異世界探報期:転天

見上げたアニメ化が魔改造だろうと
掲げたやりたいは砕けない

あっぱらぱななろうとクレバーな百合
水と油が一つになって

なって…

ならなかったと思いました。完。

概要

なろうと百合、今をトキめく(?)二つのジャンルが合体した結果マリアージュ…を奏でられなかったのが当作だと考えている。

なろう要素としては、主人公が転生者である(なくてもそこまで困らない)ことや冒険者要素などの主人公に盛られた属性である。なろうが標榜している徹底したバリアフリー的展開は鳴りを潜めており、作者の趣味的なものが各所に散見される程度に留まっている。

「これは製作者の趣味であり実用的ではありません!」とは作中のセリフであるがだいたいそのままこの作品にも言える気がする。その象徴ともいえる要素は主人公の性格なのだが、これは少々経緯が複雑なので後で詳しき説明する。

百合のロジックそのものはかなりクレバー、要所を抑えていると感じた。これも後述。

破天荒でうつけもの!

作者のやりたい主人公はこんな感じ、でも主人公はこうしなきゃいけなかったんだ~とか、深い考えがあってのことなんだ~との弁明は作者によって多々なされているらしいがその納得感をアニメから得るのはかなり難しい。

隙あらばネットスラングを多用し、空気を読まず、自身の趣向を優先させる奇異な言動の防御力の低さを補いきれなかった印象。主人公が完璧に立ち回れというわけではないのだが、浮いたムーブが起こす共感値の低下をフォローする動きが十分に供給されなかった印象。しかもよくしゃべる奇天烈ガ〇〇という部分をアニメの脚本が広げてネットスラング癖が追加されて余計な文脈を追加している点はちょっとだけ可哀そうである。

傾くなら傾くなりの態度が必要だったと思う。立ち回りが完璧でないことのツケは最後のほうで回ってくるのだが、共感値が稼げないのは非常に惜しい。下手に肯定してもなろうみがあがるのでやっぱ相性悪くないすか?

百合はまとも

メインとなるキャラクターが足りない部分を補完しあい、シーンにおけるイニシアチブが柔軟に変化できる。その関係性は作品の展開によって何重にもがんじがらめにされる…と勘所をちゃんと抑えている。最終形を意識してしっかりと前振りを行うなどここに関しては非常にクレバーである。主人公こそ感情移入しにくい〇〇〇なのだが、もう一人のまともな方は境遇や感情の変遷などは非常に丁寧に描写されている。このアニメは如何に主人公を周辺視においやりつつ、周りを見るかにかかっている。

少しわき道にそれるともっと良くなるんじゃ…と思わずにはいられない悲しさよ。

弟君

転生者に追いやられてしまうタイプのキャラ。根がまともだが転生者のギフテッドに苛まれくるってしまう悲しきモンスター。こいつが貴族の陰謀に利用され、放逐されてしまうことが作中の重大なイベントとして展開される。

主人公がやりたい放題するからケツ拭く羽目になってんだろがい!でもお前のせいで比較され認められない!お前にだけは文句言われる筋合いない!(意訳)

大佐の共感値が…吸われる…!(NNI)

ある程度意図された展開ではあるし、結局主人公に自分の過去の行いが返ってくる展開ではあるのだが、狂ったのも昔は仲が良かったのも騒動が始まってからの後出しなので話の都合のために踊らされた感が否めない。ただでさえ主人公に振り回されるまともな大人に吸われがちだった共感値がここで一気に弟君に流れ込んでしまう構図が生じる。ノイジーだね。

ラスト3話

今後の方針を巡って対立する2人。いままでゆるふわだった関係が対立によって固い信頼関係に変化するとか、控えめと押せ押せが逆転するとか、お互いに本音を打ち明けるとか…ちゃんと百合をしている。

今まで○○○だった主人公は一気に塩らしくなり、その重責などに耐えられないけど自分がやらなきゃいけないという話が出てくる。ここで共感値がもう少しあれば、それまでは上手く逃げようとしていたところまで含めて感情移入を強めたり浮ついた態度とのギャップに良さを感じられるのだが…でも足りないんだよなあ…ちょっと勿体無い

一つ勿体なく感じたのはぶつけ合われる意見は相手を犠牲にしたくないから自分が…というもので、それをぶつけ合わせるのは悪くないのだがそれは決闘で呆気なく終わってしまう。とにかくここがあっさりしている。バトルを真面目にやる必要はないがレスバはもっとガッツリしておくべきである。

意見の内容は主語の違いくらいしかないので、ここは相手に対する自分の気持ちとかを載せてガッツリやった方が良いんじゃないだろうか。何のために決闘までしたんだよ。

矢印の内容

主人公がヒロインに向けている矢印は見た目や能力主義などで装飾されているが、基本的には自分にできないことができることへの情景であり、そのコンプレックスは主人公の行動の根底に深く絡みついている。

そういう主人公の自己肯定感の低さを、ヒロインが癒すという構図は百合以前の人間関係の変化としてはよくまとまった王道の展開である。やっぱり主人公がもうちょっとコミュニケートできるならな…うーん。

まとめ

百合的には決着の付け方くらいしか文句がなく、アフターケア自体はちゃんとなされていたので高く評価したい。

が、ノイズが多すぎる。単に作品の防御力を下げるだけで必然性がないものが多い。(特にネットスラングは前世の記憶こそあれ人格が地続きでないという設定に全然噛み合ってない。脚本の手癖らしいがバカすぎんか?)

見て見ぬふり…も難しいので評価が難しい。



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