独裁者 小学校編 9話(最終話)

これまでの独裁者

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教室は静寂につつまれていた。

現在、教室では学級裁判が開かれていたからだ。

教室の前には今回のいじめに関与したと思われる被疑者たちが前に並んでいる。

主犯の鬼頭を真ん中に池田と陣内が両隣に立っている形だ。担任の京子先生に促がされ「国本くんにしたいじめについて謝罪しなさい‼」と言われているが鬼頭はそれを認めず「何か証拠でもあるんですか?」の一点張りでまったく話が進まない。

 「最低だ‼」

正義は鬼頭や先生の様子をうかがいながら心の中で呟いた!

 「一番退屈な方法で決着がつきそうだな……クソ!」

制覇の席に目線をやる。黙って何も言わず下を向いてピクリとも動かない。頭には昨日の怪我を治療した後なのだろう、大きな絆創膏が張り付いていた。

正義は失望していた。まさか自分が思い描いていた中でも一番つまらない方法で制覇に対するいじめ問題が決着しそうなことに。久しく忘れていたあの感情が正義の頭の中に広がりつつあった。

 「退屈だ!退屈だ‼退屈だ‼‼‼」

しかし、正義は気づいていなかった。無意識に自分の中にある不安をかき消そうとしていることに……。頭の隅ではまだ昨日の制覇の言葉が繰り返されていた。

「明日で終わりだ」。

正義の中でまだ恐怖が残っていた。そして頭の隅で無意識に考えていた。

「退屈でいいからこのまま終わったくれ」と。

頭の隅で願っていたのだ。

あんなに嫌っていた退屈を願っていたのだ!

しかし、正義にはわかっていた。

このまま終わるわけがない……。

あの小さな独裁者がこのまま終わらせるわけがないことを……。

正義は心の中で唱え続けた。

 「退屈だ!退屈だ‼退屈だ‼‼‼」

あんなに嫌っていた退屈にすがる様にして祈っていた。

 「退屈だ!退屈だ‼退屈だ‼‼‼」

退屈のまま終わることを祈っていた……。

 国本制覇は小さな独裁者である。独裁者の辞書に「希望」の文字は無い‼

 国本制覇は小さな独裁者である。

 独裁者である‼


 「いいから!謝りなさい‼」

京子先生の声が教室に響く。

 「だから証拠もないのに何で僕たちがやったことになるんですか?」

何度も繰り返したセリフを鬼頭がまた繰り返す。

 「国本くんから話を聞きました。あなたたちがやったって!」

 「国本が嘘をついてるかもしれないじゃないですか!そんなの証拠にならないですよw!」

京子先生の怒りはピークに達していた。ここまで怒った京子先生を見たことが無い生徒たちはあまりの恐怖に石のように固まっていた。

そしてついに京子先生の怒りが爆発した‼

 「いいから!謝れって言ってるでしょ‼‼‼」

京子先生の怒りの爆発に驚いた鬼頭は反論することを忘れて黙り込む。

教室がまた静寂に包まれようとしたその時……事件が起きた‼

「㎞祖‼*/-*+‼=t4k‼じゃ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」

爆音が教室に響き渡った‼

「きゃーーー!」女子たちの悲鳴。「何だコレ!!」男子たちのうめき声。耳を塞ぐ生徒たち。

正義は耳を塞ぎながらも何が起きたのかを確認しようした。窓から他の教室の様子を確認する。耳を塞ぐ生徒がいる。どうやら学校中でこの音がなっているようだ!学校の放送機器か‼廊下をみると男性教諭たちが走っていた。放送室へ向かっているようだ。そして自然と目線が教室の前に向けられた時に気付く京子先生と鬼頭たちが固まっていることに……。違う!正確に‼

 耳を塞がず固まっていることに気が付いた‼

恐る恐る耳を塞ぐ手を緩めていく。爆音にも慣れてきたのか雑音に思えた音の中に声が混じっていることに気付く。

 「ーW9じおあJここに捨てちまおうぜ‼‼‼もっと分かりにく場所zジェイふh‼‼‼」「zじぇf0何が将来の夢は世界征服ですだ‼だったら少しぐらいやり返してみろってんだw!!こあk9えーう8‼‼‼」「ー、宇ア84くっせーゴミ箱から教科書拾ってるよw‼‼臭くて勉強になんねprぎうh-お0あ‼‼‼」「@p¥-04tラクガキも書くことなくなってきたなw‼‼ホントにホントにw‼ー^おち94うl‼‼‼」「;あ、えpk9いー国本君いますか~~?って入ったところ見てから知ってるんだけどねw!世界征服される前にクソと一緒に流してやるよw!そら‼ガン‼‼ばしゃーーん‼はは!汚物は水で流さないとなw!ははは‼あー^。おt9m4うt8う‼‼‼‼」

ほとんどの生徒が爆音の正体に気が付いたのだろう。皆塞いでいた手をどけて音を聞き取っていた。

そこにはいじめを行う瞬間の「鬼頭たちの声」が流れていた。

正義は悔しさで震えていた。音(声)の正体に気が付くと同時にもう一つあることに気が付いたからだ。「利用された!制覇に利用されたんだ‼このために放送委員になったんだ‼クソ‼クソ‼‼クソ‼‼‼」正義の体は悔しさに震えていた。

そしてようやく放送が止まった。

誰も何もしゃべらなかった。呼吸の音すら聞こえないほどの無音。鬼頭たちは下を向いたまま固まっていた。そして京子先生も固まっていた。

京子先生の顔色を読もうとする正義だったが読み取れなかった。京子先生の顔は視界に入ってのだが何を考えているのかは読み取れない。怒りが充満しすぎて顔が黒く見えた。暗闇からはただ怒りしか読み取れなかった。

