仮想通貨で始めるシステマチック_トレード3

第四章 日足のトレードで資産2倍を目指す(実践編)

はじめに

前章では、2本のEMAのクロスという単純なルールでトレードすれば、十分に利益を出せるであろうことをお伝えしました。

前回検証したトレードルールはこちらです。

①2本のEMAでトレンド判定を行い、その方向に毎日エントリーする。
②始値で1BTCのエントリーを行い、終値で決済する。

このルールでは、トレンドが継続した場合、数日間~数十日間の間、同じ方向にシグナルが出るということが当然あり得ます。
そんなときに、毎日決済して同じ方向に再度エントリーする、という運用は現実的ではありません。

そこで、シグナル継続中はそのままホールドを行い、シグナルが切り替わった時にドテンでエントリーする、というやり方にしたいと思います。

このようにすれば、前章の冒頭でご紹介した以下のルールに合致した運用となります。

①短期の移動平均は、5日間のEMA(指数平滑移動平均)
②長期の移動平均は、10日間のEMA
①が②を上向きにクロスしたとき、ロング
①が②を下向きにクロスしたとき、ショート


ドテン運用のシミュレーション

前回に引き続き、スプレッドシートを用意しました。

※こちらのスプレッドシートは、前回のスプレッドシートに加筆したものです。ファイル自体は別物になっています。

以下の5列を追加しています。

当日の資産残高(K列)
前日の残高と、前日の決済による損益を足し合わせた金額です。
当スプレッドシート内では、初期の残高を10,000ドルとしています。

エントリーの建値(L列)
エントリーした際(=前日フラグと当日フラグに変化があった場合)の価格です。エントリーが継続する場合(同方向のフラグが出た場合)、前日のものを引き継ぎます。

決済値(M列)
決済の際(つまり当日フラグと翌日フラグに変化があった場合)の価格です。

ロット(N列)
エントリーした際のロットです。当日の資産残高を、エントリー時の建値で割った数字です。エントリーが継続する場合、前日のものを引き継ぎます。

損益(O列)
決済が行われた際の、決済値から建値を引いたもの(ショートの場合はその逆)にロットを乗じた数字です。

前日と当日のフラグが同じ場合、ポジションチェンジや決済は行いません。
前日と当日のフラグが変化していたら、そのタイミングで決済を行います。決済値は前日終値となります。そして、同じ価格で逆方向に新規建てを行います(ドテン)。
この際、決済したポジションの建値と決済値の差額が損益となり、この積み重なりが資産曲線となります。
ドテンでエントリーする際、この損益を加えたものを残高とし、残高に応じてロットが変更されます(つまり、複利運用となります)。

資産曲線のグラフ

このルールで運用した際の資産残高の推移が、こちらのグラフです。

この数か月は日足で見ると概ねトレンドを形成していますので、良好な結果が得られています。

1月1日時点での初期残高:10,000ドル
6月15日時点での資産残高(含み益含まず):19,716ドル(運用開始時から197%)

フォワードテスト

上記のルールを、直近の2週間弱のデータ(検証を行った時点の立場から見ると、未来のデータ)に適用してみましょう。
スプレッドシートの168行目からが、フォワードテストの結果です。

168行目は運用開始という位置づけになりますので、値を以下のように再設定しました(スプレッドシート内の赤字の部分)。

・K列の資産残高を、10000
・L列の建値を、前日終値
・N列のロットを、当日の(資産残高/建値)

昨日までの12日間は、常にシグナルが-1を示し、典型的な下降トレンドとなりました。この下降トレンドは、皆さんも体感されていると思います。

フォワードテスト運用開始の6月16日の建値は6,631ドル。現在値は6,100ドル前後を行き来していますが、まだホールド中です。含み益は700ドル前後です。
次のシグナル転換までは、じっと見守ることにしましょう。

実運用の仕方

それでは、実際の運用方法を提案します。

今回のコンセプト通り、ボットは使用しません。
使うのは、Excelやスプレッドシートです。まずはこちらの「実運用」のスプレッドシートをご覧ください。

このスプレッドシートを更新していくのですが、このシート自体は閲覧専用になっています。

このスプレッドシートを、ご自身が使いやすいような環境にコピーし、編集できるようにしておいてください。ローカル環境のExcelでも構いませんし、出先でスマホから操作できるようにGoogleスプレッドシートでも大丈夫です。


まずは、運用を行う時刻を決めましょう。

バックテスト~フォワードテストでは、ヒストリカルデータを利用しましたので、終値は日本時間で午前9時のものを利用していました(GMTで午前0時)。
ですが、この時刻にこだわる必要はありません。

ご自身の生活に合わせて、一番作業のしやすい時刻を決めましょう。
人によっては、夜帰宅し、お風呂に入った後かもしれませんし、朝起きて学校や職場に行く前かもしれません。

