人生のサカ

人生には三つの坂がありますと、たしか高校の卒業式あたりで聞いた気がする。
「のぼりザカ」「くだりザカ」「まサカ」だそうで、上手いこと言うなと聞いていた記憶がある。
まさか、自分の人生に「まサカ」が到来するとは思ってもいなかった。
まぁ、長い人生何らかの形で誰しもに「まサカ」はやってくるんやろうけど、それは突然やってきた。
ある日、右手が痺れてた。
突然、気がつくと、痺れてた。
5分くらい正座した後の足の感じの、やんわりした痺れ。なんやろこれ、くらいの気持ちでいた。
仕事柄、病気などには少し敏感で、痺れは良くないなぁという意識は心のどこかにあった。でも自分ごとになると楽観的に考えたくなるもので、そのうち治るやろの精神で2〜3日過ごしていた。
ある夜、お酒を飲んで帰って来て小腹が空いたのでラーメンを作って食べた。その時、お箸が持ちにくい事に気がついた。
あれ、麺が掴みにくい、、、。
これは、明日の朝起きて痺れてたら、病院行った方が良いかもと、ほろ酔いの頭でも若干の危機感を覚えた。
よし、とりあえず寝よう。
現実逃避とはこう言うことを言うのだろう。
翌朝、痺れていた。
控えめに考えても昨日の倍ほど痺れていた。
よし、病院行こう。
近場の脳神経内科を調べて、タクシーを呼んだ。
嫁には、ちょっと手が痺れてるから一応病院行ってくるわとオブラートに包んだ言い方をして家を出た。
病院に着き、カクカクシカジカを伝える。
ひとまずMRIということで機械に入る。
結果を待ち、診察室へ。
ドクター曰く、脳には異常なしとの事。
でもまぁ、「それだけ痺れてるなら紹介状を書くので大きな病院に行ってください。」ということになった。
男の子は痩せ我慢をするもので、実はこの時右手はだいぶ痺れていた。脳に異常がないのは一安心だが、間髪入れずに、ほななんで?の気持ちが浮かび上がってくる。原因究明の一助となるであろう、オオキナ病院はなんとなく喜ばしかった。
お会計を待つため、待合室へ。
心なしか足がフラつく。
お会計に際し、財布を準備しようと鞄に手をかけると開けにくい。
嫁にオオキナ病院への送迎を頼むためiPhoneを取り出す。
もはやLINEも打つのが大変。
どんよりした不安が頭をかすめる。
お会計に呼ばれ、受付へ。
お金を出すのがギリギリ。
これはマズイ、、、。
程なく嫁が病院まで迎えに来てくれた。
車を近くのパーキングに停めているとの事。
男の子なので強がってみせる。
「一応、オオキナ病院で検査してやって〜。」
心配かけまいと平静を装うものの、どんどん歩きにくくなっていく。
この時、鬼滅はまだ読んでいないが全集中で歩いてパーキングに向かった。
車に乗り、嫁の運転でオオキナ病院へ。
土曜日なので救急の受付へ。
病院に着くいた後、少し安心してしまった事もありほぼ歩けない状態に。
「車椅子用意しましょうか?」の言葉に強がることもできず「あ、お願いします。」と答えていた。
車椅子がめちゃくちゃ楽だった。
土曜日という事で当直の先生が診察してくれた。
何科が専門なのかもわからない先生だが、こちらとしては頼るしかなく、なんらかの答えが欲しかった。
先生の答えは、「とりあえずこのまま入院しましょか。」だった。
それを聞いて、うん、その方がいいなと自分自身も思える状態だった。
かくして、「まさか」はやってきた。
大した前触れもなく、気付けばそこにやってきた。

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