絶対に後悔しない方法、事後確率について

これまでに後悔をしたことがない。もちろん日常の小さな後悔は発生する。やっぱり唐揚げ定食にしておけばよかった。けれども、人生のレベルで大きな後悔というのは経験したことがない。「離婚 = 結婚失敗」と考える人もいるかもしれないが、僕はそうは捉えていない。結婚も成功したし、離婚も成功した。進学も就職も転職も後悔したことがないし、平均すると2年ごとに住む場所を変えているのだけど、それもハズレを感じたことはない。

さすがにこの歳まで生きてきて後悔がないというのは、ただ運がいいというよりも何か秘密がありそうな気がする。人によっては人生の岐路に立ったときに、計算をして後悔しないほうを選択しようとするのかもしれない。けれども僕は「将来は予測できない」と考えているので、大きな選択をするときにはたいていノリと直感だけで決めている。だから常にベストな選択をしているとは考えにくい。となると、ポイントは選択をした後にあるのではないだろうか。

将来が予測できないのと同じく、過去は変えられないという原則があるから、後悔しても意味がないというのは確かにある。一方で、過去に起こった事実は変えられないけれども、過去の捉え方は変えられるというのも間違いではないだろう。唐突に数学の話をしてみよう。

ここにジョーカーを除いた1組のトランプがある。そこから裏返したまま1枚のカードを引く。カードはまだ見ない。いま引いたカードがダイヤである確率は4分の1だ。そのカードを机の上に裏返しに置いたまま、もう1枚カードを引く。そのカードをひっくり返して見るとダイヤだった。さて、最初に引いた机の上のカードがダイヤである確率は変化しただろうか。直感的には過去に引いたカードの確率は変化しないように思える。それではさらにカードを12枚引く。すべてダイヤだった。これで表を確認した13枚すべてがダイヤである。机の上のカードがダイヤである確率はゼロになった。実は後からダイヤを引くたびに最初のカードがダイヤである確率は小さくなっていく。つまり、将来のアクションによって過去の確率が変わってしまったわけだ。

なんだか直感に反するおもしろい話なので紹介してみたのだけど、僕はこれを「過去の選択が正しかった確率は現在のアクションによって変えることができる」ということを説明するのに使っている。人生でなんらかの選択をしたとして、その選択が正しかった確率はわからない。それでもいまからの行動によって好ましい結果が得られれば、選択が正しかった確率は100パーセントになる。3人の子どものシングルファーザーとして身寄りのない土地に移住するという選択は正しかったのか。それは、その後のアクションが決める。いまやっていることは、過去に引いたカードを確定する作業なのだ。そう考えると後悔しようがない。どの選択肢もあとから正解になる可能性を秘めているのだから。

過去の選択が正しかったかどうかは現在のアクションにかかっている。僕はいろいろな選択をしてきた結果、自分がどう感じているかはともかく、他人から見ると「大変ですね」と言われる生活を送っている。それでもまったく後悔はしていなくて、過去の選択が正しかったと言えるように、いまをどうにかしようと試行錯誤しているところだ。なるほど。いまにフォーカスしていて過去に興味がないから、後悔をしたことがないと感じているのかもしれない。

ちなみに、牛丼屋で大盛りを注文したり、ラーメン屋で替え玉を注文したりするたびに、食べ過ぎて後から後悔するのはどうすればいいのだろうか。ノリと直感だけに頼らず、経験をもとに学習するということも少しは身につけなければと思ったりもする。

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