ドラゴン目黒仮

1:起床

「おはよう」

 少女の声が家の中に静かに響く。少女の暮らす家はとても小さく、小屋と言った方が正しいように感じられるサイズだった。けれど、少女が一人で暮らすには十分な広さではあった。そう、一人で暮らすには……。

 少女の家は村から離れた森の中にポツンと一つだけ建っていた。もちろん周りに住人は誰もいない。

 ベットから出て少女は朝の支度を始める。まず、近くを流れる川に水を汲みに行く。朝日を浴びながらバケツを抱えて川へ向かう。朝日を浴びたことと、体を動かすことで体温が徐々に上がっていくのを少女は感じていた。

「いい天気ね」と少女が呟きながら軽く微笑んだ。優しい朝日が少女を照らす。

 水を汲み終えて家に引き返す少女。汲んできた水を使い顔を洗い、軽く体を拭き、乱れた髪を整える。

 台所の火をおこし朝食の準備に入る。フライパンを温めながら、棚から卵を一つにベーコンを一切れ取り温まったフライパンの上に卵とベーコンを投入する。

「ジュ~~~!」と音を立てながらゆっくり卵とベーコンを焼いていく。家の中に朝食の匂いが広がっていく。焼きあがった卵とベーコンに塩などを少しだけ振り掛けて味を調える。お皿に移しフォークやナイフと共に丸い形の小さなテーブルへと運んで置く。

 一度台所へ引き返し、飲み物に牛乳を一杯だけ準備する。そして、先ほどとは別の棚から小さなパンを一つ取る。牛乳とパンを手に再びテーブルへ。

 朝食の準備を終えて二つだけある椅子の片方を引いて席に着く。向かいの椅子には誰もいない。

 少女が手を合わせ軽く祈りを捧げる。祈りが終わり……。

「いただきます」

 少女は朝食を食べる始める。

 家の中には「カチャ!カチャ!」という食事の音だけが静かに響いていた。

読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。