時刻を決めたら、「必ず毎日その時刻」に、以下のことをやります。

1)BitMEXの現在値をチェックし、実運用のスプレッドシートのB列黄色枠の当日のところに記入します(6月29日の分はB20のセルに記入)。

このセルを入力すると、自動で「前日の終値・5日間EMA・10日間EMA」が計算され、当日のシグナルが出ます。
下の図は、B20セルに入力したときの例です。図中の赤枠の部分が自動計算された部分です(赤枠は説明のために僕が手動でつけました)。また、運用開始以前は、シグナルは手動で全部0にしておいてください(図中の緑枠の部分。緑枠も説明のために手動でつけました)。


2)シグナルを確認し、シグナルが前日と反転していれば、現在のポジションを決済し、代わりに現在の資産残高に応じてエントリーします。

シグナルが反転した場合、損益計算と残高計算が自動で行われます。エントリーする際は、この自動計算された残高の分だけエントリーしましょう。これで、得られた損益を再投資する「複利運用」となります。

これだけです。
発注をしない場合、作業はおそらく1分以内で完了します。発注を行う場合でも、5分あれば完了するでしょう。

この作業をひたむきに、まずは3か月繰り返します。

継続できる人と、継続できない人の違い

この単純作業を休まずに毎日行うことは、非常に難しいのです。この継続の難しさは、トレードで成功する難しさの半分くらいに匹敵すると思います。

逆に言うと、このような継続作業を地道に行える人は、成功の5合目までは間違いなく到達することができる、と僕は考えています。

この方法を継続できる人は、以下の2種類に分類されます。

①律儀に毎日の作業を継続してできる、忍耐強い人。
 (このタイプは、規律のあるトレードにとても向いています。)

②毎日の単純作業の繰り返しに疑問を持ち、自動化を実施する人。
 (毎日単純作業をしていると、当然この作業がたやすく自動化できることに気付きます。)

両方のタイプには、トレードで長期的に成功する資質が十分に備わっていると思います。その中でも、より成功の可能性が高いのは、やはり②に該当する方だと思います。
市場は常に変化します。だから、常日頃から新しい何かを取り入れ、自分自身も変化させる必要があるのです。

①のタイプの人の中には、新しいことや変化が苦手だ、とおっしゃる方がおられるかもしれません。そのような方には、ぜひ後述のProjectBBBさんのnoteを実践してみてください。
あなたの忍耐強さに変化への対応力がつけば、強力な武器になると思います。

ドローダウンの壁

実際に運用をすると、必ずドローダウンがやってきます。
ドローダウンとは、トレードルールがうまく機能しないとき、損失の総額が膨らみ、資金が凹むことです。

上述のトレードルールは、トレンドが確認できないようなレンジ相場では何度もダマシに引っかかり、損失が膨らむという性質を持っています。
どの相場でも利益を上げることのできる完璧なシステムなど、存在しないのです。

それではどうするか?

ドローダウンに立ち向かうために、まずしなければならないのは「覚悟」です。「トレードで運用する資金は、ゼロになる可能性がある」と強く強く認識しておきましょう。

あなたがやろうとしていることは、短期間で自分の資産を2倍にするというチャレンジです。そして、その目標を達成するためには、取引市場に参加している別の誰かの資金を奪うしかないのです。相手側も同じことを考えているため、あなたの資金も奪われるかもしれません。

ドローダウンが発生したとき、資金減少の覚悟ができていなければ、必ず途中で運用をストップする羽目になります。
それはつまり、「始める前から負けが確定している」ということなのです。

大切なことなのでもう一度書きます。「運用する資金がゼロになるかもしれないという覚悟を持っていなければ」、「あなたは100%負けます」。
そういうものなのです。資金を減らすのが嫌なら、仮想通貨のトレードには手を出さないようにしましょう。

シグナル検出の自動化について

ProjectBBBさんが、このマガジンで紹介したルールのシグナルを自動検出する仕組みの作り方を解説してくれています。

自動検出には、TradingViewを使用しています。TradingViewとは、トレーダーたちの間でよく使われる、チャートソフトとSNSが融合したようなサービスです。

自動化を目指す人に、まず参考にしてほしいnoteです。確認しましたが、現時点ではおかしなアドレスに送金するようなプログラムは含まれておりません笑。

これまでにできなかったことが、一つ一つできるようになる。これが、成功への地道な第一歩のように思います。ぜひチャレンジしてみてください。

有料ボットについての私見

前章を公開以降、いくつか似たような内容の記事を見かけました。
noteやそれ以外のところでも、本マガジンで紹介したルールを搭載した有料or無料のボットが出てくるかもしれません。

2本のEMAによってトレンド判定する方法について、僕の権利を主張するつもりはありません。が、ボット購入を検討している人に、1つだけアドバイスしたいと思います。

ボットを購入する理由をよく考えてください。それが、「ボットによる利益のため」であれば、購入すべきではないでしょう。「ボットがたくさんの利益をもたらしてくれる」というのは幻想です。

結局のところ、自分の実力で稼ぐしかないのです。ボットを購入してしまうと、せっかくの実力をつける機会が失われてしまいます。
本ルールを採用したボットを制作することは、ちょうどよい難易度の課題となりますので、購入するのではなく、自作にチャレンジしましょう。


次回はフォワードテストの状況確認、運用時のトレード記録の重要性、コスト分析、などについて書こうと思います。
それではお楽しみに。

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