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bitFlyerはSFDでどのくらい儲けているのか?

こんにちは、Hohetoです。

2020年2月12日未明から、bitFlyer Lightning FX(以下、FXBTCJPY)において、bitFlyer BTCJPY現物価格との乖離が5%以上に広がり、通称SFD相場が発生しました。

SFDの仕組みについては、こちらをご覧ください。

画像で引用させていただきますと、

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要は現物価格とFX価格があまりにも乖離するのを防ぐため、乖離が一定以上開いた場合は、乖離を拡げる方向の約定については手数料を徴収しますよ、逆に乖離を狭める方向の約定については手数料を付与しますよ、ということです。

ここで、徴収については新規注文時にも決済時にも行われるのですが、付与については新規注文時にしか行われないため、残りがbitFlyerの懐に入っているだろう!ということになります。

この記事では、この仕組みの良し悪しや取引所の運営費用をどのように賄うことが適切か?という議論は置いておいて、単純にbitFlyerの懐に落ちるお金を試算してみました。

SFDとボット開発者たちの関係

話は少し変わります。

FXBTCJPYには、botterと呼ばれるプログラム売買を行う参加者が多数存在します。
彼らはプログラムで自動的に売買を繰り返すことによって安定した利益を狙っているのですが、SFDの仕組みが導入されてからすぐに「SFD付与」を狙うbotterが激増しました。

例えば、現物BTC価格が1,000,000円とします。すると、5%乖離した価格は1,050,000円となります。
このとき、bFFXで1BTCを1,050,000円で売り(SFDとして2,625円付与される)、1,049,999円で買い抜けする(SFDを支払う必要なし)ことによって、1回の取引で2,626円の利益を一瞬にして得ることができます。

ここに目を付けた強botterたちが大挙して押し寄せ、100枚を超えるbitFlyer名物「SFD板」を形成することになったのでした…。

この壁付近では、SFDbot同士が札束で殴りあいながら(といっても数万円程度)、何も知らない参加者本当に取引が必要な参加者たちが入ってきた瞬間に、手数料を巻き上げるという行為が横行し、

結果としてSFDが発動している最中は出来高がぐっと減ってしまって「最終的に誰も得をしない制度」などと揶揄されているのですが、

ここで例外的に得をしている人がいるのでは?だから制度が無くならないのでは?
と言われたりしています。そう、それがbitFlyerの運営です。

bitFlyerはSFDで本当に儲かっているのか?

ここで本題です。

筆者もSFDbotを運用しているので、事情はよく分かっているのですが、ふと「bitFlyerって実はSFDでは大して儲かっていないんじゃないか?」と思うようになりました。

というのは、5%付近ではbotばかりが戦っており、彼らは基本的には「SFDを確実に付与してもらうために売りからしか入らない」のです(買いから入っても売り決済のときにSFDをもらえないので、当然です)。

なので、この5%付近のゾーンではbitFlyerの取り分はほとんどないのでは?とすると実は大して儲かっていないのでは?と思った次第でした。

ということで概算をしてみました。

概算の仕方

ざっくりと以下の方法で計算してみました。

1)BTCJPYとFXBTCJPYの約定履歴を元に、SFD徴収が行われた可能性が高い約定を全て調べる。
※厳密には付与判定に誤差があるようですが差し引きゼロとして考えます。

2)SFD価格+500円の範囲での約定については、botterが跋扈するエリアと考え、bitFlyer側の取り分はないものとする。
※500円という範囲は現物の平均スプレッド(図1.)からエイヤで決めています。この範囲は、現物の約定価格が動いたときにSFDbotが確実に追従してくる範囲とします。

3)SFD価格+500円以上での約定については、新規注文と決済注文の割合が半々と仮定する。この「決済注文」におけるSFDがbitFlyer側の取り分となる。

あとは、多少の誤差は差し引きされてねという寸法です。

BTCJPY_平均スプレッド

図1. 2020年2月12日のBTC/JPYの平均スプレッド推移

結果と考察(2/17 7:00加筆修正)