 「オマエガやったンだろ――――――‼‼‼」

京子先生が奇声を発して鬼頭に襲いかかった!いや、京子先生の皮をかぶった怒りが鬼頭に襲いかかった‼

その勢いのまま京子先生と鬼頭は教室の地面に倒れ込んだ‼

教室はパニックに陥った‼池田と陣内は鬼頭を見捨てて真っ先に教室から逃げ出した。それに続いて生徒たちが雪崩の様に我先にと逃げ出していく。「助けて‼」「きゃー‼」と叫びながら教室から出ていく。

 「誰かた、助けて‼」

助けを求めて地面を這う鬼頭だが逃げられるわけもなく。京子先生が鬼頭の上に馬乗りになった。そしてついに鬼頭の首に手を掛け始めた‼鬼頭の首が絞まっていった……。

 「ごめんなさい……。た、た、たすけ…………」

 「京子先生‼ダメだーーーーー‼‼‼」

正義が京子先生に体当たりをして、鬼頭と京子先生を強制的に離した‼

 少し冷静さを取り戻した京子先生が自分の手を無言で見つめそして「いや、いや、いや~~~~~~‼‼‼」悲鳴を上げてうずくまってしまった。小さくなって、声にならない声を発している。

正義は鬼頭の様子を確認する。気を失っているが呼吸はしてるようだった。

正義はゆっくりと立ち上がった。

そして声を張り上げて教室にの残っていた小さな独裁者を睨み付けた‼

 「制覇ーーーーー‼‼‼‼‼‼‼」

教室にはもう誰も残っていいなかった。地面に倒れる二人と正義と制覇だけだった。制覇は教室の真ん中に立っていた。

そしていつものように笑っていた。クスクスと笑っていた‼

 それを見て正義は制覇めがけて走っていた。そして制覇の胸ぐらをがっしり掴んで叫んでいた‼

 「何でこんなことした‼何でこんなことしたんだ‼‼‼」

それでも制覇は笑いを止めずに笑い続ける。クスクスと………。

 「お前ならもっと違う方法で解決できたはずだ‼そうだろ‼」

制覇の笑いが強まった‼クスクス、クスクスと!

 「笑うな‼質問に答えろ‼‼」

ようやく制覇が話し出す。

 「違う方法?違うよ‼違う‼正義!僕がこの方法を選んだからこうなっているんだよ‼違う方法なんて考えてなかったんだ」

 「どうしてこんなことを……」

 「何を言ってるんだい、正義?あんなに二人で話し合っただろ?『支配』だよw!僕がその女(京子先生)を支配して……いや、その女だけじゃないそいつ(鬼頭)もクラスの奴らもそして君(正義)も支配してこの場所、この瞬間を作り上げたんだよ‼」

正義は制覇から手を放した。

 「そんな……なんで……」

 「言っただろ最初にw!僕の夢は世界征服だって!そのための第一歩だよ!」

 「世界征服なんてそんな……冗談……」

 ボリュームを上げて制覇が反論してくる‼

 「冗談なんかじゃない‼僕は本気だよ‼僕は嘘が大っ嫌いなんだ‼やると言ったらやる‼これは絶対だ‼‼」

 そして制覇が語りだす‼

 「今の時代、皆どこかで感じているはずだよ!不安を……ね。いつか世界が壊れるんじゃないかってね。そしてそのいつかが近づいてきてることに気付いているはずなんだ‼わかるだろ?日にちが変われば別のところで事件が起きる!チャンネルを変えれば違う政治家が頭を下げている‼ミサイルが飛んできたことをしらせるアラームが鳴り響く‼分かっているはずだ‼気づいてるはすだ‼世界の終りが近いんじゃないかってどこかで気が付いてるはずなんだ……‼」

 「けど人って馬鹿だからw!しっかり終わらせないと駄目なんだよ‼徹底的に微塵の躊躇もあったらダメなんだ!一度完璧に終わらせるべきなんだよ!このくだらない世界をね‼」

 「大丈夫!僕が終わらせる‼完璧に終わらせる‼」

 「必ず世界を征服するよ!」

正義は何も言い返せなかった。

ただただそこに立っていることしか出来なかった。

恐怖が正義を支配していた……。

 「やっぱり正義は面白いね!僕と君はとてもよく似てるよ!」

正義が勇気を出して反論する。

 「似てなんかいない‼」

 「似てるよ‼正義もそう感じているはずだ‼けど、肝心な部分が少しずれているんだよ!だから、とてもよく似ているけどまったく違うともいえる。まるで数字の0と1だね。一番近いけど、一番遠い存在だw!」

 「お前なんかと一緒にするな‼」

 「一緒だよ‼だってほら!今ここに立ってるじゃないか‼皆が逃げ出したこの教室のこの真ん中に僕と一緒に立っている‼一緒だよ‼」

 「違う!全然違う!」

正義は否定した。何の根拠もない否定を続けた。もはや駄々をこねる子供のように……ただただ否定した。

 「一緒だよ!」

 「違う!」

 「一緒さ‼」

 「違う‼」

 クスクス、クスクス……。

 「一緒だよw‼」

 「違う!違う‼笑うな‼お前とオレが一緒のはずがない‼」

 「一緒だよw‼正義、だって君!今、笑っているよ‼」

 「え?」

慌てて自分の顔に手を当てる正義。

そこには確かに笑顔を作った自分の顔があった。

「はは……?」

正義は乾いた笑い声を漏らしていた。

日向正義は国本制覇に支配された。

こうして僕たちのクラスは崩壊した。

国本制覇と言う名の小さな独裁者によって完璧に崩壊した。

僕たちのクラスは暗闇に覆われた……。


「黒い太陽が日本を照らす」



独裁者 小学校編 完


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独裁者

小説「独裁者」のまとめ
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