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「往生際の意味を知れ!」は めっちゃささるぅ。

 本屋に行って気になったマンガの1巻だけを買って、面白かったら次を買うということをよくやるのだが、今日買った「往生際の意味を知れ」は久々の大ヒット!

 一巻を買って近くのココイチで夏カレーを食べながら読み、(残念ながらお気に入りのスープカレーはなくなってしまったらしい)帰りに2~4巻までも買っていこうと決意した。

 そして家についてゆっくりと4巻まで読み終わったところで、5巻が5月30日に発売開始したことを知った。急ぎ、再びツタヤに向かって5巻を買いに行ったのだ。いやいや最初から5巻まで買えよと思うだろうが、5巻だけ新刊コーナーにあったから気づかなかったんだよねぇ。

 これあの伝説の漫画「アクタージュ」以来の経験だ。

 アクタージュも最初一巻だけ買って、ココイチで読みながらその帰りに既刊ををすべて買っていこうと決意したマンガである。

 ツタヤの店員は定期的に一日に何度も訪れてマンガを買っていくおじさんだと思っただろうなあ。(それにしてもアクタージュはなんとか続編を書けないもんかなあ)

どんな作品?

 サスペンス要素が強い作品のように思われて、そこにばっかりフィーチャーされているようだが、しっかりとラブコメである。そして、このシチュエーションは一部の男にきっちり刺さるであろう。

 主人公市松君は、大学生時代に日下部日和(ひより)とほんのわずかな期間だけ交際(チューもセックスもなし)するのだが、ある日突然別れを告げられ、その日以来二度と連絡が取れなくなる。

 主人公は、大学生時代のその思い出だけを胸に生きてきて、その後7年間新たな彼女を作ることもなく、生きる気力もなくなったところで自殺を図ろうとした瞬間、その日和から突然連絡が来るというのが物語の初めである。

 別にもてない男のお話というわけはない、主人公は高スペック男子なので本気ならば女に困ることはない、ただ前カノの思い出に生きているため、ほかの女で燃えないというだけなのだ。

 で、この日和ちゃんは久々に電話をして何かを言うのかといえば、市松君の精子がほしいというのである。ここはまさにキャッチーな部分で、表紙帯にも書かれているのだが、この漫画の面白いところはそんなキャッチーな部分ではなく、振り回される主人公の心情なのである。

 ほかにもセンセーショナルな設定はたくさんあって、例えばこの漫画はおそらく実在する漫画家の西原理恵子の逸話をモチーフに書かれていて、これは西原理恵子に訴えられないだろうかと心配になるほどだが、はっきり言ってそこもどうでもいい。

 見事な振り回され方をする主人公を楽しむ物語なのである。日和ちゃんの振り回しっぷりが本当にお見事で、主人公は途中で思わず「くそ女」と叫んでしまうのだが、いやあ本当に見事なくそ女なのである。

 くそ女なんだが、非常に魅力的なのが俺にはめちゃくちゃ伝わってきた。くそ女とは言うものの、日和ちゃんを攻めきれない部分っていうのが結構あって、大概は主人公が思いが強すぎるあまり暴走してしまう結果であって、自らの青春時代を思い出すようで本当にむずがゆくなるのだが、だがそれがいいのだ。

 さらに「くそ女」といったって日和ちゃんは別にビッチなわけでもないのだ。彼女自身本当に主人公が好きなのだが、不器用すぎて変な感じになっているのだけだ、というのが見て取れる。そこがいいのだが、とはいえ、それが、かえってたちの悪さを際立たせているとも俺は思う。

サスペンスの皮をかぶったただのラブコメ

 というラブコメなのだが、これを決してラブコメ主体で進めてるのではなくサスペンスとして書いているのが、本当によくできている点だと思う。ただのラブコメなら見向きもしないのだが、サスペンス仕立てにすることでストーリーが好きだけど、ラブコメなんか読みたくないというおじさんにも見事に刺さる感じになっている。

 だがこのラブコメはおそらく半数以上の男には気持ちがわからないかもしれない。このシチュエーションを好んでいる奴が多いとは思えないからだ、だから主人公にも日和ちゃんにも共感できず気持ち悪いという人も多いだろう。

 だが俺には刺さる、なぜなら俺は常に振り回されながら生きてきたからである。主人公の気持ちが痛いほどわかって、あぁ誰かにこの作品を話したい、そんな気持ちでいっぱいである。

 振り回され作品といえば西尾維新作品は振り回されの代表だと思うが、彼の作品が好きなら、この作品も絶対に刺さるであろう。そういえば、俺が趣味で書いてる小説の主人公も全員振り回され属性である。まあ自分の属性にない作品って書けないしね。

で、五巻がほんとによかった

 4巻くらいのところでよくわからない話になるのだが、(サスペンスの部分の書き方が少々わかりづらく、また状況設定に無理があり過ぎるせいだと思う)5巻が本当にいい。

 5巻で一度二人は別れるのだが、そして主人公は振り回され人生を終えて幸せな人生を歩もうとするのだが、そこはもうお察しの通りなのである。

 くそ女はすごいタイミングでまた現れるのである。

 うひゃー、これから先どうやってもっていくんじゃ―?どうあっても主人公幸せにならなそうなんだけど、読み物としてめっちゃ面白いわ。不倫ものの作品がすきな女ってこんな感情なのかもしれんなあ。

 というわけでネタバレせずに「往生際の意味をしれ!」のレビューでした。これはたぶん近いうちにドラマ化されるんじゃないかな、かなり面白い作品です。テーマとしては「破滅を望む人間の感情」とか、「遺伝による繰り返し」なんてのも含まれていると思うので、いろんな読み取り方ができる作品だと思います。

 今年はタコピーの原罪が話題になったけど、こっちも話題なりそうですね。なんか、アメトークでキリンの川島が絶賛してたそうです。

あ忘れてた。

絵について

 この作品のポイントのもう一つが絵柄ですね。嫌いな人も多そうですが、日和ちゃんが美少女過ぎないっていうのがいいです、もちろんきれいなんだけど、万人が好きって感じではつくられてない造形なんです。 

 主人公はひたすらかわいい、かわいいっていうんだけど、それを言ってるのは主人公だけで、ほかの人物は言及してないのがまた少し怖い。

 実際日和ちゃんは作品中目を見開いてることが少なくて、目を細めて笑ってるシーンが多くて不気味なんですよね。

 そして目を見開いてるシーンがたまにあったかと思えば、そこは最大限にサスペンスなシーンだったりします。

 そしてあとHなシーンがいいですね、Hなシーンを直接は書いてないのに、この作品はとっても扇情的でHです。性器は一切出てきません、ですがとてもいやらしい気持ちになれる作品です。つまり課長島耕作と真逆ですね、あっちはHなシーンがガンガン出てくるのに、ちっともいやらしくないし、Hな気分になりません。そういえば島耕作には主人公の気持ちは1mmも理解できないだろうなあ。同じ東大卒なのに……

 そういえば島耕作は相談役も引退するそうです。次は何編が始まるんでしょうね。終活島耕作かな?

 



 

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