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春ららららら♬ (にぎやかな静寂)

 昼休み、まだ二分咲きの桜の向こうに広がる青い空がうれしくて、鼻歌を歌いながら散歩していた。小学生の頃の記憶と同じ春の匂いがした。なんだか懐かしいようなちょっと切ないような気分になって、誰かを思い出した気がした。そしたら青い空からでたらめな歌詞が降りてきた。ちょっといい感じの歌詞だった。脳内アコギをかき鳴らしながらメロディもつけた。3カポのGからはじまってAm C G。でたらめな曲だ。でもちょっといい感じの曲だった。
タイトルはまだ無い。たぶんこれからも。


ぼくはのび太くんほど楽天家じゃないし
スネ夫くんほどお金持ちじゃない
ジャイアンほど強くもないし
ましてや出木杉くんでもない
放課後の空き地の横を
セリフもないまま通り過ぎる
男の子1 あるいは 男の子2

君はしずかちゃんのような人気者じゃないし
知らない星の王女様でもない
ジャイ子のように絵も上手くないだろうし
ましてやドラミちゃんでもないだろう
休み時間の廊下の端っこで
にこにこしている
女の子1 あるいは 女の子2

でもぼくはぼくたちは知っている 君の名前を
幼い妹を可愛がる君を
捨て猫を拾って帰った君を
ひいばあちゃんのお世話を手伝う君を

白い雲が流れていく
風があたらしい春を運んでくる
ぼくたちはしらないあいだに
また少し背が伸びる……

(ここまで。この先はまだ無い。たぶんこれからも)



 


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