学に行って、みんなで一緒にステイ先に帰って、
 その往復だけ、夜になったら『帰りたい、帰りたい』って泣くんですよ」
「え?、留学ってそんなものなのですか?」
「みんなそうでしたよ」
「でも、三年生になったら半年留学って、わかっているのですよね?」
「わかってない子もいましたけど、だいたいそうですね」
「そんなものですか?」
「そんなものですよ」
「ふーん、三浦さんも『帰りたい、帰りたい』って泣いていたのですね」
「いや、わたしは向こうの人と仲良くなって楽しかったですよ」
「そうですか」
「留学したんですから向こうの人と仲良くなりたいじゃないですか」
「そうですね」
「でもみんなそれができないんですよね、
 わたしはスイスの留学生とも仲良くなりました」
「そうですか」
「あ、、でもわたしも寂しくなる時もありました、日本に帰りたいって」
「あ、それはいいです」
「なんでですか!?」
「どうせ、この(ポップの)前の子に会いたかったとかそんなのでしょ?」



※ハンドメイド小冊子企画への寄稿?とバージョンを替えています。


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普段は会社員をしています。映画のコラムみたいなもの、素人小説などを書いてみます。

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自作のオリジナル小説です。 「令嬢コンセッタ」はエブリスタのコンテスト向きに書いた小説ですが、あまりにエブリスタがファンタジー過ぎるのでnoteに引越ししました。
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コメント6件

ポップもネコちゃんなんですね。ネコのお墓参りには、何を報告するのでしょうか。いつまでたっても忘れられないネコちゃんなんですね。
こんばんは(*´・ω・`)b
そうですね、忘れられないネコちゃんですか(_ _;)。。
わたしには、今の子(今の猫)が不憫で不憫で仕方がないです(_ _;)。。
ほんとですよ。今の子(今の猫)が不憫で仕方がないです(*´・ω・`)b
こんばんは。
はじめてコメントさせて頂きます。
小冊子企画に参加してくださり、本当にありがとうございます🍀

弛く和やかな登場人物たちの会話に、思わず頬が弛みます。(*´-`)✨
こんばんは、コメントありがとうございます。(*´・ω・`)b
楽しい会だったようでよかったですね。
こちらこそ参加させていただきありがとうございました(_ _;)。。
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