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映画『アイスと雨音』再再再上映

「あ、今日はアイスじゃなくてホットだな」

毎朝飲むコーヒーの温度で、季節の変わり目を感じた土曜日。下北沢トリウッドで映画『アイスと雨音』を鑑賞。

指でペペっとスマホ画面をタップするだけで
わたしの「今」を、わたしではない「誰か」にシェアできる時代に。

上映後の、生っぽく、ぐちゃぐちゃに湿った気持ちを少し寝かせてここに書く。

冒頭。
いきなりMOROHAの言葉に殴られる。
一瞬でスクリーンに引き込まれ
「え? あ、え?この人は演者というわけではないのか…??」疑問。不思議な気分。

【小さな町で演劇公演が予定されていた。】
というあらすじに習って稽古のシーン。
監督・脚本を担当されている松居大悟監督が、演じることを「板の上で生きる」と例える台詞が好きで、ラストまでしっかり心に留めておく。

74分ワンカット、「板」となる舞台の移動やMOROHAが唄う劇中歌、演者の表情・声・しぐさの切り替えで、劇中劇とその外側とを行ったり来たり。脳みそと心臓をぐるんぐるんに掻き回され、あれよあれよと劇中に引き込まれてしまう。

特に演者の皆さん、突然何かが憑依したように、一瞬で違う誰かに成り変わる様が、凄いというよりちょっと怖いくらい。スクリーンで観てるから、うん、余計に怖い。

【 しかし舞台は、突如中止になった。】
ここから一気に、劇中劇は歪み、サスペンス要素を挟みつつ全力疾走。

途中、「え?ありえないでしょ」と思うシーンも沢山あるけどそんなの気にならないくらい。

ぐいぐい・ぐいぐいと引っ張り回され、
気がついたらわたしの視点は、小雨降る下北沢の街を抜けて、本多劇場の座席にいる。
クライマックス。舞台の上で輝く若者たちと関係者各位の姿がまぶしい。

エンドロール、舞台挨拶が終わり、トリウッドの階段を降りる。下を向きつつ下北沢の駅に向かう。心にもやもやと黒い影が立ち込める。

「目の輝き」を基準に選ばれたという、若者達のあの、暴力的で生々しい輝きに、完全にえぐられてしまい逃げ場がない。

こんな気持ちになるのなら
こんな気持ちになる自意識と
向き合わなければ。

こんな思いまでして、観に行ってよかった。

「君が君で君だ」がすごく良かった、という話から「アイスと雨音」傑作だよ。と教えてくれた知人に感謝。

#映画 #movie #映画館 #アイスと雨音
#松居大悟監督


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