それでは、集計結果です。こちらは2020年2月12日の0時0分から23時59分59秒999におけるFXBTCJPYの約定履歴を集計したものです。

結果

表1. 2020年2月12日のFXBTCJPYにおける価格帯別約定数

思った通り、SFD板近辺の約定数(=B)がSFD発生約定数(=B+C)の半分以上を占めています。ここで(C)の約定の半分を決済注文として、bitFlyer側のSFD取り分を算出したところ、

bitFlyerの2020年2月12日におけるSFD取り分=17,480,183.77円
※約定価格×枚数×0.25%で計算

となりました。

当然(B)の価格帯の中でもbitFlyer側の取り分となるSFDは存在するのですが、それは(C)の中でSFDbotの取り分といい感じで相殺できるような気がしています。
それよりも、スプレッドが500円以上開いた場合でもSFDbotは間違いなく追従してくるので、実際のbitFlyerの取り分はもっと少ないかもしれません。
もろもろの誤差を鑑みて、1日当たり1000~2000万円程度がbitFlyerの収益になっているのでは、というのが筆者の最終的な考えです。

この金額を多いとみるか少ないとみるか?は経営的観点になるので正確な批評はできないのですが、筆者の感覚的にはかなり少ないな、と思いました。

参考までに、株式会社bitFlyerの営業収益は140億円超です。

第5期決算公告
営業収益 140億8,500万円
営業利益 53億3,500万円
経常利益 48億9,400万円
当期純利益 21億4,600万円
利益剰余金 117億9,500万円

1700万円という収益は、確かに絶対額としては大きいのですが、全体の営業収益に対してさほどインパクトを与えるものではありません。

デノミして考えるとイメージが付きやすいのですが、売上140億円に対する1700万円は、
・売上14億円の会社における170万円の収益
・売上1.4億円の会社における17万円の収益
と同じです。

「SFDはコストゼロの収益で濡れ手に粟だからそれでもおいしい」という話を出されるとそれは本当にその通りなのですが、bitFlyerの収益全体の利益率を見る限り、彼らにとっては「おいしすぎる」ということはないように思います。
それに、SFDは不定期に起こり、かつ収益額も全く安定しません。つまり、収益の柱にはなり得ないのです。

一方、SFDが発生すると確実に出来高が減り、競合他社でのトレードを開始するという参加者も出てきます(筆者のtwitterまわりの何人かも、この手のツイートをしていました)。ですので実際は「コストゼロ」なわけではありません。
ブランドイメージ的にもよくありませんし、下手をすると何らかの理由をつけて金融庁や消費者庁などにクレームを入れられかねません。

ですので、bitFlyerの中の人たちは「SFDが来たぜ!儲かるぜ!」という感覚は一切なく、「うわ~またSFDきちゃったよ、早く終わってくれ」というような考えを持っているのではないでしょうか。

それにも関わらず、bitFlyer運営が現行のSFDを継続している理由としては、制度移行のためのコストやリスクがネックとなっているのでは、と考えるのが自然なように思います。

SFDの代案としては乖離5%未満の定常相場においても緩やかに手数料をやり取りさせる、おなじみの「ファンディングレート」などが思いつきますが、これは当然これまで支払っていなかった手数料をユーザに負担させるものですので、そうなったらなったで一部の参加者からは不満があがるでしょう。
また、既存の仕組みをがらっと変えるシステム変更に対して、少なくないコストがかかるのは言うまでもありません。

結局のところ、bitFlyerの中では「そもそも滅多に発生しないし、それに比べると制度変更のインパクトが大きすぎるので、SFDが発生したときは嵐が早く過ぎ去るように祈りつつ、じっと待とう」ということになっているのでは?と思っています。

おわりに

本日(2/16)未明の下落により、乖離が縮小してSFD相場はいったん終了しました。
とはいえ、上述のようにSFDという制度はすぐには無くならないだろう、というのが筆者の現在の考えです。
ここ最近、BTC界隈は情勢不安や半減期といったファンダメンタルズにより、上昇基調の予測が根強いです。おそらく近いうちにSFD相場は再びやってくるでしょう。

ということで、あなたもSFDbotterとして消耗してみませんか?笑


今回の記事はおしまいです。次回をお楽しみに!
概算方法について何か気になった方は筆者twitter(@i_love_profit)までお願いします。

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