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30代のメイク事情ー興味がないわけじゃないけど頑張れない私、気づけば時代遅れ。

自分の顔は60点くらいだけれど、嫌いじゃない。でもそれはメイクした後の話。素顔はおじさんみたいにヨレヨレで30点くらい。昔はメイクしなくても60点だったのに、若さと同時に女性らしさも失ってしまった。毎朝鏡を見るのが辛い。

はじめて眉を剃ったのは中学3年生、メイクをはじめたのは高校1年生の頃だ。当時流行っていたのは「エビちゃんOL」。私の離れ目と出っ張った頬骨は、どちらかと言うと「もえちゃん」の方に似ていたので、誰かわからない誰かに遠慮して、「押切もえ」を意識したメイクで学校に通っていた。調子に乗っていた。でも、本当は華やかなエビちゃんが好きなのに手の届きやすいもえちゃんのほうに妥協していた私は、実のところ調子には乗り切れていなかった。精神的去勢を背負った闇深い人間はいつもどこか自由を手にすることができないのだ。

ここからが怖い話。あれから20年、私の眉メイクはいまだに「押切もえ」のままだったのである。剃った眉の大部分を再び生やすことが芋臭い自分に戻るようで恐ろしかったし、そもそも剃ることに何の疑問も抱かなかった。何度か流行りに合わせて描き方は変えたが、ベースのかたちはあの頃の「押切もえ」のまま。どことなく、ほんのり、私の目元には「押切もえ」がちらついた。どんな時も「押切もえ」がそこにいた。

「なんか私の目元変だよな」と思いながら写真と睨めっこをして十数年。やっと眉が古臭いことに気がついた。もえちゃんは眉頭に根気を込めて眉山にエベレストを作り、眉尻は細く抜く。鋭い角度の眉。ちょっとイナゴの触覚に似ている。

眉をしっかり伸ばして眉尻を濃いめに描くメイクに変えてからは60点が65点くらいに上がったかなと思う。Instagramに流れてくる「韓国風メイク」などがサブリミナル効果で脳裏にこびりつくので冒険心で真似してみたりしている。とはいえ、容姿に無頓着な私は2年間700円のアイシャドーを使いきれてないし、皮膚が弱いのでマスカラも塗ることができない。

1番の問題は幼稚園の送迎時の顔で、朝から「バッチリメイク」は心に鉄壁を作っているようで不気味だし、「ノーメイク」は上に述べたようにただのおじさんになってしまう。相手に不快感を与えない程度にほどほどにファンデーションを塗るのだが、やはりそうなると大切なのは眉だなと思う。時代に取り残された私の眉は再び時を刻み始めた。1時55分の鋭角から解放されて。

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