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“あの頃よりはマシ”の、“あの頃”を生きてる自分へ。


人間というのは都合の良い生き物で、一度辛い時期を経験すると、その後はまるで他人事のように「あの頃よりはマシ」なんて思うようになるものです。少し前までの私は「むしろ仕事でそんなに辛い思いをする必要があるのか。しなくて済むならしない方が良いに決まってる」と思っていました。でも最近になって、あの頃の自分、つまり社会人1年目のあなたに、どれだけ支えられているかがわかってきたんです。


 
1社目の仕事は、人材系の広告制作。大学を卒業して、「まあ、いけんだろ」で入社した私。いやー、全っ然いけなかったねえ。「要領が良く、理論的で、泥臭い努力もできる。数字意識もある。何より競争意欲が高い」……だっけ、自己分析で書いたこと。会社に入ってあぶり出されたのは、真逆の自分だったね。やってもやっても怒られて。気をつけても気をつけてもミスをして。毎日必死に取材に駆けずり回って、会社に戻ってから広告を作って、家に帰ってからも作って、床で寝落ちして、始発で出社して。そんな日々の繰り返し。都心に通勤してるのに、電車はいつも空いていた。
 
お客様にもたくさん怒られた。当時のクライアント名はほとんど覚えてるし、特に迷惑をかけてしまったクライアントはこの先も忘れないと思う。迷惑かけてる最中は、正直、一刻も早く忘れたいって思ってるよね。でも不思議なことに今は、「叶うなら、何らかの形で挽回したい。今ならちゃんと役に立てるかもしれない」とすら思えるんだ。
 
どうせ自分だから包み隠さず話すけど、「死にたい」と思うこととか、死に方を考えたり調べたりしたこととかも、一度や二度じゃなかった。足のつかないプールで、ずっと必死に水面から口だけ出して、もがいて、生きながらえている感覚。やっと足がつくようになったと思ったら、水を追加される。それならいっそ、呼吸を諦めてしまおうかと、何度も思った。この苦しみがずっと続いていくのかと考えると絶望だったなあ。
 
結論から言うと、その苦しみは割とすぐ終わります。なぜなら、あなたは2年目で会社を辞めるので。笑
 
辞めてしばらくは、「あの会社にいた意味、あったのかな」って考えることも正直あった。というか、1年目の私よ。あなたは「ぶっちゃけ就職先間違えたかも」って思ってるはずです。でもね、今なら胸を張って言える。その会社に入って大正解です。たとえ体を壊しかけても、涙が止まらなくなっても、文句なしの大正解。
 
話は変わるけど、1社目を辞めた後の私は、いろいろあって、憧れの会社に入ることができて、編集者・ライターになります。尊敬する人たちに取材をして、企業からバイネームでお仕事をいただいて、ああそうだ、音楽ライターの仕事もしてるよ。あとね、こないだはYahoo!ニュース特集でインタビュー記事を書いたんだ。
 
すごい展開でしょう。なんなら私が1番びっくりしてる。でも、これは決して逆転劇なんかじゃない。それこそ社会人1年目の私から、実に順調に続いているごく普通の物語なんです。なぜなら今の会社に入ってから担当した案件を思い返すと、全部、社会人1年目で学んだことに助けられてるから。
 
取材の準備は丁寧にやること。
何に代えても〆切は厳守すること。
お客様の前では、堂々としていること。
わからないことはきちんと確認すること。
できないことは「できない」と伝えること。
制作チームから信頼を得られるよう努めること。
自分のペースではなく、みんなのペースで進めること。
取材で心を開いてもらうには、まずこちらが心を開くこと。
ミスをしたときは第一に謝罪、そして迅速に対応を考えること。
 
そして、絶対に、誰の心も体も壊させないこと。
 
全部、あなたが今いる会社で学んだことです。 
自分の決断が正解だったかどうかは、周りの人間ではなく、未来の自分が決めることだと思っています。この文章を書いている今の私は、ようやくあの会社を辞めたことだけじゃなく、あの会社に入ったことも正解にできました。社会人1年目の、あなたのおかげで。

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